これが野外料理のどまんなか!やろうぜ、豚骨ラーメン!
製麺ライター 玉置標本さん(下の写真右)
製麺、国内外の食の再現、野生食材の調理をテーマに活動するライター。著書に『捕まえて、食べる』ほか。製麺機を17台所有する。
編集 オーシタ(同・左)
玉置さん
オーシタさん、私、ずっと気になっていることが……。
??? なんでしょう?
オーシタ
玉置さん
ビーパルで紹介される野外料理のほとんどって、家でつくったほうが美味しくなりません?
……ええっ?(ギクッ!)
オーシタ
玉置さん
「野外料理」っていうなら、野外でつくる理由があるものとか、焚き火じゃないと調理できない料理をつくったほうが楽しいと思うんですよ。キャンプでは焚き火をするわけですし。
……確かに。
オーシタ
玉置さん
そこで私、考えたんです。野外料理のど真ん中について。野外でつくる理由があり、野外にルーツがあり、焚き火を生かす料理とは……。結論は、豚骨ラーメンです。
ほぉ!
オーシタ
玉置さん
豚骨は、家で煮ると部屋ににおいがついてしまう。また、豚骨を煮るには家庭のコンロはちょっと火力が貧弱です。その点、焚き火で豚骨を煮れば、においは気にならないし、火力も十分。拾った薪ならガス代の心配もいりません。
おお! 骨髄は森を出た人類の最初の食事のひとつっていわれているし、小麦は農耕の最先端の産物。人類の料理の歴史をなぞる感じもありますね。
オーシタ
玉置さん
でしょ? そんなわけで、今日から野外料理の王道は豚骨ラーメンということで!
玉置さん
豚骨ラーメンのいいところは、豚骨を煮出してタレで調味するだけでスープが成立するところ。今日は背ガラとゲンコツを1㎏ずつ入れて煮込んでいきます。5時間くらい。
5時間! 長っ!
オーシタ
玉置さん
そのくらい煮ると骨の周りの肉や髄が溶けて、旨みがスープに移ります。脂と水が混ざって乳化もしますし。さて、煮込みつつ製麺していきましょう。
強力粉を練って製麺機で延ばして切って……。製麺って、すごく楽しいですね。
オーシタ
玉置さん
でしょう? あとはこの麺を茹でて具材を盛れば完成です。
スープを注いで麺を入れて……いただきます! ムッ、これはかなり美味しい! 家系と九州系の間くらいの濃度ですね。
オーシタ
玉置さん
家の外で煮たから、これはお外系。次回は、イノシシを獲るところから挑戦したいですね!
煮るぞ豚骨!焚き火で強火
拾った薪をかまどに入れ、羽釜で湯を沸かして豚骨を投入。「家庭の台所ではこの火力は出せないし、においを気にしなくてもいい」
1 スープの仕込み
0hour
「今日は野外だから下茹でなしでクサみも生かす感じで。アクだけはしっかり取りましょう」
↓
1hour
「煮豚はお湯から茹でると味が抜けちゃうからある程度スープに濃度が出てから投入します」
↓
5hour
「本当はもっと煮込みたいけど、骨のまわりの軟骨が取れてきたらスープに使えます!」
2 焼豚・煮豚づくり
あらかじめタレに浸けておいたバラ肉をホイルに包んで焚き口へ。熾火の熱で焼豚にする。
豚の肩ロースとバラ肉のブロックをたこ糸で縛って成型。スープのなかで1時間ほど煮る。
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煮豚はほど良いタイミングで引き上げる。袋に入れて醤油とみりんのタレに浸け、脱気する。
3 製麺
一般的にラーメンは塩とかんすいを溶いた水で強力粉を練ってコシを出す。「今日は沖縄そばに倣って、木灰を溶いたアルカリ性の溶液と塩で製麺してみます!」
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塩を加えたアルカリ性の液を強力粉に混ぜる。「できるだけ均等に、粉に水を回してそぼろ状に。その粉を手で軽く擦ってグルテンを育てて、袋に入れて寝かせます」
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そぼろ状のまま1時間ほど寝かせ、袋ごと強く押して板状に整形。製麺機の圧延ローラーを通る幅に切り、ローラーで延ばしていく。
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圧延ローラーのスリットの幅を狭めつつ繰り返し生地を通して、長さ数m、厚み2㎜ほどの細長い麺帯にする。その麺帯を麺切りローラーに通して麺にし、ハサミで切れば完成!
4 トッピングの用意
今回の具材は煮豚と焼豚、キャベツ、モヤシ、キクラゲ、ネギ。野菜類は軽く湯通ししておき、豚肉は食べやすい厚みに切る。
5 タレとスープの用意
スープに味をつけるタレは濃口醤油にみりんを加えてひと煮立ちさせてつくる。麺が茹で上がる直前に鉢のなかでタレとスープと合わせる。
たまに麺をつまみ出して茹で加減をチェック!
麺が茹で上がったらチャッチャ! と軽快に湯を切って鉢のなかへ。熱いうちにトッピングを盛り付ける。
できた! お外系豚骨ラーメン
Complete!
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2025年2月号より)