
六角構造のミツバチの巣は、働きバチがお腹から分泌するワックス(ろう)で作られています。逃げた群れが残していった巣をキャンドルにしてみました。
里山生まれの純天然手づくりキャンドルはいかが?
近年、BE-PAL的おじさんたちを中心に大人気となっている里山遊びが、ニホンミツバチの飼育。意外と身近な場所にも棲んでいて、コツさえわかれば自作の箱へ簡単に呼び寄せることができる。
習性も興味深い。ファーブル先生ではないけれど、ずっと観察していたいくらいだ。そして、上手に飼えた人だけがもらえるご褒美が、甘い蜂蜜である。
ただし、ニホンミツバチは何か気に入らないことがあるとすぐに巣を捨てて群れごと逃げてしまう。つまり神経質。このあたりが産業昆虫となっているセイヨウミツバチとの違いだ。
世話を焼きすぎると逃げる。猛烈な真夏日が続くと逃げる。スムシ(害虫)が増えても逃げる。オオスズメバチに襲撃されても逃げる。初めて入居した群れが突然出ていったときは奥さんに逃げられたくらいショックだが、それもじきに慣れる。とにかくちょいちょい逃げるのだ。
もぬけの殻になった巣箱にはハチたちが蜜の貯蔵や子育てに使った巣板がそのまま残されている。今回は、そんな巣板を有効活用したキャンドルづくりにチャレンジした。
ハチの仲間には、ハニカム構造と呼ばれる六角形の個室が連なった巣をつくるものがいる。ミツバチと、アシナガバチ・スズメバチの仲間だ。前者は自分が分泌したろうを口で柔らかくして巣をつくるのに対し、後者はかじって持ち帰った樹皮を唾液でこねて巣をつくる。
ミツバチの巣の成分であるろうは、常温で固体となる油脂(ワックス)の総称。その性質を活かし、芯を通して固めた照明具がキャンドルである。
市販のキャンドルは石油系のパラフィンを使ったものが多いが、人類最初のキャンドルは、動物の脂肪や蜜ろうでつくられたといわれている。
蜜ろうキャンドルは、燃焼時に黒い煤が出にくく、香りもよいのが特徴。巣板由来の暖かな黄橙色も、養蜂発祥の中東や欧州で人々の心を和ませてきた。
里山生まれの純天然手づくりキャンドル。大切な人へ記念日プレゼントにいかがでしょう。
群れが大きくなったと思ったら、秋にオオスズメバチが襲来! ニホンミツバチは巣を捨てて逃げていった。
六角構造でも素材が違う
上はスズメバチの巣板。樹皮製。下はニホンミツバチの巣板でろう製。ろうは腹部から分泌される。
がんばった自分にろうメダル~
濾過して固めた蜜ろう。こらこら、かじるな~。オリンピアンの記者会見じゃないんだから!
巣板は鍋に入れお湯で煮溶かす。熱いうちに布を張ったバケツに流し入れて漉す。
冷めたら取り出して再度溶かし、より細かい布で漉す。
TYPE1 型抜きキャンドル
蜜ろうキャンドルは、冷めると固まるワックスの性質を利用したもの。芯のひもは専用品を購入するか、木綿100%のタコ糸などを利用。化繊は溶けて目詰まりするため不可。
カヌレなどの菓子型を利用。割り箸の隙間に芯をはさんで垂直に立てる。溶けたろうを流し込む。
こぼさないよう、そ~っと
ろうはチロリ(日本酒のお燗器)の中に割って入れ、湯煎で溶かす。65度以上になれば溶ける。ろうは高温になるので、直接の加熱は危険。こぼれて固まると取れにくいので、注ぎ方にも注意しよう。
冷えるとすぐに固まり始めるが、中心部まで固まるには少し時間がかかる。気長に待とう。固まったら割り箸をはずす。
型にハサミで切り込みを入れて丁寧に取り出す。はがれにくいときは、型の外周部にドライヤーの熱を当てると良い。
Complete! ずっと眺めていられます
キャンドルに火を灯してみた。スタンドは、左から空きビン、青竹、植木鉢のかけら。どれも蜜ろうの自然な風合いによく合う。
TYPE2 ディップ式キャンドル
ディップ式とは、溶けたロウに芯を何度も浸し太くする方法。
芯を二つ折りする。中心を指で持って溶けたろうに浸し、すぐ引き出し冷ます。
出し入れを繰り返し、太くなったら切り離す。
なんだか、トクした気分
1本の芯から2本できる。
TYPE3 ハニカムシートキャンドル
ハニカムシートはミツバチに早く巣をつくらせるための人工基礎。蜜ろうとパラフィンを混ぜたシートに六角形の凹凸をつけてある。
ネット通販で買える!
シートを短冊形や三角形に切る。
芯を入れて巻く。
折れやすいので、手のひらやドライヤーで温めながら。
【里山月報】甘い花蜜を集めるだけじゃない、ミツバチたちのお仕事
甘い蜂蜜を提供してくれる昆虫というイメージの強いミツバチだが、それはあくまでも人間の見方。自然界におけるミツバチの役割は、植物の繁殖を助ける重要なポリネーター(送粉者)だ。
植物の花に集まる昆虫は数多い。しかし、幼虫のうちは植物の葉を食べている種類も少なくない。つまり害虫の側面もある。ミツバチに象徴される花バチの仲間は、一生を通じ花蜜と花粉だけを栄養にしている。植物の花が蜜を出すのは、提供の報酬として受粉をしてもらうため。
花にしか集まらないミツバチたちは、植物に対しもっとも義理堅い昆虫だともいえる。私たちが野菜や果物を食べることができるのも、これらポリネーターのおかげ。ニホンミツバチを入り口に、昆虫と植物の関係、そして生態系のしくみにも注目したい。
ミツバチにとって、糖質からなる花蜜は人間のごはん、タンパク質が豊富な花粉はおかずのような存在だ。
今月の里山クイズ
人里に多い、とある野生動物の足跡。つけたのは誰!?
里山クイズの答え
足跡の主はタヌキ。東京のような大都市でも思わぬ場所で足跡に出会える。薄く積もった雪や、
水たまり近くの柔らかい泥が目に入ったら、野生動物の足跡を探してみよう!
※構成/鹿熊 勤 撮影/藤田修平 写真提供/鹿熊 勤(ニホンミツバチ 襲われた巣)
(BE-PAL 2025年3月号より)
絶賛発売中のBE-PAL3月号の付録は…「安西水丸”イヌイット”タフトート」
旅にまつわるイラストやエッセイなどを数多く残している安西水丸氏。自由な旅を愛した安西氏のイラストを、本誌限定、特別の付録のトートバッグに仕上げました!
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※一部地域では発売日が異なります。
※電子版には特別付録が付きません。