最後の山行は、東京の空の玄関口近くに鎮座する羽田神社の羽田富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.138(最終回)】
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    2025.04.02

    最後の山行は、東京の空の玄関口近くに鎮座する羽田神社の羽田富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.138(最終回)】

    最後の山行は、東京の空の玄関口近くに鎮座する羽田神社の羽田富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.138(最終回)】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.138(最終回)は、大田区の羽田富士塚です。

    第138座目羽田富士塚

    今回の登山口は、京浜急行電鉄空港線糀谷駅です

    京浜急行電鉄空港線糀谷駅登山口。

    2023年8月の第1座から1年半以上にわたって続けてきたこの連載「TOKYO山頂ガイド」も、いよいよファイナル。記念すべき最終回、最後に登る山は「羽田富士塚」です。

    羽田富士塚の最寄り駅は京浜急行電鉄空港線の大鳥居駅ですが、徒歩10分ほどの距離。駅チカでいいのですが、記事を書くには近すぎます。では、ということで大鳥居駅の一つお隣、粕谷駅にするか穴守稲荷駅にするかで少し悩みました。せっかく歩くなら都心からのアクセスが良い方がいいだろうと思い、最後の登山口(最寄り駅)は糀谷駅に決めた次第です。

    最終回だからといって…

    糀谷地区は、中心部に産業道路が走り、住宅と工場が混在している町並み。隣接する羽田地区は、おなじみの羽田空港や、緑豊かな多摩川があります。毎年7月末に開催される伝統行事「羽田神社例大祭」は、「ヨコタ」と呼ばれるお神輿を左右に振る独特な神輿の担ぎ方で知られているそうです。

    冒頭でいよいよ最終回ですと伝えましたが、いきなり地域ネタです。いつもこの連載をご覧いただいている方ならご賢察のことと思いますが、書き出しから駅名、地名、地域の由来などに触れるのは苦戦の証しです。今回、事前に地図をチェックしたものの、これというものが見当たらず、ノーアイディア、出たとこ勝負で山行に出発することにしたのです。

    それでも、これまで130回以上も都内の山をめぐってきて、とにかく商店街を歩けば棒(ネタ)に当たる、という何となくの経験則があります。ということで、粕谷商店街をキョロキョロしながら進んでいきますが、なかなか棒に当たりません。

    こうなったら、最終回ということでサラッと目的地に着いて終わってしまおうか。でも、それじゃあ…などとグズグズ考えているうちに商店街が終わりに差し掛かってしまいました。

    (当然ですが)何も悪くない粕谷商店街。

    まさに、商店街が終わる寸前で、お店を発見しました。僕が通りかかったのはとっくにお昼を過ぎている時間帯でしたが、行列ができています。看板を見ると、やや変わった書体で「中華ソバ ちゃるめ」とありました。

    調べてみると、なんと食べログのラーメン百名店に選出されているほどの超名店でした。この日だけでなく、いつも行列ができているようです。僕は食事のために行列に並ぶことはほぼないですし、そもそも今は山行の途中ですが、何とも気になりました。ぜひ一度食べてみたいですね。

    「中華ソバ ちゃるめ」。ラーメン屋としては毎週月曜が定休日ですが、その月曜にはカレー屋として営業しているようです。

    粕谷商店街の端っこにある「中華ソバ ちゃるめ」を過ぎると、当然ですが住宅街になります。その住宅街を抜けた先には萩中公園がありました。園内に進むと、かなりの人出です。これは何か面白そうなことがあるに違いないと、期待が高まります。が、特に何かあるわけではなく、大きな広場にSLや都電の車両が置かれ、野球場が併設されたオーソドックスな公園でした。

    広々とした萩中公園。

    萩中公園を抜け、東京都立つばさ総合高等学校方面に延びる細い道を進んでいくと、自性院、羽田神社、正蔵院などの神社仏閣が集まっているエリアの裏手に出ます。今回の目的地である羽田富士塚は、この一角にの羽田神社に境内にあります。そうです、到着してしまいました。

    最後の山、羽田富士塚とは?

    羽田神社
    こちらは、鎌倉時代、羽田浦の水軍で領主だった行方与次郎(なめかたよじろう)が牛頭天王(ごずてんのう)を祀ったことが始まりとされ、今日でも羽田神社を「てんのうさん」と親しみを込めて呼ぶ人がいるそうです。また、徳川時代には、徳川家、島津家、藤堂家などに厚く信仰されました。

    1869年(明治元年)に神仏分離令によって、自性院境内に祀られていた牛頭天王社は八雲神社(やぐもじんじゃ)として独立。1907年(明治40年)に羽田神社と改称したそうです。

    羽田神社。

    神道制度には「氏神様制度」というものがあります。氏神様制度では、神社周辺の地域を氏子地域と定めており、その地域に住んでいてその神社を信じている人のことを氏子と呼んでいました。羽田空港もこの氏子地域に含まれていて、昔から羽田神社では航空安全祈祷をする人の参拝が多く、それが航空安全祈祷に特化した神社になった理由の1つだそうです。

    羽田富士塚
    こちらの富士塚の築造は、1869年(明治元年)。現在は大田区の文化財に指定されています。この羽田富士塚は改修を経て2020年から登拝=登山が可能になりました。

    羽田富士塚の鳥居をくぐると、大黒様、狛犬、そして山頂の祠と続いていきます。もちろん、富士山と同じように下山用の道で下山します。標高わずか数m、ゆっくり登っても3分かかりませんが、味わい深い富士塚です。

    これぞ!という立派な風格の羽田富士塚。

    登拝=登れる時間が決まっているので、訪れる際は留意してください。

    羽田神社には富士塚以外にも、羽田エリアの区画整理や道路移設で行き場失った、増田稲荷神社や鈴納稲荷神社、羽田稲荷神社が末社として敷地内に移転しています。まさに氏神様制度にのっとり地域に根差した神社としての見本のようです。

    この連載「TOKYO山頂ガイド」の最終回はどの山に登るか。FILE100を越えたあたりから意識するようになり、ここまで熟考を重ねました。いくつかの候補の中から、僕が選んだのがこの羽田富士塚でした。

    僕はロングトレイルのため、ここ数年は毎年アメリカに渡っています。その際にいつも利用するのが羽田国際空港です。そして、地域の神社を受け入れるという神社本来の姿が今なおある羽田神社。これからも僕のチャレンジを見守ってもらえるように。

    なおかつ、日本から海外へ飛び立つ多くの方々、また外国から日本に来る多くの方々が安全で素敵な旅ができますように——。そんな願いを込めて、最後に羽田富士塚に登ろうと決めたのでした。

    これまでご愛読くださり、ありがとうございました!

    連載スタートから1年半以上で、今回で138回。縦走したこともあるので、めぐった東京都内の山は計147座になります。この長い連載にお付き合いくださった読者の皆さま、誠にありがとうございました。

    意外と見過ごしがちな都会の山や自然に、読者の方が気軽に触れるきっかけになれば。そう思って始めたのが、「TOKYO山頂ガイド」です。この連載がきっかけで身近な都会の山に目を向ける人が一人でも増えたのなら、自然を愛するハイカーとしてうれしく思います。

    僕が知る限り、東京23区内の山はあらかた登攀しました。ただ、当たり前ですが、東京以外の地域にも「山」は存在します。機会があれば、「TOKYO」以外の「山頂ガイド」も何らかの形で実現したいと思います。それと、東京には「山」以外にも自然がいろいろあります。そんな身近な自然と向き合う企画も思案しています。ぜひ、また近いうちにお会いしましょう。では!

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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