
WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#10 黄金に輝く水の島
Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。
氷の下に広がる大宇宙
マイナス10度Cをかるく下回る氷原。テントから出て、背筋を伸ばし鼻からスゥ〜っと深呼吸。肺が冷たい空気で満たされ、鼻毛が凍る感じもまた心地よい。このような空気感を英語では、Crisp airと表現する。日本語では、澄んで凛とした空気という感じだろうか……。
遠くまで氷の原野が見渡せる場所で、太陽のほうを振り返って、驚いた。眼前に眩い光景が広がり、赤いジャケットを着ていたので、青き衣を纏ってはいないけれど、僕はなんと金色の大地に降り立っていたのだ!!
アイスフィッシングに来て、氷上で長時間過ごしていると、大自然の織りなす珠玉の光景に遭遇する。もちろん釣りに来ているわけだから、氷の下の大物との出会いを求めているのだけれど、フォトグラファーとしては、未見のグラデーションや色彩との巡り合いも至極の喜びだ。
別の惑星に迷い込んだかと錯覚するような光景と、氷の下にはまた別次元の大自然の宇宙が広がっている。此処は、なんとも摩訶不思議な場所だ。
スノーストームで雪と風が吹き荒れ、過ぎ去った後にはご褒美のような光景が広がる。目を見張る光景や氷の下から上がってくる魚も、一期一会。
時には穏やかに時には劇的に、多様な色彩を湛える水の島へ、今日も逢いに行く。
黄昏を映す氷の大地。刻一刻と色彩を変化させる、ドラマチックな一日の終わり。氷原にポツーンと暖色のテントが映える。
テントの窓を閉めて遮光すると、太陽光が湖底に反射して氷の下がエメラルド色に発光する。青の洞窟ならぬ、青の大地だ。
足元には、こんな大物がっ!! 草食の魚、57㎝のホワイトフィッシュが釣れた〜! 白身でプリッとした食感がとても美味。

氷の下の動画 見られます!
(BE-PAL 2025年4月号より)