【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.29】アマゾン旅の終着地ベレンの河口の水はしょっぱいのか?
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    2025.03.08

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.29】アマゾン旅の終着地ベレンの河口の水はしょっぱいのか?

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.29】アマゾン旅の終着地ベレンの河口の水はしょっぱいのか?
    アマゾン川の河口に位置する港町ベレンは、この【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅】シリーズで訪れる最後の都市です。「せっかく川を下るなら河口まで行きたい」と続けた旅が、ついにフィナーレを迎えます。同行者のKさんと共に満を持して乗船した船の名前は「アマゾナス号」。2泊3日、二人で920ブラジルレアル(約2万4千円)の船旅に出発です。

    乗ってびっくり!客船「アマゾナス号」で、この旅、最後の港町へ

    アマゾナス号の乗船風景

    ベレンに行くアマゾナス号へ乗船。海外からの観光客は少ない。

    振り返ってみると、アマゾン川の旅ではいろいろな船に乗りました。木舟にアマゾン式の船外機を取り付けたペケペケ号が壊れたときには、怪しい地元の人の船に拾ってもらったり(vol.7参照)。

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.7】故障に次ぐ故障でドキドキ…今度はヒッチハイクした舟が怪しすぎ!?

    ブラジルのウミリトゥバ村でペケペケ号と別れてフェリーに乗ってみたら、同行者のKさんは屋根付きの甲板にハンモックを吊り下げて寝るのは初体験(vol.28参照)。Kさんからは「寝心地、最悪」という感想をいただいてしまいました。

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.28】まるでカリブ!ブラジルの隠れ名所アウテル・ド・シャンへ行ってみた

    ということで、ベレンへ向かう2泊3日のフェリー、アマゾナス号では、個室を奮発することに決めたのです。

    アマゾナス号の個室

    個室のなかは、こんな感じ。

    せ、狭いッ!

    2段ベッドの上段に座ると、私の頭がギリギリ天井についてしまいます。セミシングルサイズ程度のマットレスに横になり、寝返りを打とうとして、柵がないことに気が付きました。スリリングなベッドです。今から半世紀くらい前にブラジルあたりを航海していた旅客船もベッドに柵がなかったそうなので、ある意味オーセンティックな体験です。

    私たちが個室を選んだ一番の決め手は、エアコンが完備されていること。しかしこの日に限って乾季には珍しい雨模様で、肌寒い。とくに上段はエアコンとベッドの距離が近く、冷気を直接浴びると寝られないくらい寒い。

    そこで上段のマットレスを床に下ろしてみることに。ちょうど床にすっぽり収まったのは良いものの、ジャストフィットすぎてトイレのドアが開かなくなってしまいました。にっちもさっちも行きません。

    トイレとシャワー。

    個室備え付けのトイレとシャワー。

    ちなみにトイレはこんな感じ。シャワーも出ますが、水はアマゾン川の水です。壁が一面茶色いから水の色はあまり気になりません、といいたいところですが、やっぱり茶色い。部屋には窓がないし、ずっと部屋にいると船酔いしそうです。

    一番安いハンモックエリア

    一番安いチケットでは、ハンモックで寝るスタイルのスペースで過ごす。

    結局、夜寝るときだけ個室へ行って、日中はほかの乗客に交じって甲板にハンモックを張って過ごすことになりました。

    床はよく見るとあちこち錆びだらけ。ハンモックをひっかけるフックの近くにコンセントをひとつひとつ備えているフェリーもあるなか、アマゾナス号のコンセントは甲板の一か所のみで、みんなで譲り合って使います。もっとも、旅の間はほとんど電波が通じないので、スマホを充電できるかどうかはあまり大きな問題ではないのです。

    それより問題なのは、この甲板は屋根付きとはいえ雨が降ると床がびしょびしょになってしまうこと。カバンはスノコ状に敷かれた木の板の上にのせておくのが良さそうです。

    船旅の楽しみは、食事とお酒

    船内の食堂

    食堂はこんな感じ。

    「なんか、この間乗ったフェリーよりボロくない?」とKさん。確かに、アマゾナス号はなかなか年季が入っています。期待せずに食堂へ行ってみると、やや重厚感のある木製のテーブルと、チェック柄の模様が施されたイスが並んでいました。就航し始めた当時としては、きっと豪華なフェリーだったことが伺えます。

    調理室で働くシェフ

    調理室は、意外と広くてビックリ。

    調理室を覗くと、寸胴鍋がたくさん並んでいました。なんだか小学校の給食みたい。コックさんと目が合うと、ウィンクをゲット。おちゃめなコックさんが作るご飯に期待が高まります。

    牛肉の煮込み

    とある日の昼食。これは牛肉の煮込み。

    食堂では、朝昼晩、決まった時間に定食を購入することができます。フライドチキンか、牛や豚の煮込み料理の毎回2種類が用意され、ひとつ選んで食券を購入します。

    牛肉の煮込みは肉厚で食べ応え抜群。スジっぽいところはコリコリと噛めば噛むほど旨みが出てきて美味しい。お昼と夕食は同じメニューが続くものの、煮込みの味付けはいくつかレパートリーがありました。私のお気に入りは、胡椒とニンニクが効いたやつ。つまりはお米がモリモリ進む味。

    一方、食事の時間になっても食堂へ行かない乗客もいます。彼らは一体なにを食べているのかというと、小さな干しエビをおかずに、ファリーニャと呼ばれる粉状のキャッサバを片手サイズの金属製のツボから豪快にスプーンですくってモグモグ。船内ではとくにやることもないせいか、川を眺めながらゆっくり食事を楽しんでいました。

    アマゾン旅で一番飲んだビール

    この旅で一番飲んだビールは「SKOL(スコール)」。

    モグモグも良いけれど、ゴクゴクはもっと最高。私はビールを飲みながら時間を潰します。最上階のデッキの売店でビールや簡単なおつまみを購入することができるのです。

    途中で小さな町に停泊すると、フェリーがきちんと接岸しないうちから行商人が危なげなく船にスルッと飛び乗ってしまいました。まるで忍者のような身のこなし。アマゾンで仕事をする人たちはみんなプロフェッショナルです。売店のお兄さんも、私がなにもいわずともカウンターへ行くだけでサッといつものビールを出してくれるようになりました。飲み過ぎです。

    フェリーを追いかけてきた行商人

    フェリーを追いかけてきた行商人。

    走行中のフェリーの後ろを自分の船で追いかけていって、器用にロープを渡してフェリーに乗り込んでくる行商人もいます。

    行商人の船の船外機は、やっぱりアマゾン式のペケペケ。でも、アマゾン川沿いにペルーの上流地域で使用されているペケペケと比べると、船外機が船本体としっかり固定されていました。河口近くは川幅が広く、波で大きく揺れることもあるせいでしょう。

    ブラジル式の一人乗りペケペケ舟

    ブラジル式の1人乗りペケペケ舟。

    なかには、最大2人乗りの小さなペケペケもありました。長さが短い割には横幅があり、先が上向きにシャープに反っていて、この旅を始めたペルーではまったく見なかった形です。

    「ペケペケの形が、変わっている」

    私はそれを見て、アマゾン川が確かに終わりに近づいているんだという実感に襲われました。じわりじわりと、こみ上げてきたのは寂しさでした。

    アマゾナス号から見えた集落

    船から見えた集落と、水浴びする子供。

    アマゾナス号はベレンに近づくと、本流からやや逸れて、デルタ地帯の入り組んだ場所を進みます。川岸を見ると、マングローブ林に隠れるように集落が点在していて、子供たちが兄弟や親子、ときにはひとりで水浴びをしていました。

    ベレンにたどり着くと、アマゾン川の河口が広がっていた

    アマゾン川河口の港町ベレン

    アマゾン川河口の港町、ベレンの風景。

    私にとって旅の終わりの地であるベレンですが、アマゾン川流域の歴史的にはむしろ始まりの地ともいえる港町です。

    港が開かれたのは1616年。ポルトガルによる植民地時代に設立され、アマゾン川流域で初期に開かれた港のひとつです。アマゾン川沿いにブラジル内陸部へアクセスできることから、ヨーロッパとの貿易の重要な拠点となり、とくに19世紀半ばから20世紀にかけて起こったゴムブームで繁栄しました。

    例えば、アマゾン川流域で最大の都市ブラジル・マナウスはゴム産業をきっかけに栄えた都市ですが、アマゾンの奥深くにあり、ヨーロッパとの貿易の玄関口としてベレンは欠かせない港でした。

    浅瀬に停泊する釣り船

    浅瀬に停泊する釣り船と、そこで身だしなみを整える地元の人たち。

    現在のベレンの港沿いは、貿易拠点としてではなく、地元の人の憩いの場所になっています。とくに魚市場の後ろは観光客もほとんど来ないので、浅瀬に座って歯磨きをする人、ひげを剃る人などもいます。

    そういう川の水はきっと口に入れるべきではないのでしょうが、私はひとつ、どうしてもハッキリさせなければいけないことがありました。果たしてほんとうに、ここがアマゾン川の終わりなんだろうか。

    恐る恐る水をなめてみると、しょっぱい。確かにしょっぱいけれど、まだ汽水域です。

    アマゾン川の河口は

    予想に反して、そこはあまり河口っぽくなかった。

    アマゾン川の河口は海のような味がして、大きな湖のように開けていて、川のようにゆっくり流れていました。

    思えば随分遠くまで来たものです。要所要所で一緒に旅をしてくれたマキシー、Tさん、そしてKさんには、感謝しかありません。

    でもほんとうに、ここがアマゾン川の終わりといって良いのだろうか。私のアマゾン旅は、果たして冒険といえるようなものだっただろうか。正直、自信をもって「YES」ということができません。

    ひとつだけハッキリしているのは、アマゾン川は1回の旅ですべてを見るには、大きすぎる川だったということです。

    筆者と、ポルトガル植民地時代の大砲。

    筆者ジョアナとポルトガル植民地時代の大砲。

    暑くて、茶色くて、虫だらけのアマゾン川は、誰もが好んで旅する場所ではないでしょう。でも、私はやっぱり、アマゾン川が好き。どうしてかわからないけれど、好き。もっと知りたい、もっと見たい。それはまるで、恋心。

    一生に一度の思い出のつもりでアマゾン川に来たけれど、またいつか訪れる気がします。あともう1回といわず、何回でもアマゾンに通う。そういう人生も、悪くないと思うのです。

    この旅で見つけたベレンのおすすめ3選

    空港もあるし、フェリーじゃなくてもアクセス可能な都市なのに、意外と観光情報が少ないベレン。そこで最後に、私がベレンでおすすめしたいことを駆け足で3選を紹介します。

    その1.バスク・ロドリゲス・アルベス庭園

    置物みたいに並んだ亀

    置物みたいに並んだ亀。

    たった200円程度の入園料で、半日たっぷり歩き疲れるくらい見所が詰まった大きな公園です。

    入ると早速、亀の行列がお出迎え。置物かと思うほどきれいに整列していますが、後ろから新しい亀が列に加わると、列の前の方の亀は水に落下。亀ものんびりしていられないのが、アマゾンの自然界のようです。

    アグーチという齧歯類

    アグーチという齧歯類。

    遊歩道歩いていると、ヌラリと背中を光らせた動物が飛び出してきました。南米にいるアグーチという齧歯類で、大きさはウサギ程度です。

    • 所在地:Av. Gov Magalhães Barata, 376 – São Braz, Belém – PA

    その2.マンガル・ダス・ガルサス公園

    園内のイグアナ

    園内で自由に暮らしているイグアナを発見!

    町を一望できる展望台や、屋内型植物園など、ベレンの町の新たなランドマークが詰まった公園です。

    建物型の施設は有料ですが、無料で歩ける敷地内を散歩がてら、噴水の白鳥を眺めたり、園内で自由に暮らしているイグアナなどを観察することができます。

    • 所在地:R. Carneiro da Rocha, s/n – Cidade Velha, Belém – PA

    その3.アサイー・アイスクリーム

    アサイーアイス

    ブラジル・アマゾン地域のスイーツといえばこれ。

    最近、健康食品としても人気のアサイーは、ブラジル原産の植物です。町のアイスクリーム屋さんやスーパーでも、必ず売っているのがアサイー・アイスクリーム。濃厚なアサイーがスッと口の中で溶ける絶品。現地へ行く機会があれば、ぜひお試しあれ!

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

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