「四国の快男児が、地方から日本を変える」IT社長が会社ごと徳島に移住!?
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    2025.04.01

    「四国の快男児が、地方から日本を変える」IT社長が会社ごと徳島に移住!?

    4月1日、拙著『移住で地方を元気にする IT社長が木の会社を作った理由』(かくまつとむ著・1760円・小学館刊)が発売になりました。アウトドア情報誌『BE-PAL』に 2024年の春まで2年間連載した「四国の右下にぎやかそ革命」をまとめたものです。

    これまでの著作は、木挽き、炭焼き、鍛冶屋、川漁師、熊撃ちといった、自然に寄り添って暮らす野の匠が受け継いできた「暗黙知(あんもくち)」について取材したものが多かったのですが、今回の取材対象はIT起業家です。

    なぜアウトドアライターがビジネスマンに密着するのか。それはこのビジネス・ノンフィクションの舞台が、自然豊かな田舎(過疎地)だからです。

    アウトドアライターがIT社長に密着した理由

    主人公の名は吉田基晴さん(54歳)。出身は“四国の右下“と呼ばれる過疎の町、徳島県美波町(みなみちょう)です。
    ちなみに美波町はカヌーイストの野田知佑さんが終の棲家(ついのすみか)に選んで暮らした町です。
    東京で立ち上げたITセキュリティ会社「サイファー・テック」の人材確保に難航していた吉田さんが注目したのは、徳島県が過疎対策として進めていたサテライトオフィス誘致事業でした。

    10年程前に徳島県が始めたこの事業は、光回線があればどこででも仕事が可能なIT業界をターゲットにした、いわば法人版のお試し移住です。当時、喉から手が出るほど人手が欲しかった吉田さんは、海沿いの故郷(美波町)にサテライトオフィスを設けてみました。

    そして、昼休みにサーフィンができる立地と自然豊かな田舎での働き方をアピールしたところ、優秀なITエンジニアが続々と入社を希望してきたのです。

    半信半疑、というより破れかぶれの賭けでした。

    田舎には日本の未来のヒントがある

    ですが、子どもの頃から釣りや自然遊びが大好きだった吉田さんには信念もありました。自分が田舎の海や川、山に生き甲斐をもらったように、自然豊かな過疎地は多くの日本人に幸福実感を分けてくれるはず。田舎には、これからの生き方と経済のありようを考えるヒントがあると考えたのです。

    応募者が殺到したことで、時代の潮目の読みが正しいことを確信した吉田さんは、IT セキュリティ会社の本社を美波町へ移します。地域との関わりが密になると、帰ってくる前には見えなかった故郷のさまざまな現実も目に入るようになりました。

    特に問題と思えたのが、予算と人手不足が慢性化し、悪循環に陥っている地方自治体の体制です。NPOをボランティアのように見る風潮、そもそもボランティア頼りにしていること自体が経営の視点からは問題だと感じました。

    原因はなにか。国からはDXの時代だと尻を叩かれますが、ソフトや情報を実装する余裕がそもそもない。まさに、貧すれば鈍するという状況。

    地方自治体の困りごとをスッキリ解決

    問題は制度的構造にあるとみた吉田さんは、御用聞きのようなスタンスで地方自治体の部署個々の困り事に対応する専門会社「あわえ」を設立しました。

    返す刀で斬り込んだのが、全国で深刻化している荒廃里山の問題です。

    西日本の太平洋側の里山は照葉樹(常緑広葉樹)の里山ですが、こうした森には「備長炭」の原料となるウバメガシやカシが多く生えています。備長炭は日本が世界に誇る最高品質の調理熱源であり、国内でも長く高級ブランド品として価値を維持してきました。

    しかし、ここにも高齢・過疎、円安の波が押し寄せています。吉田さんは、前記ふたつの会社と同様に、都会からの移住者と備長炭を両軸に、森林再生に取り組む会社「四国の右下木の会社」を作りました。

    ネイチャーポジティブという言葉が具体的に何を指すものなのか。
    マスメディアや大企業のESG(環境・社会・ガバナンス)担当にさえまだよく知られていなかった頃です。

    吉田さんは自身の自然的感覚、そして経営者としての直感で、世の中にとって良いことと経済は結合できると信じ、「備長炭のエンドユーザ-である料理人の中にも、この里山再生の物語に共感してくれる人がいるに違いない」と大きな賭けに出ました。その潮もまた、吉田さんの読みどおりに動き出しました。

    山里にたなびく炭焼きの煙。煙が白いうちはまだ半ば。炭化が進むと青い透明の煙に変わり、においもきつくなる。

    左が樵木備長炭で右が樵木薪。ナラ枯れの被害木が多く、歩留まりは良くないが、選別の徹底で品質を維持。

    備長炭が地方を救う

    この林業会社は今、蓄積したノウハウを同様の問題に悩む他の地方へ移転するソーシャル企業へと成長しつつあります。田舎の自然から生き甲斐をもらい、その価値をずっと信じてきたアウトドア派としては、このような本を刊行できたことを大変嬉しく、また誇りに思っています。

    書くものを通じ、なんらかの形で田舎に恩返しをしたいと考えてきましたが、その望みが、吉田基晴という希代の快男児を通じて叶いました。

    人口減少時代をどう受け入れ、どう共存していくのか。

    四国の右下から始まった小さな革命にぜひご注目ください。

    『移住を元気にする IT社長が木の会社を作った理由』で地方


    著者:かくまつとむ
    定価:1,760円(税込)
    四六判/240ページ
    ISBN 978-4-09-389801-0
    小学館

    詳細はこちら

    <目次>
    まえがき
    四国の右下の快男児  かくまつとむ

    1 いつかやろうは大馬鹿野郎
    2 森を殺さない林道
    3 デジタル革命
    4 半Ⅹ半IT
    5 過疎に効くクスリ
    6 頼れる御用聞き
    7 備長炭が地方を救う
    おわりに 近況報告 吉田基晴
    解説 諦めず課題解決に立ち向かう意志 明治大学農学部教授 小田切徳美


    <吉田基晴プロフィール>

    よしだ・もとはる 1971年徳島県日和佐町(現・美波町)生まれ。神戸市外国語大学卒。オーストラリア放浪の後、複数のIT企業を経てセキュリティソフト開発販売のサイファー・テック株式会社を東京に設立。後に代表取締役。採用力の強化案として新しい働き方を模索中、徳島県がサテライトオフィス誘致に動き出したことを知り故郷の美波町へ。ほどなく本を移転。企業・起業家誘致、定住促進、人材育成、教育イノベーションなど地方創生に特化した株式会社あわえ、かつての照葉樹型林業を持続可能な社会に向けた新たな循環軸にする株式会社四国の右下木の会社を設立するなど、地方の課題解決に奔走。著書に『本社は田舎に限る』(講談社)。2021年、総務省「ふるさとづくり大賞」優秀賞(総務大臣賞)を受賞。同年、デュアルスクール制度で日本デザイン振興会「グッドデザイン賞」金賞(経済大臣賞)を受賞=いずれもあわえ。2024年、四国の右下木の会社が第12回環境省「グッドライフアワード」(環境大臣賞企業部門)を受賞。

    文/かくまつとむ 写真/矢島慎一

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