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このシーズン、まだまだキラキラした冬の星座が目立ちますが、かなりマニアックな星座もあります。今回はあまり知られていない、いっかくじゅう座、うさぎ座、はと座をご紹介しましょう。旅先の、暗い空の下でなら見つけられるかもしれません。
冬の大三角の中を駆けるいっかくじゅう座
堂々とした冬の大三角。その中は、街中ではぽっかりと空いて見えるでしょう。実は、いるのです、ユニコーンが。いっかくじゅう座です。
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大三角の中を駆け抜けるいっかくじゅう座。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)
額に1本の角が生えた一角獣(ユニコーン)は空想上の動物です。17世紀にオランダの天文学者であり地図製作者であったプランシウスが星図に描き入れたとされています。大三角を突き破る大きさですが、一番明るい星が4等星で目立ちません。なぜここに一角獣なのか? 由来もよくわかっていません。
有名なのは、一角獣の顔のあたりにある「ばら星雲」のほうです。
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いっかくじゅう座の顔にある「ばら星雲」。5000光年の彼方にあるガス星雲中から次々と新しい星が生まれている。
ばら星雲の光は人間の眼でとらえるには淡すぎますが、写真にはとても良く写ることから、天文ファンの間で人気のある天体です。
ばら星雲の他にも、大三角の中にはたくさんの星雲・星団があります。なぜかというと、このあたりに天の川が通っているからです。冬の天の川はあまり目立ちませんが、写真を撮ってみると、星雲・星団がひしめいています。クリスマスツリー星団、かたつむり星雲など名前もユニーク。プロの天体写真を見ると、たしかにツリーの形やかたつむりの形に見えなくもありません。
オリオンの足元にうずくまるうさぎ座
オリオン座の真下、ほとんどオリオンに踏みつけられる格好で位置しているのがうさぎ座です。こちらは2世紀にプトレマイオスが作成した「トレミーの48星座」に入っている由緒ある星座。暗い星ばかりですが、形が整っているので、オリオンの足元に注目すると、案外、見つけやすいと思います。
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2月下旬、19時頃の南の空。うさぎ座は耳のV字に注目。高所であれば、関東付近でもギリギリ、カノープスが見える。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)
由緒はあるのですが、これといったエピソードがあるわけではありません。ただ、ウサギには2つの正反対の性質を表わしているといわれています。
ひとつは、か弱い存在としてのウサギです。狩人オリオンに追われる、見るからにかわいそうなウサギです。
もうひとつは、ウサギの高い繁殖力に由来する、やっかい者のイメージです。ギリシア時代のエピソードですが、ある土地に移住した人々が、ウサギを何匹か捕まえて連れていったそうです。しかしそのウサギたち、あれよあれよと数が増えて、畑の農作物を荒らしたり、病原菌をまき散らしたりと、大変やっかいな存在になったそうです。
この忌まわしい記憶を忘れないようにウサギを天に上げたのではないかという説もあります。いずれにしても、うさぎ座のルーツはいまひとつ不明です。
見つけたら長生きできそうな星とは?
うさぎ座が見つかったら、その南にある、はと座にもトライしてみましょう。このハトは、旧約聖書の『創世記』に出てくる「ノアの方舟」のハトではないかという説があります。はと座を作った人は、いっかくじゅう座と同じ、オランダのプランシウスですが、この人は牧師でもあったので、方舟のハトという見立てはありうることです。
ノアが放ったハトがオリーブの枝を加えて帰ってきたことから、ノアは洪水が収まったことを知るのですが、星座絵のハトもくちばしにオリーブの枝をくわえています。
はと座が見つかったら、さらにずーっと南の方を注目。全天で2番目に明るい恒星カノープスが見えるかもしれません。
日本からは緯度が低すぎて赤っぽく見えることから、カノープスは老人星とか長寿の星と呼ばれています。なかなか見られないゆえ、見られたらラッキー。縁起のいい星なのです。
今の季節、カノープスが見ごろです。東京近辺でも、高い山に登って南側が開けている場であれば見えるかもしれません。登山計画、または南に行く計画のある方はカノープス探しも予定に入れてみてください。
構成/佐藤恵菜
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