
CINEMA 01
学習機能を駆使して子育てするロボットに芽生えたもの
『野生の島のロズ』
(配給:東宝東和、ギャガ)
●監督・脚本/クリス・サンダース
●日本語吹替え/綾瀬はるか(ロズ)、柄本 佑(チャッカリ)、鈴木 福(キラリ)
●本国声の出演/ルピタ・ニョンゴ(ロズ)、ペドロ・パスカル(チャッカリ)、
キット・コナー(キラリ)
●TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
無人島に流れ着いたアシスト・ロボットのロズ。人間からの命令を求めてさまよう森で、ガンの卵と出合う。孵化したヒナにママと認知されたロズは、ヒナをキラリと名づけ、食べること、泳ぐこと、秋までに飛ぶことと、渡り鳥に必要な技術を教える。やがてキラリの旅立ちが近づく──。
『リロ&スティッチ』の監督によるアニメーション。大自然のなか、ロボットが動物と関わりながら物語が展開する、その設定がまず新鮮。物語は猛烈なスピードで展開し、ずる賢く自然界を生き延びるキツネや子だくさんのオポッサムら、動きまでキュートなキャラに惹きつけられ、美しい自然の描写に目を奪われる。
そうして描かれるのは、母親役を務めるロズの懸命さ、母親であることの苦労と喜びのドラマ、そして異なる出自を持つ者同士が結ぶ胸アツな友情。気づけば、無表情のロズに深く感情移入することに。
果たしてロズは、プログラムを超えて生きられるのか? 近未来SFばりのロボット・アクション(戦う相手は動物!)のハラハラどきどきまであって、多面的で奥深い魅力を備えた一本。
CINEMA 02
戦禍のウクライナ。犬猫を救うための戦いの記録
『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』
(配給:スターサンズ)
●監督・プロデュ―サー/山田あかね
●ナレーション/東出昌大
●2/21~全国公開
©『犬と戦争』製作委員会
ロシア侵攻から約1か月。シェルターのケージに閉じ込められて吠え続けるやせ細った犬、力尽きた犬。彼らの名前を呼ぶ女性の涙声が哀しく響く──。
『犬に名前をつける日』の監督が「戦場にいる犬の現実を伝えなければ」とウクライナに3年通った記録。「これが生きがい」と各国から駆けつける人びとの、信じがたいレベルの動物愛。ニュースでは伝わらない戦時中の日常も記録され、知らないことばかり。戦時下も犬猫を見捨てない人々がいる事実こそが希望。
CINEMA 03
18世紀デンマークの実話が元。荒野開拓に挑んだ男の半生
『愛を耕すひと』
(配給:スターキャット、ハピネットファントム・スタジオ)
●監督/ニコライ・アーセル
●脚本/ニコライ・アーセル、アナス・トマス・イェンセン
●原作/イダ・ジェッセン「The Captain and Ann Barbara(英題)」
●出演/マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン、シモン・ベンネビヤーグ、メリナ・ハグバーグ、クリスティン・クヤトゥ・ソープ、グスタフ・リン
●2/14~新宿ピカデリーほか全国公開
©2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
退役軍人のケーレンが、不可能とされた荒野の開拓に乗り出す。有力者デ・シンケルは土地の権利を主張。元使用人のアンがケーレンに身を寄せたと知り、迫害をエスカレートする。家族に見捨てられた少女も含め、3人は家族のように暮らし、イモを植えて春を待つ──。
写実主義の絵画のような荒野で、キャンプしながら開拓を始める。野心に満ちた孤独な男が、愛を亡くした女と愛を知らない少女との暮らしで変化。マッツ・ミケルセンの眼差しに惹きつけられ、胸がいっぱいに。
※構成/浅見祥子
(BE-PAL 2025年3月号より)