しし座の季節、春到来!現在の大きさを凌駕して夜を支配する、巨大しし座の話
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    2025.03.26

    しし座の季節、春到来!現在の大きさを凌駕して夜を支配する、巨大しし座の話

    巨大しし座のイメージ図。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ、廣瀬匠)

    春の星座の代表格、しし座の季節がやって来ました。全天88星座の中でも屈指の美しい星座です。実は春の夜空には、このしし座よりはるかに巨大な獅子が描かれていたことがありました。どれほど大きかったかというと、あわやオリオン座に迫るほどでした。

     春の大三角としし座の見つけ方

    春の星座の見つけ方は、北の空から始めましょう。北の空、高くに北斗七星が昇っています。この柄杓の柄のカーブをそのまま伸ばしていくと、うしかい座のアルクトゥールス、ややオレンジ色の明るい1等星が見つかります。

    その右下、南西寄りにある明るい星がおとめ座のスピカです。2つの星から西にある星が、しし座のデネボラです。この3つを結ぶと春の大三角ができます。しし座のデネボラは「獅子の尻尾」が語源で、たしかにちょうど獅子の尻尾にあります。

    春の星座はおおぐま座から。北斗七星の柄杓の先を南側へ伸ばしていくと、うしかい座のアルクトゥールス。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    もうひとつ、しし座探しの目印になるのは頭の方の逆ハテナ型です、その足元にある明るい星が1等星のレグルスです。逆ハテナの真ん中にあるアルギエバは、きれいな二重星で、天体ファンが望遠鏡を向けたがる人気の星です。

    しし座の頭部の逆ハテナが目印。前脚に1等星レグルス。首のあたりにアルギエバ、尻尾にデネボラ。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    おもしろいのは、アルギエバの位置と名前のギャップです。位置は首の下あたりですが、名の由来はアラビア語で額です。星座の世界ではよくあることですが、アラビア語の星の名前がヨーロッパに広まっていく過程で、発音だけ伝わって、意味が伝わらないことがよくありました。

    それにしても、なぜこの位置が獅子の額なのでしょうか? しし座は古代メソポタミア文明の時代からある、とても古い星座のひとつです。この星座がメソポタミアからギリシアに伝わって今の「しし座」になった一方で、メソポタミア文明が栄えた中東に残った伝承は独自の発展を遂げました。7世紀にイスラム教が興る頃までのアラビアでは、巨大な獅子を夜空に思い描いていたことがわかっています。

    では、どれくらい巨大だったのかというと、獅子の前脚の片方がこいぬ座の1等星プロキオン、もう片方がふたご座の1等星ポルックスまで伸び、後ろ脚はうしかい座のアルクトゥールスと、おとめ座のスピカまで伸びていました。ほとんど冬の星座と春の星座をまたがる巨大な獅子です。

    巨大しし座のイメージ図。西はふたご座、こいぬ座、東はうしかい座、おとめ座まで覆い被さる獅子。「鼻先がかに座」「かみのけ座が尻尾」という記述のある史料に忠実に再現すると、天から獅子が襲ってくるような大迫力!(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ、廣瀬匠)

     四肢にそれぞれ1等星を抱え、さらに現在もしし座に属するレグルスもありますから、合計5つの1等星を擁する巨大かつ超豪華さを誇っていたと想像されます。

    さらに、2世紀半ばの天文学者プトレマイオスが著した天文学書『アルマゲスト』では、しし座の尻尾のデネボラも1等星、ふたご座の兄の星カストルも1等星と記されています。

    デネボラの明るさは2.1等級と平凡な2等星ですが、このあたりは明るい星がなくポッカリと空いていることから、なんとなく際だって見えたのかもしれません。ふたご座のカストルのほうは1.6等級ですから、あと0.2等級明るければ1等星の仲間入りができました。ちなみに、しし座のレグルスが1.4等級で、全天21ある1等星の中でもっとも暗い1等星です。

    『アルマゲスト』は後にアラビアに伝わり、アラビア人もギリシア式のしし座を採用するようになりました。仮にプトレマイオスの恒星リストだけ拝借して従来の獅子のイメージを残した場合、1等星を7つも従えていたことになります。

    しし座のレグルスは王様の星

    獅子は百獣の王ライオンです。古来、強さや威厳を象徴する獅子の星座が、なぜこの位置にあるのか、ちょっと考察してみましょう。

    ポイントは1等星のレグルスにあります。レグルスはラテン語で「小さな王」という意味をもち、百獣の王しし座の中心の星です。黄道12星座の中で、もっとも黄道に近い1等星です。

    5000年ほど前には、レグルスの近くに夏至点がありました。夏至点とは黄道(太陽の通り道)の一番高い点で、夏至の日に太陽がこの点を通ります。レグルスの近くを通過する日が夏至です。古代の人々にとってレグルスは、夏を象徴するとても大事な星だったのです。だからこそ王様の星にされたのではないでしょうか。

    なお、地球の自転軸がコマのようにゆっくりと首振り運動をしていることから、夏至点は少しずつ変わります。現在では、夏至点はおうし座とふたご座の間にあります。夏至点だけでなく冬至、春分、秋分、すべての点が変わります。かつては冬の星だったレグルスを、古代の人はどんな目で見つめていたことでしょうか。 

    この春、星座を見上げるときは、夜空を支配する巨大な獅子を想像してみてください。

    構成/佐藤恵菜

    私がガイドしました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    星空案内人 天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、宇宙の不思議に出会うモバイルアプリ「星空ナビ」が好評発売中。

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