
じつは気象庁のサイトによると1902年に北海道旭川で記録したマイナス41.0度だそうです。もう123年も前に記録したものなんですね。
どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。相変わらず異常寒波の襲来で最低気温マイナス35度の極寒のカナダ・アルバータ州バンフ周辺からお届けします。

カナダ・アルバータ州の「森」と「平原」でスノーシュー!軍配は?【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
絶対おすすめの隠れアイテムも紹介しますよ!【カナダ・アルバータ州旅6】
さてその気象庁のサイトでは最低気温ランキング第20位までを記載。第20位はマイナス34.9度の「音威子府(おといねっぷ)」ですが、「富士山」を除くと北海道、特に内陸部の地名がずらり並んでいます。
ということは私がカナダバンフ周辺で約1週間体験してきのは、日本一の厳寒地帯である北海道内陸部各地の観測史上最低気温と同じくらいの寒さ! よくよく考えるとこんな体験をできる機会はざらにはありません。
いっしょに旅した4人の仲間たち(オーストラリア人、イギリス人、フランス人、ドイツ人)はトラベルジャーナリストなので世界各地を旅してきたのですが、誰もが「今までの人生で体験した最低気温」と口を揃えます。
ちなみに世界における観測史上最低気温記録というのは、1983年にソビエト連邦(当時)が持つ南極のボストーク基地で観測されたマイナス89.2度だそうです。
オシッコは凍るのか? バナナで釘は打てるのか?
さて強烈な寒さに見舞われていた中で私が思い出していたのは、子どものころに読んだ「シベリアのある村ではマイナス70度とかになって、立ちションしたオシッコが放物線を描いて凍る」という話。「首長族」や「下唇が長いほうが美人」といった話とともに、「世界っておもしろそうだなあ」と子ども心に思いました。
そう考えると、こうして世界を飛び回るライターになったのも「凍るオシッコ」のおかげです。
てなわけで敬意を表して早速「オシッコは凍るのか」実験してみることにしました。だけど立ちションをしてアソコが凍傷にでもなったらどうしよう。将来のビビり癖を発動して、オシッコの代わりにそれよりも温度が低い水を、細~くたらしてみることにしました。
その結果は…凍りません!
まあ考えてみればそうですわな。流れる水が一瞬で凍るのであれば、コップとかに入れた水はそれ以上に一瞬で凍るはず。でも少なくともしばらくは水のままでしたから。

でも湖や川は凍ります。とはいえ氷が薄いところもあるので注意が必要。
さて「強烈な寒さ」でもう一つ寒さで思い出すのは1970年代にあったエクソンモービル社の「モービル1(ワン)」というエンジンオイルのCMです。
「マイナス40度の世界ではバナナで釘が打てます」というナレーションとともに、映像でも実際にバナナで釘を打ちます。「他の高級エンジンオイルはマイナス40度だと乳化したかのように濁ってドロドロになってしまうけど、モービル1ならサラサラのまま」という、「実証広告」かつ「比較広告」の先駆けとなった名作です。
これまた敬意を表して実験しようかと思ったのですが…海外を旅する最中に「釘を打てる場所」なんて見つかりませんわな。
というわけである夜、とりあえずバナナの代わりにプチトマトやセロリスティックなどをマイナス35度の屋外に放置してみました。翌朝見ると見事にカチンコチンになっていました。

もちろんそのままでは固すぎて歯が立ちません。食べるには解凍が必要。
そういえば堺雅人さん主演で映画化された『面白南極料理人』などの著書があり、料理研究家などとしても活躍している西村淳さんから以前、「南極の基地では冷凍庫は不要。冷凍したかったら屋外に放置しておけばいいから」と教えてもらったことを思い出しました。
オオカミとイヌの混血「ウルフドッグ」も!
てなわけで肉だって凍ります。今回のプレスツアーの最中「オオカミと犬の混血」、その名も「ウルフドッグ」を集めた施設「ヤムヌスカウルフドッグサンクチュアリー」を訪れました。

やっぱりシベリアンハスキーに似ていますね。

こんな自然環境の中、ウルフドッグを保護し、飼育しています。
そこでのガイドツアーで飼育員が「イヌの血が濃い個体には市販の肉のドッグフードをやりますが、オオカミの血が濃い個体にはこういう羽をむしっただけの鶏肉を丸ごとやります」と説明したあと、実際にカチンコチンに凍った鶏肉を10メートルほど離れたところに放り投げました。
オオカミの血が濃い個体はそちらへ向かいます。その間に犬の血のほうが濃い個体に袋から出した5センチ角くらいのドッグフードをやり始めたのですが…。
オオカミの血が濃い個体のほうも一瞬鶏肉をつついただけで、飼育員のほうに戻って小さなドッグフードをねだり始めました。
まあ、あたりまえですよね。肉だって釘が打てるレベルでカチカチなんだから、いくらオオカミの血が濃くても歯が立つわけありません。野生のオオカミだって捕らえた獲物を冷凍保存とかしないでしょうし。笑

ウルフドッグたちにとってもマイナス35度の世界は「♪喜び庭かけまわり~」とはいかないようです。
ちなみにここにいるウルフドッグの多くは人間が飼い始めたけれども手に負えなくなって手放したものだとか。やはり濃淡はありますがオオカミの血が混ざっているので犬を飼うようなわけにはいかないようです。
さて「実験」的なことはこのくらいにして、この先は「マイナス35度で世界はどうなるか」をお伝えしたいと思います。
「自然」はどうなる
・樹氷がすごく美しくなる

枝が氷にコーティングされるような感じです。
木全体がもこもこと完全に雪に覆われるよりも、もとの姿が見えるこうしたタイプの樹氷のほうが個人的には好みです。車窓から眺めているだけでも幸せでした。…いや、車窓から眺めているだけのほうが、か?笑
・景色、特に夜景がすごく綺麗になる

これは前回「バンフゴンドラ」で紹介した通りです。

バンフの街中もちょっときらめいています。
・乾燥しているからか雪の量は日本の豪雪地帯ほどない。特に平地は「うっすらと雪化粧」程度

道路脇にかいた雪がない分、街並みもきれいです。

つららはすごいことになりますね。
「カラダ」への影響
・吐く息が白いどころかエクトプラズムみたいなまっしろなモヤモヤが出る
ちなみに環境庁の「なんきょくキッズ」というサイトには「マイナス30度にもなると、はいた息が凍(こお)ってしまいます」と書かれていたけど、そうはならなりません。「南無阿弥陀仏」の声が6体の阿弥陀如来の姿となって口から出ている空也上人じゃないんだから…。
・露出している頬が痛くなる
・手がガサガサになる。特に手袋を外すことがままある右手だけしもやけになる

ちょっとわかりづらいかもしれませんが…。

右の手の甲だけ赤い斑点ができています。
・指紋が消えてパソコンやスマホの指紋認証ができなくなる
・超露天風呂好きの私でも入る気力がなくなる
・自然との一体感を満喫できるグランピングテントに宿泊できても…外の気温同様テンションはまったく上がらない

とはいえ室内は暖房は効いていたので寒くはありませでした。
・誰も風邪を引かなかった
「南極ではウイルスが存在しないので風邪を引かない」というのと同じ理屈なのかもしれません。でも南極にウイルスが存在しないのは超低温だからではなく、人口密度が低いからみたいな話もありますよね。
「機械」への影響
・スマホが突然ブラックアウトする
最初のスノーシューをしていたときに、スマホの画面が突然真っ暗になり、うんともすんとも言わなくなりました。ずっと首から提げて外に出していて冷えたことが原因かと思い、カイロを入れたポケットの中にしばらくおいておいたら直りましたが。汗
以降、ポケットに入れておいて撮影時だけ取り出すか、「防水防塵パック」に入れて外気に触れさせないようにしました。
・ずっと私たちを乗せてくれた15人乗りの小型バスのバッテリーが上がって、その日のスケジュールが3時間くらいずれた
・パソコンの電源が入らなくなった
エアコンが効いていないバスで使ったことが原因かも? パソコン修理ショップで放電作業をしてもらったら直りましたが。
極度に寒いところでは絶対にパソコンをいじらないようにしましょう。
あるといいもの
・帽子、ネックウォーマー、目の周り以外すべてを覆フェイスマスク、手袋、発熱・蓄熱系のインナー(タイツも含む)、靴に入れるタイプも含む使い捨てカイロ
このあたりはすぐに頭に浮かぶと思います。
・ミトン型の手袋!!!
ビックリしたのはスノーシューのガイドのジョーが教えてくれた「指が1本ずつ離れた手袋ではなく、人差し指から小指迄がいっしょに入るミトン型の手袋が暖かい」ということです。「一本一本の指が包まれているほうが暖かいだろ~と、多くの人が最初は信じないです。だけど指と指がくっつくことでお互いを暖めあうんです」とのこと。
雪山とかで遭難したとき裸になってお互いの体温で暖めあい、そのまわりを毛布などでくるむといいとかいうのと同じなのでしょう。
それからミトン型だとポケットに入れる用のような小さな使い捨てカイロを中に入れて、指先や手の甲を暖めることができます。
実際、ジョーはツアー参加者にミット型の手袋を貸してくれたのですが、本当に暖かかったです。
以上、「マイナス35度で世界はどうなるか」でした。
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
カナダ観光局
https://travel.destinationcanada.com/ja-jp
アルバータ州観光局(英語サイト)
https://www.travelalberta.com/
カルガリー観光局(英語サイト)
https://www.visitcalgary.com/
Yamnuska Wolfdog Sanctuary(ヤムヌスカウルフドッグサンクチュアリー)
https://www.yamnuskawolfdogsanctuary.com/
