
州内には約75,000本のジャイアント・セコイアが生育していると推定され、主に中央から北部の山間地に分布しています。具体的な観光地名を挙げれば、セコイア&キングス・キャニオン国立公園、そしてヨセミテ国立公園でこの巨木群を見ることができます。
現存するジャイアント・セコイアで最大のものとされる「シャーマン将軍の木(General Sherman Tree)」の周りは遊歩道になっていて、その根元で記念撮影もできる人気観光スポットです。
高さは約83メートル、根元の直径は約11メートルということですが、間近で見ると確かに言葉を失うほどデカイです。なにしろ、奈良の大仏(高さ約15メートル)の5倍以上も背が高いのです。木と言うよりはまるで高層ビルのような印象を受けますが、紛れもない自然の生命体です。
環境保護の歴史

「セコイア&キングス・キャニオン国立公園」入口。
むろん、それだけの大きさになるまでには気の遠くなるような長い年月がかかります。「シャーマン将軍の木」の樹齢はおよそ2200年とされていますが、それより古い木も多くあるそうです。
樹齢2000年から3000年以上と言うのは簡単ですが、少しだけ想像してみてください。歴史年表と見比べてみるなら、エジプトでクレオパトラとシーザーが出会ったときや始皇帝が中国大陸に史上初の統一国家を作ったときよりも前に生まれた木が、現在でも生き続けているということになります。

地表から見上げる「シャーマン将軍の木」。
ジャイアント・セコイアはその長い歴史で2度の大きな生存の危機に瀕しました。最初のそれは19世紀半ばにやってきました。
とくにゴールドラッシュ(1848-1855年)以降、カリフォルニアで木材の需要が急激に高まり、セコイアも大量伐採の対象になったのです。逆に言えば、金鉱が発見される前のカリフォルニアは人口が少なく、自然とのバランスが取れていたということなのですが。
幸か不幸か、セコイアの木材は脆く、建築材料としては適さなかったため、20世紀に入った頃には伐採は下火になりました。それでも、さまざまな理由で切り倒されることもあったようです。

博物館に展示する目的で1891年に切り倒された「マーク・トウェインの木」。
20世紀後半から環境保護意識が高まり、現在ではジャイアント・セコイアは国立公園や保護区で厳重に管理されています。観光のための道路建設や開発による環境負荷にも一定の制限があります。
山火事の脅威
2度目の危機はつい最近のことです。そして現在進行中でもあります。ここ数年、カリフォルニアで頻繁かつ大規模な山火事が毎年のように発生していることはご存知でしょう。乾燥した気候や強風が火災を拡大させ、ジャイアント・セコイアの生存を脅かしています。
とくに2021年の「KNPコンプレックス火災」、2022年の「ウォッシュバーン火災」では、多くの老齢のセコイアが燃え落ち、あるいは黒焦げになりました。その痕跡は現在でも各地に残っています。

ヨセミテ国立公園(2022年10月撮影)。
ジャイアント・セコイアはさまざまな自然環境の変化にも適応してきました。そのなかには適度な火災も含まれます。分厚い樹皮は簡単には火を通しません。
さらに森林の下草が焼かれることで、セコイアの種子が地面に落ちやすくなり、発芽の機会が増えるのだそうです。巨木が成長するためのスペースと日光を確保することにもなります。
しかし、近年頻発している大規模な山火事は、その適切な範囲をはるかに越えてしまっています。気候変動による気温上昇と干ばつの影響で、森林が極端に乾燥していることが原因だと思われています。
数千年もの年月を生きてきたジャイアント・セコイアが危機に瀕するほど、気候変動の影響は深刻なのかもしれません。この巨木たちは人類が環境とどのように向き合うべきかを示す象徴的な存在とは言えないでしょうか。

ヨセミテ国立公園その2(2022年10月撮影)。
セコイア&キングス・キャニオン国立公園:
https://nps.gov/seki/index.htm
