
今も散歩のワクワクは変わらず、ときには海外まで足を伸ばしています。今回は、そんな私が歩いた東欧アルバニアを紹介します。
ティラナの町を1泊2日、予算1万円で歩いてみた

6,000レク(約10,000円)で、アルバニアの首都ティラナを散歩してみました。
ある日、友人が着ていたTシャツにプリントされていたのは、赤い背景に羽を広げた黒い双頭の鷲のマーク。なんとなく見覚えがあると思ったら、アルバニアの国旗でした。
「そういえば、アルバニアって行ったことないな」
調べてみると、山に囲まれた東欧の秘境として隠れた人気があるのだとか。しかも、私が住んでいるヨーロッパの小国ハンガリーから格安航空会社のセールが出ていて、たった2泊の弾丸旅行ですが、往復なんと6,000円台。これは行くっきゃない!
ところでアルバニアってどこだっけ?クロアチアとギリシャの隣にあって、イタリアからもアドリア海を挟んでフェリーで行ける距離。だから私はてっきりアルバニアもEU加盟国だと思い込んでいたのですが、2025年現在、非加盟。そうとは知らず、EU圏内だったらローミング無料のスマホで地図アプリを起動してしまい、通信料1万円が一瞬で旅立ってしまいました。トホホ。
ちなみに1万円は現地通貨で6,000レクほど。このお金があったらアルバニアでどんなことができるのか、アルバニアを歩き尽くす週末旅行の始まりです。
レトロとモダンの融合

ティラナの集合住宅。壁をカラフルに塗り替えた古いコンクリートの建物は、現代建築というより昭和モダンのレトロな雰囲気がありました。
週末2泊で1,750レク(約2,900円)の2段ベッドが並ぶ安宿に泊まり、朝6時30分に起床。散歩のために、ちょっぴり早起きしました。
知人から「アルバニアはモダン建築が素晴らしいんだよ!」と、建築巡りを勧められたのですが、町並みとしてはどちらかというとレトロな雰囲気です。
アルバニアの自転車は重量級

荷台付きの自転車。自転車旅行の旅人顔負けの大量の荷物を積んで、おじさんが市場の周辺を走っていた。
別の知人には、こんなことをいわれました。
「アルバニアには昔、たくさんベンツがあったんだよ。スイスから盗んできたんだ。どうせ持ち主は保険に入っているから、って。でも、当時アルバニアは貧乏だったからみんなガソリンが買えなくて、動かないベンツばかりだったらしいよ」
今、ティラナの町では古いベンツより、大きな荷台付きの重量級の自転車のたくさん走っています。都心部は自転車専用道路もたくさん整備されていて、とくに中高年以上の自転車に乗った人が目立ちます。山が多い地形も相まって現地の人たちは健脚です。
うーん、こういう自転車で大陸横断旅行とかしたら、楽しそうだなあ。

再開発が進むティラナ。
あ、モダン建築、発見!!
目に飛び込んできたのは、不揃いな山の等高線を重ねたみたいな高層ビル。あちこちで建設用のクレーンが背比べをして再開発が行なわれていて、ティラナで仕事がない建築家はいない、とまでいわれています。
実は1991年まで社会主義時代に鎖国政策を行なっていたアルバニアにとって、現代的な都市づくりやグローバリズムは比較的新しい概念。だからこそ、変化を恐れない大胆かつスピーディーな計画が推進されているそうです。

日本人の建築家 “Fujimoto Sou”による作品。
変な建物を求めて歩き続けると、芝生の広場に巨大な白いジャングルジムが現われました。
白いパイプを立体的な格子状に組み合わせた作品 「The Cloud」 はその名の通り、”雲”をイメージした遊び場です。なかには透明な階段があり、まるで雲のなかで浮いているような体験ができるというコンセプトです。なんと作者は日本人でした。
アルバニアのピラミッドに上ってみた

アルバニアのピラミッドは、頂上まで階段で上ることができます。
小さな山みたいなピラミッドを見つけましたが、これは一体?
独裁者エンヴェル・ホッジャの没後、彼を記念する美術館として建てられたもので、資本主義への転換を機に建物の一部が廃墟化したものの、現在は改修工事を経て市民の憩いの場となっています。

散歩が好きだから、旅行は必ず運動靴で出かけています。
ピラミッドの頂上へ続く階段は114段。一歩一歩の幅が狭くて急な階段ですが、じつは改修工事以前は階段ではなく斜面で、手すりもないところを人が上ったりしていたのだとか。
ワクワクする道にいつ出会っても良いように、私は常に楽ちんなスニーカーを履いています。
農業が盛んなアルバニア

アルバニアのイチゴを食べてみました。
国土のなんと3割ほどが農業用地といわれているアルバニアは、季節の野菜や果物が安くて美味しいのが魅力的。
住宅街の地元客でにぎわう八百屋さんに立ち寄ると、イチゴが大安売り。まさに、足で稼いだお値打ち品。大きなパックが150レク(約250円)でした。

ヨーロッパだけど、やっぱりEU圏外なんだなあと感じるのは、買い物のビニール袋が無料なところ。
EU諸国では脱プラスチックが進んでいて、スーパーのビニールは薄くて有料の一方、アルバニアへ来てみると、ビニールは厚くて無料。なんだか捨てるのが、もったいなくなってしまいました。
ジューシーなイチゴで喉が潤ったところで、今度は地下を歩きます。
アルバニアの地下を歩こう

アルバニアの地下を歩ける防空壕「バンクアート2」。
アルバニアの地下へ続く入り口は、お椀をひっくり返したみたいな形の建物。これは国の全域で何十万個と建設されたバンカーと呼ばれる核攻撃に備えた防空壕です。
とくに大規模なティラナの2か所はそれぞれバンクアート1、バンクアート2と名付けられ、一般公開されています。

こちらはさらに大規模な防空壕「バンクアート1」。
バンクアート1は長いトンネルの向こうにあって、車1台分の幅しかないので、歩いている途中に車が来たら注意。

防空壕に続く道はほとんど手つかずの雑草地帯でした。
トンネルを抜けて坂道を200mほど進むと、やっと防空壕の入り口が見えてきました。ところで防空壕手前のこの公園、ちょっと草ボーボーじゃない?実はこれ、わざとなのです。
自生している植物や生き物の多様性を損なわないよう、バンカー周辺はあえてあまり手入れをしないようにしているのだとか。核攻撃に備えて作られた構造物の周りが、小さな生き物たちの都会のオアシスになっているようです。

防空壕の内部は、一日歩いた足ではちょっと疲れてしまうほど広かった。
分厚いコンクリートの扉を抜けると、やや窮屈な廊下が続いています。トンネルのような細長い構造になっていて、最後まで歩いたと思ったら下の階の廊下に続く階段が現われ、歩いても歩いてもなかなか出口が見えてきません。

巨大防空壕の空調システムは想像より簡素なものでした。
廊下沿いには小部屋がいくつも並んでいて、空調管理の小部屋も公開されていました。防空壕と地上の間には何重もの扉があって、窓はひとつもありません。
とにかく換気が難しいはずの防空壕ですが、このあと、とある展示室で驚きのスイッチを発見しました

マスタードガス体験装置って、どういうこと!?
そこにあったのは、マスタードガス体験装置。
マスタードガスとは戦争で使われた毒ガス兵器のこと。もちろんこれはあくまで体験装置なので、人体には無害です、という注釈付き。恐る恐る押してみると、部屋の照明が暗くなってプスッと煙が噴射されました。その途端に空調装置もスイッチオン。ゴオーッと大っきな音を立てて、噴射したばかりの煙を吸い込んでしまいました。

防空壕の出入り口にはシャワー室がありました。
ちなみに防空壕の出入り口にはこのようなシャワー室が設けられていて、地上で浴びた毒ガスなどの有害物質を地下に持ち込まないように設計されています。
換気が難しいはずの防空壕で、まさか毒ガス体験スイッチが設置される日が来るなんて、当時の人は夢にも想像しなかったでしょう。
異文化が融合するアルバニアの地中海料理

タルト1個とコーヒーのセットで350レク(約600円)。
アルバニアは地理的にイタリアとギリシャに挟まれていることや、鎖国時代にはイタリアのラジオが唯一聞ける国際放送であったことから、食文化の面でも地中海料理やイタリアンが浸透していることをご存知でしょうか?

シーフドーパスタは、680レク(約1,100円)。
とりわけシーフードパスタは抜群に美味しいのです。

別のレストランでいただいたシーフードリゾットは、スープが付いて1,250レク(約2,100円)でした。
私はやっぱりお米が食べたくて、滞在中にリゾットもいただきました。カーボローディングにピッタリのアルバニア、もしマラソンを走ったら良いタイムがでるかも。
さてさて、冒頭で私の手にあった6,000レク(約10,000円)はどうなったのか。出費を整理すると、宿が2泊で1,750レク、防空壕の入場券1,400レク、空港バスの往復800レク。イチゴ150レク、ケーキ屋さん350レク、食事代はパスタ屋さんが680レクで、レストランが1,250レク。航空券代を除くアルバニアでのお散歩にかかった費用は合計6,380レク(約10,600円)
うーん、ヨーロッパ屈指の物価安と評判のアルバニアですが、さすがに1万円では収まりませんでした。
さて、次はどこを歩こうかなあ。
