
キャンプをしながら培える防災対策や知恵を、編集部員が楽しみながら体験!編集・フジタニファミリーが家族で防災術をやってみた!

教えてくれる先生 ENstyle店主 川村峻介さん。東日本大震災を経験し、アウトドア道具の重要性を再認識。 ’15年にアウトドアショップを開店。「NODOORS」という日常と自然をつなぐイベントも企画し、6月に開催予定。
教わる人 編集 フジタニファミリー。 スキー、サーフィン、キャンプと1年中アウトドアを謳歌。東京下町の超過密地帯に居を構えているため、防災意識もかなり高め!
まずは…防災に役立つアウトドア7つ道具を紹介!
ストーブ

手に入りやすいCB缶が使えるストーブがおすすめ。低温下でも火力が安定するタイプなら使う状況を選ばない。
手回し充電ラジオ

情報を得るのにラジオは必須。手回し充電タイプなら電池切れの心配もない。スマホ充電可能なタイプなら、なお◎。
LEDライト

日中、ソーラーパネルで充電できるLEDライトは、移動中もバッグにぶら下げて充電できる。たたむと1.5㎝の厚さに。
防水靴下

急な雨などで靴が濡れても、足自体が濡れるのを防げる防水靴下。足元の冷えによる体力の低下を防げる。
マット

寝具としてはもちろん、避難所での座布団代わりにもなる。携行のしやすさを優先するなら、エアタイプを。
エマージェンシーブランケット

ポリエチレンの生地に高純度のアルミを蒸着加工。体を包むことで熱を逃さず、体温を維持できる。緊急時の防寒に。
ポンチョ

ザックごとすっぽり覆えるので、突然の雨に対応できる。広げればグランドシートやタープとしても使えるのがいい。
防災キャンプを学びに経験豊富な川村さんの元へ
’11年の東日本大震災の際、宮城県・仙台市の精肉店で働いていた川村峻介さん。電気はすぐ復旧したが、ガスが復旧するまでには1か月ほどかかった。
川村さん(以下 川 敬称略)「その間ひとつの部屋に毛布と灯油を持ち寄り、マンションの住人と1か月共同生活をしていました」
そのときにアウトドア道具やノウハウが災害時に役立つことを実感した。今回はそんな川村さんのもとに、防災キャンプを学ぶべく、編集部フジタニファミリーが弟子入り!
川:「防災スキルはキャンプや登山の経験値に比例します。ウェアのレイヤリングひとつをとっても、防臭&保温性にすぐれるアンダーウェアや、体の濡れを防ぐレインウェアがあれば、命を守るポイントになります」
フジタニ(以下 フ)「速乾性でいえば化学繊維のアンダーウェアがいいですよね?」
川:「乾くのは早いんですが、ニオイが出やすいんです。洗濯できない状況を考えるとウールがおすすめ。ニオイってかなりストレスになるんですよ」
フ:「なるほど〜。防災のことを考えると、道具選びの視点も変わってきますね」
川:「テントはいざというときに備えて設営しやすい自立型、寝袋は居住地の冬の最低気温を考慮するなど、あらためて道具を見直してみるのもいいですよ」
Q1 防災を考えたテント選びって?
A1 テント避難なら自立式、避難所なら山岳用テントを
テントはいざというとき、密を避けられる避難所になる。車中泊でのエコノミークラス症候群を回避するのにも役立つ。キャンプの際は家族全員で一緒に設営するなど、道具に触れて使い方に慣れておくといい。
MSR/エリクサー3
¥68,200
問い合わせ先:モチヅキ TEL:0256(32)0860
設営が簡単で、駐車場などアスファルトの上でも自立可能なテントがオススメ。夏場の暑さを考え、メッシュにできるタイプならなお良し。
モンベル/ムーンライト テント1
¥38,500
問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL:06(6536)5740
避難所でプライベートスペースを確保するには、ソロ用の山岳テントがあるといい。軽量で携行も楽なので、持ち出し用ザックに常備しよう。
Q2 寝袋やマット選びで気をつけることは?
A2 寝袋もレイヤリングし、日常的に活用する
快適に寝るためには、寝袋、寝袋カバー、マットの3つをワンセットで考える。防寒着を着て入ったときに、居住地の最低気温をしのげる温度設定にすること。暖かい季節はそこから引き算していけばいい。

寝袋はクッションに。
寝袋はクッションカバーに入れ、リビングや車内に置いて日常的に使う。収納場所も確保できる。
寝袋
最低気温に対応できるものを選ぶのが必須。撥水性にすぐれるものを選べば、濡れにも強い。夏用冬用があるとさらに◎。
寝袋カバー
体熱を反射保持し、独自の透湿性素材を使用し蒸れにも強い。冬はカバーとして、夏はこれ1枚でもOK。
マット
クローズドセルマットは、かさばるがパンク知らずで頑丈なのがウリ。地面の冷たさを遮り、凹凸を緩和する。
ナルゲンボトルを湯たんぽに
お湯を入れて手ぬぐいやタオルを巻けば湯たんぽに変身。ナルゲンボトルは気密性が高いので、避難時濡らしたくない書類のコピーや、電池などを入れておくケースにも。
着替えは寝袋で保温

冬の朝でも 温か〜。
寝袋の中に次の日に着るウェアを入れて寝れば、体温で温められる。「着替える際に、ヒヤッと感が軽減できます。温かいものは、精神的な安定をもたらしてくれます」
Q3 防災バッグに入れるべきウェアは?
A3 防臭アンダーに防寒着+レインウェアが必須
「着替えることができない状況で注意したいのが"寒さ"と"濡れ"。下着は防臭にも役立つウール製。そこに登山のレイヤリングのようにダウンやレインウェアを重ねることで調節し、体温の維持を図ります」
ウールのアンダーウェア
これで 寒くない!
ウールは保温力が高いうえ、ニオイの原因となるバクテリアの繁殖を抑えるため、長期戦に最適。薄手がおすすめ。
↓
防寒着上下
防寒着は軽くて保温性が高い、ダウンウェアを。コンパクトに収納できるので、防災バッグにも入れておきやすい。
↓
レインウェア
体を濡れから守り、防寒にも役立つレインウェア。咄嗟のときはポンチョでいいが、日常動きやすいのはこちら。
アイマスクになるニット帽
「避難所では周りの音や明かりが気になることもあります。ニット帽なら目から耳までスッポリ覆うことができ、安眠に役立ちます。洗えない髪を隠せるのもありがたい」
アイデア次第で変身する手ぬぐい
手拭きからホコリ除けのマスク、帽子代わり、つなげれば三角巾にも変身する万能選手の手ぬぐい。「乾きやすく、長さも十分あるので、1人2枚以上備えておくといい」
Q4 飲料水の確保にも使える道具とは?
A4 クーラーボックスやバックパックが水確保に活躍
飲み水の備蓄はもちろんだが、災害時は雑用水を手に入れるためのウォーターキャリーも必要だ。普段使わず収納にかさばるタンクを購入するよりも、キャンプ用のクーラーバッグやバックパックを活用するのも手。
モンベル/ロールアップクーラーバッグ10L ¥7,200
モンベル/わんパック15 ¥17,000
問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL: 06(6536)5740

これぐらい へっちゃら!
雑用水として使うならクーラーボックスなどに直接入れてもいいが、飲料用にするなら、ビニール袋を二重にしてその中に水を入れる。バックパックなら水漏れを防ぐこともできる。
子供のリュックもウォーターバッグに活用。水を入れ、実際に背負わせることで重さを体感させておくといい。
冷気を逃さない頑丈なクーラーボックス&バッグは、バケツ代わりに最適。自分が携行できる重さを自覚しておく。
浄水器の実力を試してみる
水が取れる地域で継続的に清水を得るには、浄水器が効果的。百聞は一見に如かず。キャンプの際に湧水などを汲んで、使い方含め、一度試しておくと、いざというときも慌てない。
ソーヤー/ソーヤーミニSP128
¥5,500
問い合わせ先:アンプラージュインターナショナル https://upioutdoor.com/
全長13.5㎝、約41gの超小型浄水器。フィルター交換が不要で、使用後は付属の洗浄用注射器で汚れを取れる。38万ℓ使用可能。
ソーヤーミニを水を汲んだ容器の口にセットし、逆さにしてゆっくりボトルを押すと水が出てくる。

美味しく飲めそう
あると便利な転ばぬ先の杖的ギア
ヘッドランプ
両手が空くヘッドランプはひとり1個あると、逃げるときも安心。明るく、電池の消耗が少ないLEDライトを。
ソーラーパネル
バイオライト/ソーラーパネル 5PLUS
¥14,300
問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL:06(6536)5740
内蔵されたリチウムイオン電池に蓄電できる、ソーラーパネルがあると安心。
ホイッスル
モンベル/アルミホイッスルM
¥1,045
問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL:06(6536)5740
緊急時に備え、普段から子供にはホイッスルを常備させる。キャンプ場で吹いてみる経験も必要。
ナイフ
モーラナイフ/コンパニオン スパーク エマージェンシー(S)
¥5,500
問い合わせ先:アンプラージュインターナショナル https://upioutdoor.com/
調理はもちろん、紐を切る波刃も装備したナイフ。ファイヤースターターも付属し、火おこしもOK。
Q5 非常用トイレはキャンプに必要?
A5 非常用トイレはキャンプで使い方を試しておく
断水して明かりもない。災害時はそんな状況下に陥ることも。非常用トイレを防災用に備蓄している家庭も増えているようだが、家で試してみるには抵抗があるようで。せっかくならキャンプでお試し!
PATATTO/パタット350+
¥6,380
問い合わせ先:イケックス工業SOLCION(ソルシオン)TEL: 0120-92-7575
パタンとたたんで携行できる折りたたみ式のイス。座面をはずして、防災用のトイレキットをセットすれば、トイレに早変わり。
テントを目隠し代わりにすれば恥ずかしさも軽減。
トイレットペーパーは芯を取り、紐を通して携行。
メンタルケアに欠かせない消臭剤
ファイントラック/マルチ消臭スプレー
¥1,320
問い合わせ先:ファイントラック TEL:0120-080-375
「避難生活はニオイに敏感で、結構、メンタルをやられるので、消臭剤は必須」汗や皮脂のニオイはもちろん、アンモニア臭や焚き火臭まで解消するマルチタイプが大活躍。
火おこし体験は心に余裕がもてるし、自信にもつながる
川:「キャンプを通して、子供にも防災意識を持たせるのが、防災キャンプの醍醐味です」
テントの設営もお父さんまかせにせず、家族で張ったり、一緒にガスバーナーに火を着けるなど、遊びの延長でキャンプ道具に積極的に触れさせることが“もしも”の備えになる。
川:「焚き火するから一緒に火おこししてみようか?」
子:「やりたーい!」
麻紐で火種を作り、ファイヤースターターでの着火に挑む。
川:「キャンプだったら普通なことですけど、防災だと生きるスキルになります。実際にはライターやマッチがあれば必要ないかもしれないけど、火おこし体験することで、気持ちに余裕が持てたり、自信につながります」
子:「着いたー! 見てた!?」
その火を使ってお湯を沸かす。フリーズドライのごはんが、いつもより美味しく感じられる。
川村さんは、アウトドアとインドアの「ドア」をなくすという意味の「NODOORS」というイベントも開催している。会場では空き缶を使ったアルコールストーブを作るワークショップや、登山での救急用品の展示なども企画されている。
川:「まずはアウトドアに興味を持ってほしい。キャンプや登山で楽しみながら、経験値を上げていくことで、結果的に災害に強い人が増えると考えています」
Q6 火おこしスキルは災害時に欠かせない?
A6 防災意識を高めるために火おこしを!

むずかしい〜!
「ライターとシングルバーナーを準備しておけば問題ないと思いますが、キャンプを利用し子供に火おこしを教えましょう。防災意識が高まり、火の扱いに慣れることができ、いざというときに役立ちます」
火種は麻紐や牛乳パックなど、身近にあるもので作れる。麻紐は1本1本ほぐし、綿状に丸めておく。
↓

着いた!
ファイヤースターターで火花を飛ばし、着火する。火のつく仕組みや、着け方を覚えると自然力もアップ!
Q7 防災食を美味しく食べるコツは?
A7 普段から防災食に慣れ、工夫して美味しく!
缶詰やレトルトなどの長期保存食はキャンプでも活用できるので、楽しみながら試してみる。備蓄食材をゴミにしないためにも、定期的に食べるといい。少ない資源で調理できる防災クッキングの知恵も役立つ。
1 フリーズドライ食品を試してみよう!

左から水、みそ汁、湯を入れたもの。
フリーズドライ製法で作られたごはんを、水(5分)、お湯(3分)、みそ汁(3分)で食べ比べ。フリーズドライのみそ汁を入れた物が塩気も加わり大好評。次点が食感の良さで水仕様!

あっという間に完成!
モンベルが独自開発したリゾッタ(¥490〜)。アルファ化米より軽量で短時間で調理できる。
秘密兵器はモンベルのフードコジー(¥1,900)。寒い時季も防災食を温かいまま食べられる保温カバー。
2 セミドライフードをキャンプ飯に活用
軽量で持ち運びが楽なうえ、栄養価の高いドライフードは、キャンプ&防災食に最適。「キャンプで1日干せばセミドライフードができるので、翌朝のスープなどに使ってみるといいですよ」
3 ポリ袋クッキングをマスターする
水が貴重な災害時は、熱に強い高密度の料理用ポリエチレン袋が活躍。お湯さえ沸かせれば米を炊いたり蒸しパンを作ったり。手を汚さず食材を混ぜたり、冷蔵冷凍もOKなので保存容器代わりにも!
−30度Cから120度Cに対応。電子レンジ、熱湯ボイルにも使える料理用ポリエチレン袋。
蒸しパン作りの材料。左からホットケーキミックス(2袋)、水(270㎖)、ベビーチョコ、ドライフルーツなど、適量。
❶水と粉を半量ずつポリエチレン袋に入れ、片方にドライフルーツ、片方にベビーチョコを投入。
↓
❷袋の上からよく混ぜる。鍋に湯を沸かし、沸騰したら①を入れ、約20分湯煎する。火が通ればOK。

美味しく できた!
気を紛らわす娯楽は災害時も大切
長期的な避難生活では気を紛らわすため、トランプなどの娯楽も必要。「キャンプの夜にも通じます。たったそれだけで、家族に笑い声が戻ります」
ヘッドランプがランタンに変身
レジ袋やポリ袋に空気を入れ、ヘッドランプの発光部に被せて口を結べば、簡易ランタンに。
before
↓
after
ENstyle
住所:宮城県仙台市青葉区本町2-16-15 ツルミヤ本町ビル2階
電話:022(281)9237
営業時間:11:00〜19:00
定休日:火・水曜
"ノードアスタイル"をテーマに、アウトドアとインドアを融合させた商品をセレクト。防災をテーマにした、親子で楽しめる体験型イベントも企画・開催している。
※構成/大石裕美 撮影/三浦孝明 協力/青葉山公園 https://parks-aobayama.jp
(BE-PAL 2025年4月号より)