
そんな、進化し続ける老舗ブランド、ライペンのもの作り哲学を紹介しよう。
ジャパンテントの進化は伝統&発想力がカギ
創業60年!
いまも変わらず本社工場での手作業で作り続ける山岳テント屋
創業:1965年
拠点:埼玉県所沢市
問い合わせ先:アライテント TEL:04(2944)5855
設計担当 宮澤 稔さん
軽量テントの原型「ライズ1」の初代モデルを手始めに、ライペンのテント設計を任されて44年! まさに日本の山岳テント界のレジェンドだ。
さらなる軽量化への挑戦
アウトドアギアの軽量化は永遠の命題。とくに、バックパックで荷物を背負って急峻な山を登る登山ではなおさらのことだ。でも、機能を削って道具を軽くすることは、山においては死にもつながる可能性がある。
そんな難しい軽量ギア開発に、テント分野でリードし続けている山岳テントブランド、それがライペンだ。
アライテントは、テントの縫製職人であった新井睦さん(現会長)が1965年に創業したテントメーカー。当初は「コマクサ印」というブランドで自社製品を販売するほか、山専ショップなどのテントをOEM生産していたが、’82年、新たな自社ブランドとして「RIPEN」(ライペン)をスタートさせた。
そのライペンブランドの最初の製品が、アライテント製軽量テントの原形ともいえる「ライズ1」というモデルだ。
「当時はまだ入社したばかりで、テントの作り方なんか知らなくて……。会社にあった不要素材をかき集めて、自立させたフレームに生地を被せてテキトーに作ったのがライズ1に発展したんですよ」(宮澤さん)
登山時に緊急避難用ツエルトが必携ならば、それに床を付けて自立するようにすればいいじゃん!──という発想だった。
そのライズ1をきっかけに誕生したのが、従来より圧倒的に軽くて自立するクロスドームで、いまやライペンのフラッグシップとなっているエアライズシリーズというわけだ。
このように、思いつきをそのまま製品に進化させられるのはなぜか? それは、社員誰もがミシンを扱え、生地の裁断から縫製まですべてを、社内でこなしているから。製品化前のサンプルだけでなく、本製品も社内で作っているからスゴイ!
また、さらなる軽量化に挑戦し続けていることも見逃せない。
’87年に登場したエアライズ2(1950g)が、’96年には1750g、2002年には1680g、’06年には1550gに。’23年には、980gという軽さを引っさげてSLドームを発売。極薄生地の性能を、10年も検討した末に完成させたモデルだ。そして、「いまでもね、30〜40年前のライズ1の修理依頼があるんですよ」とも。
修理、製品製造、新しいモデルの開発すべてが社内で完結する。それが、老舗山岳テントブランド「ライペン」の最大の強みであり、多くの山屋から信頼される原拠でもあるのだ。
ライペン軽量テントの系譜
1984年 ライズ1
1987年 エアライズ1、エアライズ2
1998年 トレックライズ
2023年 SLドーム
2024年 SLソロ
生地の裁断から縫製まで、すべてが本社内で!
延反(生地を裁断台にきれいに広げること)後、型紙を当てて裁断の準備作業をする。ズレは許されないので、ウェイトで型紙を押さえて慎重にラインを引く。集中力の必要な作業だ。延反から裁断までの作業は本社の1階で行なわれている。
延反、裁断に使われる道具類。右上の丸いウェイトは、工業用ミシンに使われていたプーリーを再利用したものだ。
テントパーツひとつひとつに型紙がある。
温湿度管理された2階の一室ではシームシーリング作業が。
900gという軽さを実現したソロドームの新定番
SLソロ
¥63,800
本体12D、フライ15D、ボトム30Dという薄手生地を採用。その軽さと性能が高く評価され、本誌の第4回アウトドアアワード2024のテント部門賞を獲得。
軽量テントのレジェンドに鴇色(ときいろ)フライモデルが登場
エアライズ1-60周年記念
鴇色フライモデル
¥42,900
日本を象徴する鳥である朱鷺。その羽内側の淡い桃色が鴇色の由来だ。アライテント60周年に向けてレジェンダリーモデルに採用したのが、この鴇色。テン場で注目されること請け合いだ。
※構成/坂本りえ
(BE-PAL 2025年3月号より)