
CINEMA 01
水没しつつある世界でネコがたどる壮大な物語
『Flow』
(配給:ファインフィルムズ)
●監督・脚本/ギンツ・ジルバロディス
●3/14~TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
大洪水に巻き込まれたネコ。森の住処からの旅立ちを決意し、流れてきたボートに乗って進むと、世界は水没しつつあった。ボートに乗り合わせたイヌやカピバラらと食べものを分け合い、信じられない危機を切り抜けて、絆のようなものが生まれるのだが……。
監督はラトビア出身で長編2作目、この映画でゴールデングローブ賞アニメーション映画賞を受賞。冒頭、ネコが暮らす森の描写がもうスゴイ。樹々の重なりや森を呑み込む水の一滴、画面の隅々まで生命が満ち満ちた気配が漂い、圧倒的リアリティーで立ち上がる。
なぜ洪水が起きたのか? ネコの形をした大小の謎の彫刻が点在する理由とは? そこで営みを送っていたはずの人間の不在が強調され、ネコらはどこへ行くのか?その冒険を、観客はワクワクしながら見守ることに。
ナレーションも、動物の過度な擬人化もなし。大スクリーンで、その驚くべき映像と対峙する贅沢さを堪能したいと思わせる一本。
CINEMA 02
故郷の韓国を離れて、ここではないどこか、私の居場所を探して
『ケナは韓国が嫌いで』
(配給:アニモプロデュース)
●監督・脚本/チャン・ゴンジェ
●出演/コ・アソン、チュ・ジョンヒョクほか
●ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中

© 2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.
ソウル郊外の団地で家族と暮らす28歳のケナ。片道2時間かかる地獄の通勤、興味の持てない仕事、古い価値観に縛られた両親。結婚相手として申し分ない恋人はいるし、自分に落ち度はないはず。でも幸せになれないから〝韓国が嫌い〟。居場所を求め、ニュージーランドへ旅立つ――。
ケナは、新天地を求めてワーキングホリデーへ。現地の友達とサーフィンを楽しんだりして海外生活を満喫。でも結局、勤務先の小さな人間関係のなかでくっついたり離れたり。韓国とは別の日常を送りながら、幸せって? と自問自答を繰り返すケナ。日本の会社員も共感必至。ケナの選びとった生きる道は?
※構成/浅見祥子
(BE-PAL 2025年4月号より)