
セイヨウタンポポの学名はTaraxacum officinale
キク科の多年草。ヨーロッパ原産の帰化植物で、道端や空き地、駐車場などで見られる。花の根元部分にあるガクのように見える部分「総苞外片」(そうほうがいへん)が花期にそり返る。
在来タンポポとの雑種は総苞外片のそり方が中間的になることが多い(例外もある)。花は黄色で、3~5月を中心に一年中咲き続ける。ヨーロッパでは全草を薬用とする。
かすかな風に乗って、ふんわりとタンポポのタネはどこへ飛んでいくのだろう?
タンポポは日本の春を飾る代表的な花だが、いまの日本の春の野を飾るのは圧倒的にセイヨウタンポポだ。ヨーロッパ原産のセイヨウタンポポは明治時代に渡来し、都市周辺を中心に広がって、いまでは日本中で見ることができる。
もともと日本には地方ごとに少しずつ異なる在来のタンポポがあるのだが、セイヨウタンポポの旺盛な繁殖力に押されて、年々少なくなっており、在来種をなんとか守ろうと保護する運動があったりする。
セイヨウタンポポは頭花を支える総苞外片が下向きにそり返るのが特徴だが、いまではさまざまな雑種が増えてきて、判別がややこしくなってきた。たとえば九州など日本の南部に多い在来タンポポのシロバナタンポポ。花弁が白いこの花にも、うっすらと黄色っぽい花弁のものが見られる。
多年草のタンポポの根は年々太く長くなるが、この根をキンピラにすると、かすかにほろ苦くて、とてもおいしい。タンポポには、アテポポ、クマクマ、デデポッポ、タンポコ、ガンボウシ……などのさまざまな地方名がある。
漢方では生薬名を「蒲公英」とよび、胃腸病や強壮、解熱、解毒、黄疸、脚気、ぜんそく、腫れ物、イボ取りなどに利用されてきた。
掘り出した根を、2㎝ほどに輪切りにして、砂を混ぜた土に埋めてやると、髄のまわりから葉をのばし、やがて花をつける。このときは上下を逆さまにせず、上だったほうを土の表面に出すようにする。もちろん土は湿らせておく。
タンポポ観察の楽しみといえば、なんといっても綿毛状のタネ。かすかな風に乗って、ふんわりと飛ぶ様子は、なんだか夢のようだ。
総苞外片が下向きにそり返るセイヨウタンポポ。
九州などに多いシロバナタンポポ。
かすかにほろ苦い根のキンピラ。
輪切りの根からやがて葉がのびる。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
(BE-PAL 2025年4月号より)