アルバニアを旅行するなら…バルカン半島最長のロープウェイで行く謎多きトレッキングコースはいかが?
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    2025.03.25

    アルバニアを旅行するなら…バルカン半島最長のロープウェイで行く謎多きトレッキングコースはいかが?

    アルバニアを旅行するなら…バルカン半島最長のロープウェイで行く謎多きトレッキングコースはいかが?
    東欧の秘境アルバニアは、やはり秘境といわれる通り、あまりアウトドアに関する情報が多くありません。

    しかしそこは山々に囲まれた土地。やっぱり推しは山なのか、バルカン半島で1番長いロープウェイがあると聞き、トレッキングついでに乗ってみました。

    アルバニア最長のロープウェイ=ダイティ・エキスプレス

    ロープウェイ乗り場の建物

    バルカン半島最長のロープウェイ。受付は大きな建物。

    バルカン半島最長のロープウェイの名前は「ダイティ・エキスプレス」。ネットで検索すると「ダジティ」だったり「ダジ」だったり、でも現地の響きに近いのは「ダイティ」だし、どれが正解なのかはわかりません。

    ロープウェイの移動距離は4,354m。そんなに長いと気になるのは乗車時間。なんと、15分もかかるのです。

    ロープウェイ乗り場

    ロープウェイは最大8人乗り。

    ゆっくりと乗り場に到着したロープウェイは最大8人乗り。とはいえ6人も乗ればそこそこ窮屈になるサイズです。

    問題なのは、みんな家族や友人と一緒に来ているという点。ひとり旅の私は知らないお家の家族旅行にポツンと強制参加の15分間です。密閉空間のロープウェイにアウェイな空気が漂います。

    ゴンドラの眼下に広がる森

    ロープウェイの眼下に広がる森。

    宙に浮かぶと、森の景色が眼下に広がりました。乗り場にあった看板いわく、平均速度は秒速約4.5mほど。

    ダイティ・エキスプレスが走っているのはアルバニアの首都ティラナの郊外。都会の香りはすっかり消えて、養鶏場の真上を通過するとニワトリの鳴き声が聞こえてきました。

    木々の間にひとりで立っているおじさんが見えて、よく見たらすぐ近くにたくさんのヤギが放牧されていました。ヨーロッパのなかでもあまり裕福ではない国のアルバニアですが、素朴なライフスタイルが垣間見えて、もっともっとアルバニアを旅したくなってきます。

     

    壮大な岩肌を見渡す

    壮大な岩肌の近くを滑るように上っていくロープウェイ。

    ロープウェイの終着駅が近づくと、傾斜が急にきつくなり、ダイナミックな岩肌が見えてきました。実はあまり知られていないのですが、アルバニアはロッククライミングの名所でもあるのです。

    私も挑戦してみたいところですが、今回私が向かうのはこのロープウェイの名前の由来でもあるダイティ山の山頂へ続くトレッキングコースです。

    ダイティ山をトレッキング

    馬

    ロープウェイを降りると、馬がいました。

    ダイティ山のトレッキングコースについて事前に調べた情報によると、ロープウェイを降りて馬がいる牧草地帯を直進すると廃ホテルがあり、そのすぐ裏にトレイル入り口があるとのこと。

    情報通り、馬を発見!乗馬体験ができるようです。

    トレイルの入り口があるはずの場所にあったフェンス

    事前情報によると、このフェンスの向こうにトレイルの入り口があるはずなのですが…。

    しかし、トレッキングコース入り口の目印である廃ホテルは既に取り壊されてしまっていて、周辺はフェンスで囲まれてしました。

    アルバニアの首都ティラナの地元の人にとってダイティ山は裏山みたいなもの。外国人観光客向けの情報は少なく、ダイティ山の山頂を目指す登り口についても古い情報がそのまま訂正されずにネット上に残っていたのです。

    とりあえず、フェンスで囲まれた敷地の裏側まで行けば、トレイルが見つかるだろう。ということで迂回すると、警備員付きのゲートが見えてきて、なんと軍事区域の入り口に着いてしまいました。おじさんが手でシッシと追い払うような仕草をしたのを見て、そそくさと来た道をUターン。反対側に迂回します。

    道らしいものを見つけた

    道らしいものを見つけましたが、これで合っているのか自信がありません。

    ちょっと歩いたら獣道ちっくなトレイルを発見。トレイルのマークはありません。でも、もともと廃ホテルがあった方向へ、なんとなく道が続いています。

    今回の私のトレッキング作戦名はズバリ「迷ったら引き返そう大作戦!」。とりあえず行けるところまでこの道を辿ってみることにしました。

    山頂を示す看板

    山頂を示す看板。

    半信半疑で進んだ道ですが、無事に看板が出てきました。山頂まで1時間10分。後日、その下に書いてある「40分で行ける」という場所について調べたところ、日本語に訳すと「さくらんぼ峠」という名前の道でした。

    ダイティ山には山頂とされている場所が2か所あり、それぞれの山頂を繋いでいるのが、さくらんぼ峠。なぜ山頂が2つあるのか、いまいち納得できませんが、とりあえず看板が出てくるたびコースタイムが長い方の矢印に従って進んで行きました。

    ダイティ山のトレイルは白地に赤い線が目印

    ダイティ山のトレイルは白地に赤い線が目印。

    トレイル沿いには短い間隔でマーキングがされていて、迷わないように整備されていました。目印は、白地に赤い縦線のマーク。私が訪れたのはまだ冬の寒さが残る3月半ばですが、緑がしげる季節になっても見やすいように大きく印が描かれているので安心です。

    ハンモックを発見

    まだ肌寒い季節ですが、ハンモックを発見。

    冒頭に触れた通り軍事区域があるような山なのですが、ダイティ山周辺は国立公園にもなっていて、山頂を目指す人だけでなくキャンプやハンモックなどを楽しむ人もいるようです。

    広い林道

    広い林道に出ましたが、これで合っているのでしょうか…。

    細いトレイルから広い林道に出ました。そして林道に出た途端、これまで目印にしていた白地に赤のマークが無くなってしまったのです。

    「ほんとうにこれで合っているのかなあ。不安だなあ」

    ほとんど誰ともすれ違っていません。山頂まで想定時間たった1時間10分の短くてわかりやすいはずのトレイルで迷うなんてバカみたい。不安が募ったころ、岩に赤いペンキで大きな矢印が描かれているのを見つけました。これで一安心。

    廃墟が現われた

    なにもなかったトレイルに廃墟が現われた!

    ふと見上げると、木々に隠れたコンクリートのボロボロの建物が見えました。普段から廃墟探索が好きな私の眼には、まるでジブリ映画に出てくる建物や廃旅館のような特別な趣のある建物に見えたので、そそくさと山頂へ急ぎました。

     

    大迫力の鉄塔と廃墟

    大迫力の鉄塔と廃墟。

    林道を上りきると、そこには古い鉄塔がありました。大きなパラボラアンテナに交じって、電波の中継に使われるのか、和太鼓のような丸い装置も取り付けられていました。これは、布が破れているので、かなり年季が入っているようです。

    山頂の目印

    おそらく、山頂の目印。

    鉄塔のすぐ足元にはトレイルの目印がありました。ダイティ山で初めて見る、日の丸弁当みたいなマーク。トレイルの終着点、という意味だと解釈しましたが、山頂といえばもっと立派な看板やベンチがあっても良さそうなもの。

    廃墟しかないって、そんなのおかしくない?

    鉄塔の裏にある崖

    鉄塔の裏に崖があり、もっと高いところまで上れそうな雰囲気。

    周囲を散策すると、鉄塔は複数建っていて、建物はどれも廃墟化しています。裏にはさらに崖があって、現在地よりやや高い位置にもっと立派な鉄塔があるのが見えました。

    もしかしたらほんとうの山頂は、あの崖の上なのかもしれません。

    ボロボロの階段

    ボロボロの階段ですが、とりあえず進んでみました。

    崖の上へ行けそうな道を探すと、ボロボロの階段を見つけました。鉄の手すりは錆び切ってひしゃげていて、もう使われている様子はありません。

    道なき道を進む

    道なき道を進んだ先には、ドキッとする看板がありました…。

    おかしい、おかしい、絶対崖の上まで行けるはず。あっちこっち試してみても道らしい道は消えてしまって、代わりに色あせた小さな看板を見つけました。

    立ち入り禁止のマークと、かすれた文字で「これより先、軍事区域」と。

    上り口の近くに軍事区域があったように、なんと山頂付近も軍事区域になっていたのです。

    ダイティ山から見下ろす首都ティラナ

    ダイティ山から見下ろす首都ティラナ。

    それにしても、ここからあと数百mも歩けばもっと高いところに出られるはずなのに、まさか立ち入り禁止だなんて。

    「さくらんぼ峠」から行ける山頂が2つある理由が、やっとわかりました。高い方の山頂は立ち入り禁止だから、それを知っている人たちはもう一方の山頂を目指すのです。

    そうとは知らず、こんなところまで来てしまった私。首都が遠くに見えます。ここからでも、景色は十分。ここを私にとってのダイティ山の山頂とします。

    持って来たサバの缶詰

    山で食べるために持ってきたサバの缶詰。

    山頂のお昼ご飯に持って来たのは、アルバニアの町のスーパーで買ってきたサバのオイル缶。

    オイルたっぷり

    オイルたっぷりで、美味しそう。

    蓋のギリギリのところまでオイルが入っていて、開けた途端に中身がこぼれてきました。

    手づかみで食べる山ご飯

    手づかみで食べる山頂のご飯。

    お箸がないから、手づかみで食べます。歩いたあとだから、塩気が美味しい。う~、ビールが飲みたい!

    せっかく海外まで来たのに、山頂まで行けず、見つけたのは廃墟だけ。なんだかなにも収穫がないようなトレッキングですが、それもまた悪くないと思うのです。

    「歩いてみたい」。そう思える場所があるだけで、私は旅が楽しくて仕方ありません。

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

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