中山道歩き旅に必要な知恵は、すべて埼玉県で学んだ
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    2025.02.04

    中山道歩き旅に必要な知恵は、すべて埼玉県で学んだ

    中山道歩き旅に必要な知恵は、すべて埼玉県で学んだ
    ビーパルOB・宮川 勉が、年を重ねてこそしみじみと味わい深い「歩く旅」の楽しみを案内。今回は「埼玉県」の魅力と素晴らしい景色、そして国道歩きの憂鬱について。
    写真は浅間山古墳(本庄宿)。小高い丘のようだが、古墳。あまり知られていないが、北関東には古墳が多い。

    中山道歩きで最初の感慨は「まだ埼玉か……」

    埼玉県は長いです。

    東海道新幹線に乗っていると「静岡県って長いなあ」と思うけど、中山道歩きで最初の感慨は、「まだ埼玉か……」です。

    実際、私は埼玉県を歩き通すのに、4日かかりました。

    連続して歩いたわけではありません。私の旅は、東京の自宅から電車に乗って、前回歩き終えた地点まで戻り、そこから歩き継ぐというやり方です。それを4回やったという意味です。

    しかしここが問題で、私はあまり熱心なウォーカーではなく、半年に一度くらい、思い出しては歩いていました。だから4日間を費やしたということは、2年かかったということです。埼玉県に2年……長い、長すぎる、その間に入院していた親父が死にました。

    中山道 つき神社

    調(つき)神社(浦和宿)。古代の年貢「祖・庸・調」の調とはその土地の特産品のこと。このあたりは初穂米や布で、ここはその集積地跡だったそうだ。みつぎは、古くは「みつき」と言ったようで、それでここは調と書いて「つき」神社となったとさ。鳥居がないのは物資の出し入れに邪魔だから。

    中山道

    調(つき)神社には、月に住むウサギと関連して、神社のあちこちにウサギの像がある。水彩 4号

    人生と同じで先が見えることは良いことばかりではない

    中山道 桶川宿

    廃旅館(桶川宿)。登録有形文化財だそう。

    さて埼玉県で学んだことが三つあります。

    ひとつは国道歩きの憂鬱です。これは埼玉県に限ったことではありませんが、先制パンチを喰らったのがここでした。この先も中山道歩きは、過酷な国道歩きを抜きにして語れません。

    国道はクルマの往来が激しいだけではありません。歩道も整備されているところといないところがあり、人家の少ないところはコンビニ袋やペットボトルがふつうに捨てられています。道の継ぎ目から丈の高い草が元気に生えています。

    また国道はほぼ直線、見通しのいいものです。これがどれだけ旅人の気持ちをなえさせるか。はるか彼方まで倉庫や工場、大型スーパーに仏壇店(じつに多い)、車のディーラー、保険屋さんなどが見えます。

    人生と同じで先が見えることは良いことばかりではありません。

    できればスマホではなく、紙の地図がいい

    中山道・浅間山古墳(本庄宿)。

    金鑽(かなさな)神社(本庄宿)。樹齢400年の大クスノキ。

    次に学んだのは、地図はあらまほしきものなり、ということ。

    できればスマホではなく、紙の地図を。

    当初私は、Googleマップに落としてくれた中山道ルートを頼りに歩いていました。どなたか奇特な方が作ってくれたようです。しかし小さい画面では、現在地と旧中山道の位置を見失うことたびたび。

    埼玉県もなかばまできたところで、業を煮やした私は、あろうことか国道17号線沿いに行けばいいと開き直りました。

    国道を羅針盤にするということは、一番やっていはいけないことでした。

    が、これが失敗のはじまり。

    旧中山道は、国道17号線とあざなえる縄のように細々と続いていたのです。そこには石碑があり、寺社があり、旅の風情も残っていたかもしれません。

    それらをほとんど吹っ飛ばして、国道の憂鬱を味わってしまったのは、私のせいです。

    国道を歩けば、長く感じるのは当たり前です。埼玉県が長いのなんのと文句を言ってはいけません。

    デパートの中に正式な旧中山道が通っている!

    旅を終えてから知ったのですが、熊谷宿には、八木橋デパートの中に正式な旧中山道が通っているそうです。化粧品売り場の前を通る中山道というのはシュールですね。

    そうした反省から、私は『ちゃんと歩ける 中山道六十九次(東・西)』(山と渓谷社)を買いました。

    八木牧夫 著
    ちゃんと歩ける中山道六十九次 東 日本橋~藪原宿

     

    新書より少し大きいサイズとはいえ、歩き旅に本は持って行きたくありません。

    そこで私は、次回の行程分だけをコピーして、持ち歩くことにしました。何枚ものコピー用紙の束ですが、歩き終えた行程分はゴミ箱や宿泊先で捨てていきます。ゴールが近づいているのは紙の枚数が少なくなることでわかります。そして用紙は、ちょっとしたメモにもなります。ですからペンと一緒にいつでも出せるようにザックに入れていました。

    先が見えるとつまらないものだと書きましたが、まったく見えないのも豊かな旅とはいえません。これもやはり人生の一側面ですね。

    埼玉の火の見櫓は美しい

    中山道・深谷宿の火の見櫓

    火の見櫓の紳士(深谷宿)。

    そして埼玉県に学んだ3つめは、火の見櫓の美しさです。埼玉の中山道は、各宿場ごとに立派な火の見櫓があります。

    もはや半鐘はスピーカーに置き換わっても、街道沿いに火の見櫓がこんなに残っているんだと感心します。

    とりわけ埼玉県は八角形の屋根に四本脚という8−4型の姿の美しい、火の見櫓界の貴公子と表現したくなる逸品が揃っています。

    中山道歩きは「火の見櫓」ウォッチングが楽しいぞ! 長野には多く、群馬にはない?

    人生には良い面と悪い面が国道と旧中山道のようにあります。  国道歩きもあきらめずに、旧道を探せば、きっと素晴らしい景色に出会えます。

    中山道歩きに必要な知恵はすべて埼玉県で学んだ、ということです。

     

    宮川 勉

    水彩画家・文筆家

    元BE-PAL編集部員。ライターときどき画伯(笑)。なんちゃって虫屋。中山道を歩いた記録として『中山道のリアル〜エッセイのある水彩画集〜』(私家本)がある。アマゾンの電子書籍で販売しています!

    宮川 勉
    中山道のリアル: エッセイのある水彩画集

     5年かけてちんたらと中山道を歩き通しました。中山道というのは、東京の日本橋から京都の三条大橋までをつなぐ旧街道です。東海道は有名ですが、中山道はその山道版とでもいうロングトレイルで、信州や美濃といった山がちな場所を歩きます。そのときに心に残った風景を水彩画として描き、まとめたものが本書です。


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