鎌倉時代に築かれた「石神井城址」を訪ねて練馬区・石神井公園へ【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.128】
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    2025.03.06

    鎌倉時代に築かれた「石神井城址」を訪ねて練馬区・石神井公園へ【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.128】

    鎌倉時代に築かれた「石神井城址」を訪ねて練馬区・石神井公園へ【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.128】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.128は、練馬区の石神井城址です。

    第128座目「石神井城址

    今回の登山口は、西武池袋線石神井公園駅です

    西武池袋線石神井公園駅登山口。

    実は、FILE122加賀公園の築山の山行を実施するにあたって事前に「石神井川の路」を調べた際、発見したのが今回の石神井城址でした。この連載で何度も山と城の関係性を説明してきましたが、日本の城は立地によって大きく以下の4タイプに大別されます。

    ・水城:水源のある場所を利用した城
    ・平城:平地に建てられた城
    ・平山城:低い山や丘と平地に建てられた城
    ・山城:山に築かれた城

    この連載は東京都内の山をめぐるものなので、これまで城址も含め平山城と山城を紹介してきました。僕が事前につくったリストから石神井城址が漏れていたのは、水城か平城だったからではないか…と思いつつ調べてみると、平山城でした。(では、なぜリストから漏れたのかという疑問は疑問のままですが)今回は石神井城址を目指します。

    ルーツは加賀藩の下屋敷。板橋区の加賀公園に残る人造の山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.122】

    早々に登山口から目的地の公園へ

    登山口(最寄り駅)は、西武池袋線石神井公園駅中央改札。ひさびさの練馬区ですし、石神井公園駅は初めてです。全く土地勘がありませんでしたが、池袋駅でたまたま特急に乗り込んだらあっさり到着。めっちゃ近いという印象です。

    目的地である石神井城址は、石神井公園にあります。駅名になってるぐらいなので駅から公園へは歩いて5分ほどですが、公園そのものが広大なので城址まではサクサク歩いても駅から20分ほどかかります。ということで、早速、出発します。

    石神井公園
    石神井公園は、三宝寺池、石神井池の2つのエリアに大きく分かれています。そのうち三宝寺池は、井の頭池、善福寺池と並び、武蔵野三大湧水池の一つとして知られているそうです。

    園内には、有料ボート、野球場(合計3つ)、テニスコート、野外ステージ、広場、売店などが点在し、公園周辺には石神井公園ふるさと文化館、池淵史跡公園、石神井松の風文化公園も隣接している自然豊かなエリアです。

    石神井公園は、駅からだと手前に石神井池があり、その奥に三宝寺池があります。目的地の石神井城址があるのは三宝寺池エリアです。どうせ歩くなら緑のある道を歩きたいなと思って目を付けたのが、石神井公園の東側にある練馬区立和田堀緑地。

    ここから石神井公園へは道路を挟んでの接続になります。つまり、公園の前から緑にアプローチしようという狙いで、少し遠回りになりますが気にせずに歩いていきます。

    石神井公園駅から和田堀緑地を目指して歩いていて、ふと目に入ったのが「RAHM SCOFFEE」でした。真新しくお洒落な外観。通りから見えるテラス席には、なんとも小洒落た方々が思い思いにコーヒーを楽しんでる姿が目に入りました。

    ついコーヒーの良い香りに誘われかけますが、まだ道半ばなので先へ進んでいきます。

    RAHMS COFFEE。

    ほどなくして、練馬区立和田堀緑地に入ります。本来は水が流れる公園のようですが、季節柄なのか水流れはありませんでした。

    それでも木々に囲まれているので、味気ない道路を歩くより楽しめます。そして、あっさり目的地の石神井公園に到着しました。

    石神井池エリア
    石神井公園は、東西に伸びた細長いヒョウタンのような形をしています。石神井公園駅から歩いてくると、まずあるのが石神井池エリアです。

    石神井池(通称ボート池)が造成されたのは1934年。三宝寺池一帯が風致地区(自然の美しさを保つ目的で、都市計画上特に指定された地域)に指定された際、同池とともに武蔵野の景観を保護する目的でつくられたそうです。

    もともとは三宝寺池から石神井川に合流する三宝寺川が流れていて、その周辺は田んぼに水を引くための水路などがあったとか。その一帯を人工的にせき止めてできたのが石神井池なんですね。

    いよいよ公園へと足を進めます。せっかく東側は石神井池がドンとありますので、石神井池沿いの遊歩道を歩いていきます。

    住宅地に囲まれた公園は、まさに都会のオアシスのような雰囲気です。平日の日中ですが、多くの方とすれ違います。

    公園入り口。

    いい感じの木道があります。

    石神井池の脇を歩き始め、真ん中ほどまで来ると、眼鏡橋がかけられた中之島が見えてきます。うっそうと木々が生えていてなんとなく隠れ家みたいな感じでよさげです。

    そのまま池の南端に差しかかると、何やら池から突き出たモニュメントが見えてきました。

    「聖衣」と書いてあります。このモニュメントは三澤憲司の作で、1984年につくられたそうです。イタリヤ産の大理石をふんだんに使用し、高さ 5.6m 重量 23トンもあるそうです。ここから公園中央部を通る下石神井大泉線の道路を渡ると、石神井公園の西側、三宝寺池地区へ入ります。

    三宝寺池エリア
    今回の目的地、石神井城址があるエリアです。驚くことに、三宝池は大正期に日本初の100mプールが整備されていたそうです。1932年のロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得した鶴田義行や清川正二ら選手団が、この石神井プールで合宿したことから「石神井遊泳団」と称されたとか。

    また、当時は、料亭の豊島館、旅館の武蔵野館、茶亭の見晴亭もあり、そこには文士や芸術家らが集まったそうです。現在は、水辺観察園として整備されています。

    ひょうたん池を渡って行けば石神井城址にすぐ着くのですが、せっかくなので三宝池をぐるっと回ることにしました。水辺観察園を通り進むと、絵を描く人、野鳥を観察する人、読書をする人でベンチは埋まっていました。メタセコイアの木々に傾いた太陽の日差しが入り、歩道はとてもキレイでした。

    三宝池。

    メタセコイヤの林。

    この三宝池には、実はいわれがあります。太田道灌の軍勢に追われた、豊島家当主の泰経(やすつね)は、家宝の黄金の鞍を乗せた白馬にまたがり、三宝池に身を沈めたそうです。

    それを知った娘の照姫もその後を追って池に投身。豊島一族の最後が伝説の一部、殿塚・姫塚として残されているそうです。そんな言い伝えが本当なのか、三宝池の周りには、「宇賀神社 穴弁天」「厳島神社」「水神社」と神社が点在していました。

    姫塚。

    殿塚。

    日が傾いて日陰になった三宝池を1周し終わるころ、今回の目的地、石神井城址がありました。

    都内の山めぐりと豊島家の縁

    石神井城址
    豊島氏の城館であった石神井城跡は、鎌倉時代中期から末期頃に築城されたと考えられているそうです。1477年(文明9年)、豊島泰経が城主の時に、太田道灌によって攻め落とされました。

    以後は廃城になりましたが、城の中心部分にあたる内郭(ないかく)の土塁(どるい)と空堀(からぼり)は今も残っているそうです。現在は、東京都指定文化財史跡に指定されています。

    石神井城址の石碑。

    この連載で、これまで北区や練馬区、板橋区の富士塚をめぐり、よく名前を見かけた豊島家。ここ練馬区でも、こうして豊島家の最後の地を訪れることになり、何とも不思議なめぐり合わせを感じました。

    そもそもリストから漏れていた石神井城址。リストを見返して気づき、訪れることができたのは、ひょっとして「山」に導かれたのかもしれない。などと思ってしまうのは、考えすぎでしょうか…。

    次回は、練馬区を離れて世田谷区の騎兵山を訪ねます。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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