
夏と冬、年に2回ハイシーズンを迎えるため年間を通していつでも人気のドロミテですが、スキー場が閉鎖された後の短い春の間だけが、オフシーズンになっています。
では、その時期にしか旅ができない場合はどうしたらいいの?
地元民に「この時期はどこも閉まっていておすすめしない」と言われながらも、4月半ばのドロミテを旅ました。そんな筆者の、旅の記録を紹介していきます。
オフシーズンだって、楽しめることはたくさんある!
まずはドロミテの南の玄関口、ボルツァーノへ
人が少なくリーズナブルに旅行できるというメリットがある4月のドロミテですが、この時期に旅行するとバスの本数が少なかったり、ゴンドラが動いていなかったりと不便なことが多いのも事実。
もちろん、世界自然遺産にも登録されている山岳景色はいつでも美しいのですが、あれもこれもと欲張ることはできません。
人生初の春のドロミテ訪問ということで綿密に計画を立て、フィレンツェから電車で3時間半ほどの距離にあるボルツァーノという街を中心に、ここからバスで行ける範囲で、春にもできることを探すことにしました。

トレニタリア社が運行する高速列車、フレッチャロッサに乗ってボルツァーノへ。
ボルツァーノ駅はさほど大きな駅ではありませんが、荷物を預けられる場所が駅構内にあるので便利です。
駅から歩いてすぐの場所にバスの停留所があり、そこから向かったのは最初の目的地であるサン・ジェネージオという小さな村。
ボルツァーノからはバスで1本、わずか20分ほどで到着することができました。
シーズンオフでも楽しめるアクティビティを探そう!まずは馬車体験だ。

広々とした幌馬車。毛布も貸し出してもらえるので寒さ知らず。
サン・ジェネージオの最大の魅力は、「伝説の小道」と呼ばれる四季を通して美しい人気のハイキングコースがあるということ。
小さな子供やベビーカーでも簡単に歩くことのできるファミリー向けのなだらかな道で、年間を通して海外からも多くの人々が訪れます。
私たちのお目当ては、ハイキングコースの入り口地点にある乗馬場が主催する、1時間ほどの馬車のツアーです。すぐ横のホテル兼レストランで軽くランチを食べ、二頭立ての幌馬車に乗り込み、いざ出発!

穏やかなトーンでドイツ語を話す、優しげなおじいさんとおばあさんのお二人が、御者を勤めてくれた。
これまでもドロミテの色んな場所に行き、ハイキングやトレッキングをしてきましたが、この場所はそのどれにも似ていません。牧草地と手入れの行き届いた木々に両側を挟まれた、優しく穏やかな景色が続いていきます。
少し行くと、まさに今芽吹いたばかりといった鮮やかな緑の丘の向こうに、息を呑むほど美しい雪山が見えてきました!

冬の間に落ちた枝を片付ける作業をしている人も多く、人々の努力によってこの景観が保たれているのだと実感。

一部だけ土壌が剥き出しになり、まるで動物の背骨のようにも見える。
遠くの森の中に、一箇所だけ地面が赤茶けてシワのように波打って見える場所がありました。
尋ねてみると、長い時間をかけて自然に作られた造形なのだそう。同じようにしてできた天然のピラミッドがあるそうなので、後日行ってみることになりました。

ぽつんと建つ小屋は、倉庫だろうか。

すぐ近くで羊たちが昼寝をしている場所もあった。

小さな赤ちゃんを連れたファミリーが多い、とても平和なハイキングコース。
ドロミテに来るといつもアルプスの少女ハイジを思い出しますが、サン・ジェネージオの伝説の小道ではなぜか赤毛のアンの世界に迷い込んだような錯覚を覚えました。
イタリアとカナダ、まったく異なる場所のはずなのに、目をキラキラさせた赤毛の女の子がワンピース姿でピクニックでもしていそうな、そんな牧歌的な雰囲気です。

これだけ雪が残っているのも、この時期ならではかもしれない。
しかし遠くに目を向ければ、そこにはゴツゴツと雪をたたえた、東アルプス特有の岩山が。あぁやはりここはドロミテなのだなと思い出させてくれます。
「伝説の小道」というこの場所の名前には、ちゃんとした由来があります。
神罰が下ってある日突然穴に沈んだ町や、魔女、妖精、ドラゴンなど、子供も大人もワクワクと想像力を掻き立てられる伝説がこの地に幾つも残っているそうで、まるで一冊の物語を読むように伝説を辿っていけるハイキングコースになっているのだとか。
確かに、なんだか御伽話の中にいるような、懐かしい気持ちになる不思議な美しさでした。
今回は馬車に乗りましたが、一つ一つの伝説を辿ってゆっくりと歩いてみるのも素敵かもしれません。
馬車を降りたあとは麓のバス停まで40分ほど下り坂を歩き、バスに乗って再びボルツァーノへ。
こうして、大満足の1日目を終了しました。

2009年よりイタリア在住。料理と旅行とモノづくりが趣味のシングルマザー。イタリア在住ライターとして多数の媒体に執筆する他、企業向けマーケティング・リサーチや料理研究など幅広く活動。海外書き人クラブ会員