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それゆえ、年に1~2度の降雪がある地域の人や、たまにスキーなどに出掛ける人が使うもの、といった捉え方が一般的です。
ところが、その常識を覆す存在として登場したのが、ダンロップ(住友ゴム工業)の『シンクロウェザー』。天候や路面状態の変化にシンクロ(同期)してタイヤ自体も変化する新技術を搭載し、オールシーズンタイヤとしてのトータル性能を大きく向上させているのだとか。
冬キャンプやスキー、そして雪遊びなどを楽しむアウトドア派にとっては気になる存在でしょう。そこで、注意報レベルの降雪が続く2月上旬に敢行した、国道17号線の群馬・新潟の県境越えでわかった性能をレポートします。
自動車ライターが豪雪地をロングドライブ!
『シンクロウェザー』ってどんなタイヤ?
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これまでは夏タイヤ4本に加え、スタッドレスタイヤ4本、そしてチェーン規制にも対応した『ISSEスノーソックス』を携行。
ドライ路面でのグリップ力や静粛性やツルツルとした凍結路での性能が気になるといったオールシーズンタイヤの弱点を克服するために、『シンクロウェザー』が採用したのが、「アクティブトレッド」という新技術。
タイヤのゴム素材に「水スイッチ」と「温度スイッチ」という、ふたつのスイッチを組み込んでいるのがポイントです。もちろん物理的なスイッチを入れたということではなく、ゴムの性質が「ある条件になると科学的に変わること」を、ダンロップは「スイッチ」と表現しているのです。
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装着していた7分山のスタッドレスタイヤ(右)を外し、特徴的なV字トレッドの『シンクロウェザー』(左)に履き替えた。
「水スイッチ」は、トレッド面(路面と接する部分)が水に触れるとスイッチが入り、ポリマー(ゴムの骨格となる材料)とシリカ(ゴムの補強材)とのイオン結合がほどけて、ゴム表面が柔らかくなり濡れた路面でのグリップ性能が向上することを指します。
逆に乾燥したドライ路面に入るとイオン同士が再結合して、ゴムの剛性が復活。夏タイヤと同レベルの剛性となり、ドライ路面では快適な乗り味を実現します。同時に「ウエット路面でのブレーキング」や「剛性感の無さ」、「ノイズの大きさ」など、ドライ路面での弱点も克服しています。
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『シンクロウェザー』は右からM(泥)+S(雪)、スノーフレークマーク(中央)、そして凍結路にも対応した証である「アイスグリップシンボル(左)」も取得。
つぎに「温度スイッチ」ですが、一般的にゴム素材は路面温度や外気温が下がると硬くなり、路面とのグリップ力が低下するという性質があります。ところが『シンクロウェザー』のゴムは低温になるとスイッチが入り、雪上だけでなく、これまで苦手としてきた氷上路面でも柔軟性を保ち続けながら路面をグリップします。メーカーによれば、その氷上性能は一世代前のスタッドレスタイヤ以上とも。
さらにふたつのスイッチに加え、静粛性と排水性、排雪性を高いレベルで両立した新しいトレッドパターン(トレッド面に刻まれた溝や細かな切れ込み)を採用。その結果、高速道路の冬用タイヤ規制でも走行可能な「スノーフレークマーク」に加え、氷上性能の基準を満たしたことを示す「アイスグリップシンボル」も取得しています。
ドライ路面からウエット路面、そして圧雪路や凍結路までこなすオールマイティな存在として話題になっている、新しいジャンルのタイヤです。
注意報レベルの降雪に見舞われている新潟へ
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一般的なオールシーズンタイヤには左の「M(泥)+S(雪)」と「スノーフレークマーク」(右)が与えられているが、凍結路では「夏タイヤより少しいいいだけ」といったJAFの氷盤路テストでの結果も。SUVのタイヤにはM+Sだけのものもあるが、規制によってはチェーン装着が求められることも。
仕事柄もあり、年間を通して安全に快適に過ごすため、夏タイヤ4本に加え、ホイール付きのスタッドレスタイヤを4本、さらに携行しやすい布製タイヤチェーンを準備しています。そして11月下旬から12月初旬になると、月に数回のスキーや地元(新潟県)への帰省に備えて、夏タイヤからスタッドレスタイヤに履き替えます。
自宅ガレージには常に4本のタイヤが積み上がっていることや、交換作業の手間を考えると、オールシーズンにしてみようかな……と考えたことは一度や二度ではありませんでした。
実際にオールシーズンタイヤを購入して冬期の志賀高原(長野県)に向かったことがあります。上信越道の信州中野インターチェンジを降り、国道292号線を走り出すまでは大きな問題もなく快適でした。ところが朝方ということもあり、標高が上がるに従い、圧雪路は凍結路へと変化。
発進時やブレーキングでオールシーズンタイヤの滑りを感じるようになり、結局は安全を考えて途中の道の駅でタイヤチェーンを装着。「もしスタッドレスタイヤだったら登れたかも……」という経験をして以降、夏タイヤとスタッドレスタイヤの2セット体制で過ごしてきました。
今回は2010年式MINIクーパー・クラブマン(前輪駆動)に装着されていたスタッドレスタイヤ(7分山ほど)を外し、『シンクロウェザー』の175/65R15サイズを装着。注意報レベルの降雪に見舞われている新潟を目指しました。ゴール地点は、江戸の町並みが再現された全国有数の豪雪地、塩沢宿です。
ドライ路面では乗り心地の良さ、静粛性の高さを実感
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ドライ路面では「よくできたコンフォートタイヤ」といった仕上がり。ロードノイズも穏やかでステアリング操作にも適切に反応する。
通常なら、群馬県と新潟県との県境越えは関越自動車道の約10kmある関越トンネルを抜けていきます。国道17号線を走り、新三国トンネルを抜けるルートは一般的ではありません。一方で、コーナーやアップダウンが連続する国道17号線のワインディングは、1年を通して走行テストにふさわしい舞台です。
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高速道などの橋梁部に見られる繋ぎ目を通過しても、大きな衝撃はなくスムーズに走り抜けた。
『シンクロウェザー』を装着したMINIで東京都内の一般路を走り、関越自動車道(以下、関越道)の練馬インターチェンジを抜け、群馬県の月夜野インターチェンジを目指します。この間に、ドライ路面でのフィーリングをチェック。市街地でも高速走行でも、全体として路面への当たりが実にソフトで、ドライ性能でいえば満足度はかなり高い部類に入ります。
スタッドレスタイヤのドライ路面で感じる、ブレーキングやコーナリングでの頼りなさもほぼ感じることはありませんでした。夏タイヤでもそれなりショックと音が発生する橋梁部の繋ぎ目でも衝撃が少なく、穏やか。約100kmは必要といわれる“慣らし”が終わるまで、少しだけこもるようなロードノイズが気になっていたのですが、群馬県に入ってしばらくすると、それも消滅。
以降の高速走行では快適そのもので、全体としては「よくできたコンフォートタイヤ」といった印象です。
刻々と路面状況が変わる国道17号線へ
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高速道路から一般道に降りると、陽の当たらない場所などには凍結路などが出現。最も事故を起こしやすい状況だ。
練馬インターチェンジから約130km、標高360mほどの月夜野インターチェンジから国道17号線に降ります。ここから沼田、水上、そして猿ヶ京温泉手前まではドライ路面でした(2月上旬の取材時点)。
しかし気温はマイナス3度ほどで、陽の当たらないコーナーでは凍結路が現れます。標高600mほどにある猿ヶ京温泉を過ぎると周囲は完全に冬景色へと変わり、路面はざくざくとしたシャーベット状に。ここでも独自のトレッド面の効果で排水性がいいのでしょうか、グリップ力は安定しています。
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標高が上がるに従いざくざくとしたシャーベット路に変化。最初、走りやすさもあり少し速度が高めでコーナーに進入すると前輪が少し外側に滑る感覚(アンダーステア)があった。しかし、速度を50km/h以下にするとアンダーステアもなく、ブレーキングも問題なく効いている。
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短いシャーベット路を抜けると一気に凍結。うっすらだが雪が乗っている感じの路面でも安定して登っていく。
さらに、標高約1000mの新三国トンネルに向けていくつものコーナーを抜けるに従い、路面はあっという間に凍結路へと変化。そうした路面状況の変化に対しても、安定性とステアリング操作への反応はしっかりと維持されていています。
ステアリング操作に対してキッチリと“舵(かじ)が効く感覚”がありました。最も気になる凍結状態の路面でも、安心感はかなり高くなっている印象です。もちろん強めのブレーキングではABSが時折作動するものの、クルマの姿勢が大きく乱れるようなことはありません。
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新三国トンネルが近づくにつれ、凍結路に圧雪が載った路面に変化が。
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足で踏みしめるとキュキュッと鳴るような雪面でも、しっかりとグリップしている印象。
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登坂車線を走る大型バスを追い越す際、多少のスリップはあるものの雪面をしっかりと掴み、確実に速度を上げていける。
トータルバランスに優れているから安心!
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シンクロウェザーの175/65R15サイズの実勢価格は1本21,450円(税込み)。夏と冬の専用タイヤをホイール付きで揃えたり、年に2回のタイヤ入れ替え作業の出費を考えるとコスパも悪くない。
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新潟県に入るといたるところで除雪車が走り、安定した圧雪路に。コントロール性の高さを感じることができた。
新三国トンネルを抜けると雪はさらに激しくなり、路面は完全な圧雪路と凍結路面とが波状的に出てくる状態に。県境のトンネルを抜け、苗場スキー場から湯沢温泉にかけては下りルートになります。路面は新潟特有の湿り気のある圧雪路になり、さらに最終目的地の塩沢宿までのルートには、豪雪地域といわれる魚沼地方の冬の路面が次々に現れます。
もはや状況は峠付近の凍結路から、脇道の深雪、融雪パイプによるベチャベチャなシャーベット路まで次々に出現するほどに。それでも『シンクロウェザー』はスタッドレスタイヤ並みの走りを叶えてくれました。
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新三国トンネルを抜けると完全な圧雪路へと変化。下りが連続するが雪面への食いつきはよく、コントロールしやすかった。
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湿気の多い新潟の雪は日中になると少し緩み、『シンクロウェザー』の食いつき力はさらに向上。
『シンクロウェザー』は雪国の日常でも使えるレベル
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凍結路、そしてチェーン規制に対応するために準備した『ISSEスノーソックス・スーパーtypeⅡ』。今回は出番なし。
唯一気になったのは、シャーベット状態でのコーナリングです。走りやすさもあり少し速度が高かったのもありましたが、前輪が外側に少し滑る感覚(アンダーステア)がありました。それでも十分にコントロールの範囲内です。
北海道や長野県の標高の高い場所などでよく見られる“ツルツルの氷盤路”、つまり「ミラーバーン」や「ブラックアイスバーン」のような路面状況はありませんでしたが、『シンクロウェザー』は圧雪路や凍結路で想像以上の適応力と実力を示し、雪国の日常でも使えるレベルにまで達していました。
普段は雪があまり降らない地域に暮らしながら冬キャンプや冬のアウトドアによく出掛けるという人にとって、決定的な懸念材料が見つからないオールシーズンタイヤといえます。
残る心配といえば、安心感から“飛ばし過ぎる”というリスクぐらいでしょうか。冬の道では慎重すぎるぐらいていねいに走りましょう!
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時間の経過とともに雪は激しくなったものの、無事に目的地の塩沢宿に到着。
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極寒のツルツルとした氷盤路といった極端な気候条件での走行テストはできなかったものの、トータル性能を向上させた『シンクロウェザー』の雪国対応力は高い。ただし、あくまでもオールシーズンタイヤであり、冬専用のスタッドレスタイヤに比べると、凍結路ではグリップ力や制動距離で劣る場合も。頻繁に氷点下になるような雪国に暮らす人など、雪道のヘビーユーザーは、やはり「夏タイヤとスタッドレスタイヤとの使い分け」が最善だ。
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