
キャンプをしながら培える防災対策や知恵を、編集部員が楽しみながら体験!編集・オガワがベンチャースカウト隊の隊長に教わってきた。
災害時に役立つ技を衣食住にわけて紹介!

教える人・ボーイスカウト横浜34団 ベンチャースカウト隊 隊長村 瀬剛徹さん(右)。小学3年生のカブスカウト隊からスタートし、2025年でスカウト歴44年目。本職は海上保安官で、日々、海の安全を守る。キャンプ歴は40年。趣味はスナップオンの工具集め。教わる人・編集 オガワ(左)。

ベンチャースカウト隊とは? ボーイスカウト運動の中で、おもに高校生を対象とした部門。ロープワークや読図といったスキルだけでなく、自ら目標を見つけて計画し、行動する自立性も育める。
ソロキャンプの経験はある程度してきた自負がある僕だが、いざ災害が起きたらどうだろうか。水の確保は?明かりは?など、難題が次々と降りかかると対処できないかもしれない。
「キャンプでは持ってきたもの、もしくは身近なものでどうにかしないといけない環境なので、経験や引き出しが多いほど災害時に役立ちますよ」
と語るのは、ベンチャースカウト隊を長年指導している村瀬さん。普段は海上保安官として働き、休日は高校生を対象に野外活動などの場を与える指導者として活動している。ほぼ毎日、アウトドアフィールドにいるといっても過言ではない。
オガワ「身近なもの……。正直自分にはアイデアがないです」
村瀬「たとえばアルミホイル。熱伝導率と反射率が高いので、ワイヤーに巻けばフライパンになりますし、ダンボールに巻いて座布団にすれば体の熱でおしり周りの寒さ対策になります」
オ:「ホイルだけでもう2つのギアができちゃいました。機能を知っておくのは大事ですね」
村:「そのほかにも、コンビニやスーパーに置いてあるもので被災中の困難を乗り切れる方法があるので、活かせるキャンプ術を教えますね!」
今回は、災害時に役立つ技を衣食住にわけて紹介。果たして僕はどれだけ成長できる!?
【住】ブルーシートで作れる即席シェルター
屋根がない場所でも、木が1本あれば雨風をしのげるスペースを確保できる。建物や倒れやすい壁から離れて作るのがポイント。
材料
ブルーシート、紐、ペグ5本用意。シートは正方形ではなく長方形を選び、紐は麻や綿など天然素材が理想だがビニール製でも使える。
1
最初にシートをのせるための背を作る。木に新聞紙を巻き付け、その上から巻き結びで紐を固定する。
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斜めに紐を伸ばし、紐の端を地面にベグダウン。紐のゆるみを調整できるように自在結びで固定。
自在結び
2
シートの向きは長辺を天地にし、紐に被せる。地面につく2か所の角をペグでしっかり固定。
3
浮いている2か所の角に紐を結ぶ。紐を斜めに引っ張って、ピンと張ってペグで固定する。

プライバシーが守れる!
大人ひとりがちょうど入るサイズのシェルターが完成。「日差しも防げて安心」(オガワ)
【住】雨水を一気に集める水汲み器
2本の木を使い、シートに落ちた雨水を効率的に集める方法。シート、ペグ、紐に加えて70㎝の竹を2本用意する。
バタフライノット※1とふた結び※2
紐を木に固定。位置は目線の高さほど。水の重みでシートがゆるむため、2種類の結びを作りしっかりと固定する。
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紐をシートの穴に通して、反対側も木に固定する。シートがずれないように、シートの角は固結びしておくと安心。
固結び
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紐を結んでいないシートの角に竹を立て、ペグを上から差し込む。紐を引っかけ、地面に固定。紐は二股にすると安定する。
↓

水がどんどん入る!!
V字にくぼませたところへ、大量の水が集まってくる。数分たらずでバケツがほぼ満水に!
※1と※2はBE-PAL.NETにて紹介中。 https://www.bepal.net/category/ropework
【住】材料はたった3つ! 簡易ローコット
災害時に便利な担架を、竹で組んだベースにのせるとコットに変身! 足腰が痛い人や地面の冷えが苦手な人におすすめ。
材料
竹、毛布、紐を用意。竹は約2m(大)を4本、約70㎝(中)を2本、約50㎝(小)を4本。毛布は大人の身長くらいの長さがある大判。
ベース作り
角縛り※3
小を縦に、中を横に、大を斜めに組み竹を固定。小の固定部は安定感を出すため低めに。
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大の竹を2本用意。1本を毛布の一方から1/4の位置に置き、毛布を内側に折ってピンと張る。
↓
安定させるため小の竹は内側に向ける。ガタガタしないように高さを調整したら完成。
↓
担架作り
平らな地面に毛布を広げる。凹凸のある場所だと毛布が波打って、人が乗ると緩みやすくなる。
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大の竹を交差させ、交点を紐で固定。ここは筋交縛り※4でガッチリと結ぶ。
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もう1本を毛布の反対側から1/3の位置に置く。折った毛布が少し重なる位置に合わせる。
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反対側の毛布を内側に折ったら完成。竹を握れるように、竹の両端は手のサイズほど余らせておく。
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腰が地面に当たらないローコットが完成。壊れないようにゆっくりと乗ろう。
※3と※4はYouTube「Scout Handbook Online」にて公開中。 www.youtube.com/@ScoutHandbookOnline
即席アイテムが続々!
オ:「防災に役立つキャンプの技は何かありますか?」
村:「ロープワークはひと通り覚えておくと重宝しますし、タープのアレンジ術を知っておけば、どこでもシェルターが張れます。また、どの道具に可燃性、熱反射といった機能があるのか知っておけば、被災した際にその知恵を生かせますよ」
スムーズに手を動かしながらお話をされる村瀬さん。ローコットや浄水器、カートンバッグ、フライパン、ツナ缶オイルランプなど、続々と即席アイテムを作り出す。
オ:「目から鱗の道具が止まりません! なぜそんなにアイデアが出てくるのですか?」
村:「隊に所属するスカウトたちにアイデアやヒントを与え、活動が支援できるように、定期的に訓練をしているからです」
オ:「どんな訓練なんですか?」
村:「ボーイスカウト横浜34団の指導者は、複数人で定期的にキャンプをします。ボーイスカウトとしての技能をもとに、最低限の道具でどうやったら生き抜けるか? など、さまざまなテーマでアイデアを出し合いながら一泊します。それを繰り返すことで引き出しが増えました」
村瀬さんは、気づけば13のネタを披露してくれた。
僕も村瀬さんのような達人に近づけるよう、日々訓練するぞ!
【食】牛乳パックが燃料に! カートンドッグ
炭や薪の代わりに、牛乳パックを燃料にして作るカートンドッグ。パンとソーセージがあればホカホカの軽食が作れる!
材料
アルミホイルと牛乳パックを用意。牛乳パックは1ℓサイズを使い、ホイルは余裕をもって具材を包むため、幅30㎝の大きいタイプが理想。
パンにお好みの具材を挟み、ホイルで包む。具材がはみ出ないように、ホイルは少し余裕をもって長めにカットする。
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包んだら、両端を内側に折り込む。熱が具材に行き渡るよう、崩れない程度にぴったりとホイルを包むのがポイント。
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牛乳パックの中に、ホイルを入れる。パックの底まで押し込むとパンが焦げやすいため、底から少し離しておく。
↓
牛乳パックに火をいれ、パックが焼け切ったら完成。ホイルの下にパックが燃えず残ることがあるため、余らせずに燃やす。
完成!
ホットドッグ以外に、コンビニなどで売られている惣菜パンをホイルに包んで焼くのもOK。いろんな具材を試してみよう。
【食】処理も作るのも簡単! エコな浄水器
災害時に何かと必要な水を、汚れた水から作る。材料は家にあるものとキャンプ場にあるものを組み合わせるだけ。
材料
炭、布、砂利、小石、ボトル、水切りネットを用意。炭は大きいものと砕いた細かいものの2種。布はハンカチをボトルサイズに切る。

上から ウエス(布)・細かい炭・砂利・ 小石・ 粗い炭・ ろ過された雑用水。
ペットボトルの底をカットし、先に荒い材料、その後に細かい材料を入れるのが基本。各材料をネットに小分けすることで、使い終わったら分別して捨てやすい。
「飲み水には使えないので注意しましょう。川の水などにはPFASなどの化学物質が入っている可能性があり、自作の浄水器では取り除けないんです」(村瀬)
水の色が違う!

分解して 持ち運べます。
【食】燃料を極力節約。水漬けパスタ
水に浸しておくだけで、手間をかけずに楽に作れるパスタ調理。モチッとした食感で、簡単かつおいしくできるぞ!
材料
チャック付きポリ袋、2ℓの水を用意。パスタは時短のため、細めの1.4㎜のものがおすすめ。
ポリ袋に1人前のパスタと、浸るくらいの水を入れて90分置く。パスタは半分に折ると中に入れやすい。
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温めたお湯にふやかしたパスタを入れ、30秒ほど浸す。加熱時間が短くなり、燃料消費が抑えられる。

超モチモチ!
温めずにあえるだけで料理が作れるソースが販売されている。賞味期限は約1年なので、一緒に常備しておくと便利だ。
【食】ホイルで作る即席フライパン
「実は、家にあるものだけでフライパンが作れるんです」と笑顔で語る村瀬さん。その鍵は、柔軟に形が変わる針金にあった!
材料
針金ハンガーとホイルを用意。針金は表面のビニールを剥き、ホイルは家庭用よりBBQ用の分厚いタイプを使うのが理想。
針金の下部を曲げ、輪っかを作る。フック部分は折り曲げて、持ちやすいように幅を調節する。
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針金の下部が円形になるよう整え、ホイルで上と下から包む。最後にハンドルにもホイルを巻いたら完成!
↓
中央に輪っかがあることで、食材の重みで沈みにくい。また、中央を少し窪ませると汁っけが真ん中に集まる。

朝食に目玉焼きはいかが?
耐久性はあまりないので、目玉焼きを1〜2枚焼いたらホイルが破れてくるので注意しよう。
【食】身近な食材で作るオイルランプ②
スマホの電池を確保しながら明かりを確保したい。定番のツナ缶に加え、サラダ油を使ったアイデアも大公開。
ツナ缶ランプ
材料
ツナ缶と麻紐を用意。ツナ缶は油漬けのみ使え、ノンオイルと水煮は使えない。使用時は注意しよう。
缶のタブを持ち、上向きに立たせて少し開封する。開けすぎると、中に入れる麻紐が立ちにくくなるためほんの少し!
↓
麻紐を10㎝ほどカットし、ツナ缶の口から差し込む。3㎝を口から出しておき、タブを支柱にして麻紐を立たせる。
↓
完成!
麻紐に油が十分染み渡ったら点火して完成。油の量や風の強さによるが、10㎝の麻紐で1時間ほど灯り続ける。
サラダ油ランプ
材料
サラダ油、針金、リップクリーム、350㎖の空き缶、綿棒2本を用意。これ以外に、缶を傾けておく小石などもあると長時間灯せる。
缶の底から4〜5㎝の位置でカットする。切り口は鋭いため、使っているときに怪我をしないように注意しよう。
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綿棒2本を半分に切り4本にし、コットン部分にリップクリームを塗る。偏りがあると火も偏ってしまうため満遍なく。
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綿棒に針金を螺旋状に巻いて束ねる。崩れると火がサラダ油に付き危険なため、きつめに巻いて崩れないようにする。
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完成!
綿棒の数が多いほど火の大きさは強くなる。点火して油がなくなるまで、なんと4時間ももった!
【衣】ポリ袋を切るだけ。簡易雨具
急な雨が降ってきたが、撥水するウェアを持っていない! そんなとき、ゴミ袋があれば、1分で雨具が作れるぞ。
材料
60ℓ〜のポリ袋
ゴミ袋だけで作れるが、ガムテープがあれば安心。体が大きい人は60ℓ以上の大きい袋を使おう。
ゴミ袋の口を下に向け、上辺の中央に切り込みを入れる。両サイドも同じくカットして下をテープで固定。
完成!
ベルトや紐があれば、ウエストを絞ることで体にフィットする。ゴミ袋の片側をカットすれば、頭巾にもなり雨を防げるぞ!
【その他】所要時間はたったの5分! あるとうれしいグッズ③
余った材料で何か作れないか、と考える村瀬さん。思いついた3点は、どれもキャンプで使えるものばかり。しかも材料は最小限で作りやすいぞ!
渦巻き状に巻くだけ
ドリッパー
材料
アルミワイヤー
渦状に巻いた針金ドリッパー(某商品へのオマージュ!?)。コップにのせる部分だけ長めに出っぱらせるのがポイント。
おしりが冷えないホイル座布団
材料
ダンボール
アルミホイル
ふたつ折りしたダンボールに、上、底にホイルを貼れば、断熱性のある敷物が完成。
アルファ化米が冷めない
簡単クージー
アルファ化米のパックのサイズにダンボールを切り、内側にホイルを貼れば温かいごはんが冷めにくい。

ぜひ作ってみてね~!
※構成/小川迪裕 写真/三浦孝明 協力/青野原オートキャンプ場組合
(BE-PAL 2025年4月号より)