
日常にはない景観が魅力の渓流釣りですが、河川での釣りは海などの止水域とは違った危険もあります。
この記事では渓流釣りならではの危険箇所や注意点を、解禁初期にありがちな残雪による事例も含めて紹介します。
解禁初期ならではの危険も…
渓流釣りは長い禁漁期間を経て早い地域では2月から解禁し始め、3月に入れば多くの地域で一斉に解禁します。
今回は通年気を付けるべき河川の危険箇所や特徴に加えて、解禁初期シーズンにありがちな残雪にまつわる危険も紹介します。
河川における危険箇所
淵

淵は蛇行した川の流れが岸壁などにぶつかっているような地形に多く形成されます。
淵とは河川内において流れの速度が遅く、水深のある箇所のことをいいます。
淵は渓流魚の絶好の隠れ家ですが、見た目以上に水深があることもあり、小規模な渓流であっても身長以上の水深がある淵は珍しくありません。
また、淵の周辺でウェーダー(胴長靴)を履いて水の中に立ち込んで釣りをする場合、一歩踏み出すだけでも一気に深くなっていることもあり、不意にバランスを崩し転倒しかねません。
水が濁っていて川底が見えないときなどは特に気を付けるべきでしょう。
ルアーやフライであれば遠距離からでもキャスティング(投げること)の射程内に収めることができるので、十分に余裕を持って釣りをすることが大切です。
瀬

瀬の中の石は意外にも大きく、跨ぐつもりで足を上げるも跨ぎきれないこともあり危険です。
瀬とは川の中でも水深が浅く、流れの早い箇所のことをいいます。
一言に瀬と言っても、水深が浅く比較的穏やかな流れの「平瀬」、腰~胸ほどの水深で流れも強い「急瀬」、轟々と流れる「荒瀬」などの呼び名が釣りの世界では使われます。
瀬の川底は砂や小石が速い流れに持っていかれるので、ゴツゴツとした大きい石で形成され足の踏み場がなかなか定まらない状況となっていることが多いです。
もし川を歩き渡る場合には瀬はできるだけ避けた方が良いでしょう。
野生動物

筆者私物。撃退スプレーには使用期限があるので、期限が切れた物を安全な場所で使ってみて感覚を掴むのも良いでしょう。
危険箇所とは少し離れますが、山間部における渓流釣りでは熊や猪など危険な野生動物との遭遇の可能性が常にあり、稀に町中を流れる河川であっても目撃されることもあります。
そのような野生動物に襲われた場合は人間に勝ち目はほぼないため、遭遇しないことや襲われないための備えが必要になります。
渓流釣りでは自身の存在を野生動物に知らせる熊鈴や、遭遇してしまった際に咄嗟に使用できる撃退スプレーの携行は必須といえます。
解禁初期の雪に気を付けよう
雪庇

雪庇の真下が淵や瀬の場合、大変危険です。
雪庇(せっぴ)とは崖のようにせり出した雪の塊のことをいいます。
2月から3月下旬くらいまでの渓流釣りが解禁して間もない頃は、地域によっては川原が完全に雪に埋もれていることもあり、河川にも雪庇が形成されます。
河川に形成された雪庇の真下は水面となっている可能性が高いため、雪上を歩いて釣り場に入る際には細心の注意が必要です。
橋などから川を見下ろすことができるのであれば、なだらかに川原に降りられる箇所を事前に確認するようにしましょう。
用水路や分流の踏み抜き

用水路の上に積もる雪を踏み抜いてしまったら一大事です。
渓流の周辺地域は豊富な水資源から農業が盛んで、人里を流れる川の周りは広大な田んぼや畑になっていることが多くあります。
雪が残る解禁初期では河川のすぐ近くに駐車スペースがなく、少し離れたところに駐車して雪の上を歩いて釣り場に向かうこともしばしばです。
そのような場合、農業用の用水路や小さな分流(本流から枝分かれした流れ)を、特に雪の多かった年では渓流釣りが解禁する時期になっても雪が覆い隠していることがあり、注意が必要です。
雪解けが進めばそのような箇所の雪は少しずつ沈み込むため用水路の位置の目星は付くのですが、全く分からない場合は遠回りになったとしても安全な土手沿いを歩いて釣り場に向かうのが無難でしょう。
雪代

雪代による増水は白っぽい濁りとなることが多いです。
雪代とは山あいの雪解けによって河川に流れ込む水のことをいいます。
雪代が流れ込むと河川の水量は目に見えて増し、雪の多い年や急に気温の上がった日には数十センチ以上の増水となります。
特に小規模な渓流では雪代の影響は大きく、膝下ほどの水深しかないような河川でも雪代のピーク時には滝のような流れとなることがあります。
周囲の山を見て残雪があれば雪代が出る可能性があり、その日の天気にもよりますが、気温の上がり始める午前10時ごろから雪代による増水が始まると覚えておくとよいでしょう。
ルールとマナーを守り楽しい渓流釣りを
渓流釣りでは遊漁券の購入が必要であったり、限られた渓流魚を守るための暗黙のマナーもあることがあります。
そして渓流釣りで事故やトラブルを起こさないこともマナーといえます。
危険な箇所や状況を事前に確認し、安全に渓流釣りを楽しみましょう。