板橋区・赤塚諏訪神社の境外社に今も残される下赤塚富士【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.124】
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    2025.02.17

    板橋区・赤塚諏訪神社の境外社に今も残される下赤塚富士【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.124】

    板橋区・赤塚諏訪神社の境外社に今も残される下赤塚富士【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.124】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.124は、板橋区の下赤塚富士です。

    第124座目「下赤塚富士

    今回の登山口は、都営三田線西高島平駅です

    都営三田線の西高島平駅登山口。

    今回の登山口(最寄り駅)は、西高島平駅。都営三田線の終点です。前回の徳丸富士は都営三田線の高島平駅を登山口にしましたが、そこよりもさらに先です。行く前は何だか遠いイメージでしたが、思ったよりもすぐに到着しました。

    来歴不明ながら徳丸北野神社に健在、高さ1mほどの富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.123】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

    地元の方には失礼ですが、高島平といえば巨大団地ぐらいしか予備知識がなかったので、あらためてどんなところなのか調べてみました。

    最近、23区の山と言っても23区の外側へ移動することが増えていました。しかし、西高島平は思っていたほど遠くもなく、あれもう着いたのという感覚でした。前回のFILE123徳丸富士もそうですが、高島平、新高島平、西高島平と続く住宅街でもありますでは、西高島平、改めてどんなところなんでしょうね。サクッと調べてみます。

    そもそも高島平という地名は、1841(天保12)年に砲術家の高島秋帆(たかしましゅうはん)が、日本初となる洋式砲術と洋式銃陣の公開演習を行ったことが由来だそうです。江戸時代までは、湿地帯で狩場としてしか利用されていませんでした。それが、明治に入ると耕作化が進み、一時は東京の米の7割を生産する米どころだったとか。そして、一帯は田んぼで居住者も少なかったところから、住宅公社による団地の開発が一気に進んで今に至るそうです。

    ちなみに、西高島平という駅名は高島平駅より西にあるからという由来(そのまんまですね)。もともと東武鉄道が駅の免許を取得した計画時の仮称は三園町駅(みそのちょうえき)で、都営地下鉄に免許が移ってからは笹目橋駅(ささめばしえき)を経て現在の駅名になったとか。西高島平駅は、都営地下鉄だけでなく、東京の地下鉄でも最北端に位置する駅です。

    住宅街で怪しまれて身の潔白を証明し…

    …という西高島平の歴史を頭に叩き込み、目的地の富士塚に向けて出発します。

    駅を出すぐの場所にある陸橋。もとの仮駅名の「三園町」も地名なんですね。

    駅を出て長い陸橋を超えると、早くも住宅街に突入します。すると——、

    「何してるのですか?」

    急に住宅街で40代の女性に呼び止められました。面と向かって「何か怪しいですけど…」とも言われました。平日の午前中に、パーマのかかった長髪の男が、(動画撮影用の)長い棒を持って、(記事のネタを探しながら)キョロキョロして歩いています。確かに、客観的に見たら怪しいかもしれません。

    「仕事で、360度カメラで撮影しています」と答えたのですが、それが何なのかをご存じないようだったので丁寧に説明します。それでも「何か身分証明書はある?」と言われたので、名刺をお渡しするとともに、スマホでこの「TOKYO山頂ガイド」のページをお見せして、ようやく僕が「仕事中」だと納得していただけたようでした。

    この連載を続けて120回以上になりますが、取材中にこんな体験をしたのは初めてです。今後は、自分が怪しい人間であるということをしっかり自覚し、より真摯に取材に励まなければと気持ちを新たにしました!

    そして住宅街を抜け、首都高速5号池袋線の高架下をくぐると、赤塚公園中山地区へと進んでいきます。そこからゆるい上りのカーブを登りきると、早くも目的地の赤塚諏訪神社が見えてきました。

    結局、西高島平駅登山口から目的地まではずっと住宅街でした。

    今回の目的地は、赤塚諏訪神社の富士塚

    赤塚諏訪神社

    こちらの創建は1457年~1460年(長禄年間)。赤塚城主の千葉自胤(ちば よりたね・これたね)が信州諏訪大社より御分霊を勧請し、ここに祀ったと伝えられているそうです。※千葉自胤は、室町時代中期から戦国時代前期の武将です。

    なお、前回紹介した徳丸富士がある徳丸北野神社の説明の中で「田遊び」に触れました。その五穀豊穣と子孫繁栄を祈願して神さまに奉納する田遊びが、ここ赤塚諏訪神社にも伝わっており、国の重要無形民俗文化財に指定されているそうです。赤塚諏訪神社の田遊びは、毎年2月13日に行われています。

    赤塚諏訪神社。

    住宅街でのことがあったので、この赤塚諏訪神社まで長い道のりだったように感じましたが、あくまでもこれは山行であり、目的地は富士塚です。ということで、神社の奥へと歩を進めます。が、富士塚の痕跡らしいところすら見当たりません。これだと記事にならないので無駄足になったか…と諦めかけながらスマホで再確認すると、どうやら富士塚は別の場所にあるようでした。

    境内から2、3分歩くと、「諏訪神社境内」と看板が立っている空き地のような場所がありました。昔は辺り一帯が境内だったのが、現在は飛び地のようになっているのかもしれません。その空き地のような雰囲気の境内の入り口には、鎖が張られています。

    車が侵入しないためのものなのかもしれませんが、気軽に入れない印象なので、他の入り口を探します。が、ぐるっと1周してみても他に入り口は見つからず、もとの場所から「諏訪神社境内」に伺ったのでした。

    何やら「入るな!」感満載な「諏訪神社境内」。

    下赤塚富士

    こちらの富士塚が築造された年代などの詳細については不明です。ただ、志木市敷島神社にある田子山富士へ奉納された1872(明治5)年の「丸吉講新富士百三十三所奉納額」に、下赤塚千元富士山という表記があるそうで、それ以前に造成されたのではないかと考えられています。この下赤塚富士は、2010年度の区の登録記念物(史跡)となっています。

    木々に囲まれて雰囲気のある下赤塚富士。

    下赤塚富士山頂。

    何とかたどり着くことができた下赤塚富士。高さはせいぜい5mほどですが、こんもりとして登りごたえがあり、祠や石碑、石像などがいくつも残されています。先述したように、ここはもともと広い境内だったのが時代とともに飛び地の境外社となったのかもしれません。それでも、こうして富士塚が残されていることはありがたく思います。

    今回の山行は、道中で今までにない経験をした後、ちょっと変わった形態の富士塚に登ることができたのでした。

    次回は、板橋区の上赤塚富士です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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