
私の名は橋爪ヨウコ39歳。身体はしっかり熟れてきているが、芸人としてはなかなか売れずにいるお笑い芸人だ。
夢の《ヒマラヤツーリング》を38歳で達成した後「もう一度、冒険に繰り出そう!」と目的地を《ベトナム》に決めた私。その前に日本で自信をつけようと、練習がてら愛車であるスーパーカブ110で『熊本まで走りに行こう!」と出発。
【東京→横須賀港→新門司港→熊本】まで、フェリーとバイクで向かうこと31時間半!やっと!熊本に到着したのである!(詳しくは前の記事を読んでね)
朝から元気に出発!のはずが…
「あぁ…自分で自分を褒めてあげたい」
マラソンの有森選手のお言葉をお借りしたいくらい達成感に包まれていたのだが、熊本の旅はまだ始まったばかり。
到着したその日は熊本へ向かう目的の一つである「お笑いライブ」と「ラジオ」にゲスト出演。打ち上げがてら熊本の夜を楽しみたい気持ちでいっぱいだったが、翌日に控えた『大好きな阿蘇山を愛車で走る!』というもう一つの目的に向けて、宿泊予定のカプセルホテルへ向かった。
明日の天気予報は【熊本、降水確率70%】
ここまで来たら神頼みしかない。「お天気の神様…晴れろ!とは言いません…せめて曇天ぐらいでいてもらえませんでしょうか?」と謙虚にお願いしながら、早めに就寝する事にした。
一夜明け。誰かの話し声で目が覚めた。
「……あの………」
『…………………zzz……』
「…あの……お客様……」
『………………??』
「チェックアウトのお時間になりました」
『…………………えっ!!!』
朝7時起きで出発する予定が、まさかの大寝坊!!昨日の疲れがドッと出てしまった事もあり…チェックアウトの12時を越えて爆睡していたのである!!(アラームもかけていたが、カプセルホテルなので消音にしていた…)
「ヤバイヤバイ!」と急いで支度し、カプセルホテルに延長料金を払う。
「せっかく熊本に来ているのに寝坊するなんて…」「しかも寝坊するほど寝たのに、まだ疲れが取れてないなんて…」
とアラフォーの現実を受け止めながらしょぼしょぼしながら外へ出てみると、
「…パラパラ…パラパラ…」
チャーハンだったら美味しいだろうな、というぐらいの小雨が降っていた。

天気にずっと…恵まれない涙。
寝坊に気を取られ、本日の降水確率70%だったことをすっかり忘れていた。もうここまで来たら開き直るしかない。
「昨日の土砂降りに比べたらこれは降ってないと言っても過言じゃない!……はず!」と無理やり自分に言い聞かせながら出発した。
しとしとと降る雨。お肌的にはミストな感じでいい感じだが、走り出すと顔に纏わりついて視界も悪い。

こういう雨も意外に体力が削られるのだ…。
このままノンストップで走り続けても良かったが、朝から何も食べていない。「腹が減っては戦は出来ぬ!」という事で、地元の方にオススメしていただいた馬のモツ煮が食べられる「かつ美」食堂へ。
初めて食べる馬のホルモンに舌鼓を打ちつつ「黄色のたくわんを出してくれるお店ってそれだけで信用出来るよなぁ」と孤独のグルメを堪能。しっかり腹ごしらえが出来たので、阿蘇山の『大観峰』を目指す事にした。

地元の方おすすめ!早速寄らせていただきました。

馬のホルモンで体力爆上げ!さー、出発するぞー!!
いざ、愛車で走りたかった大観峰へ!
『大観峰』とは、標高約935メートル。直下に眺める阿蘇谷(阿蘇市街地)との標高差は約400メートルにもなる、阿蘇を代表する絶景スポットのひとつ。
私が今まで見てきた木々が生い茂っているような山々とは違い、ほとんど木々が生えていない阿蘇山。見渡す限り広がる草原地帯と箇所箇所で火山の歴史を感じる事が出来る山だ。
そんな神秘的な阿蘇山に魅了された私は「いつか自分の愛車でこの阿蘇山を走ってみたい!」「愛車にもこの景色を見てもらいたい!」と思っていたので、やっとその夢が叶うのだ。
ウキウキしながら走り出したはいいものの、霧が大発生!しばらくは頑張って前に進んでみたはいいものの…ついに、5メートル先の視界も見えなくなってきてしまった…。

山の天気は乙女心と同じぐらい変わりやすい。もしかしたら少し休憩したら天候が変わるかもしれないと、私が熊本に訪れたら必ず行くカフェ「黒柴コーヒー」さんへ立ち寄り、コーヒーとケーキを嗜む事にした。少し休憩していると、先程より少し霧が晴れて視界が良くなってきた。

黒柴コーヒーさんの店内にて。あー癒される。

えっ?休憩してばかり…?えへ。
「このチャンスを逃すまい!」と急いでお会計をして出発。事故に遭わぬようゆっくり進むこと1時間半!予定よりも大幅に遅れてしまったが、17時ちょい過ぎに『大観峰』に到着した。
目的地・大観峰の景色はいかに…!
「やっと着いたぞー!!!」
と笑顔で駐車場の方に進むが誰もいない。
「あれ?平日だし、天候が悪いからか?」
と大観峰の入り口に行ってみると『このゲートは5時に閉まります』と閉館時間を示す文字が…。

ガーン…。
嘘だろ…?膝から崩れ落ちる私。
「あぁ…私が寝坊しなければ…」と悔やんでいると、またもや話し声が。
「どこから来たんや?」
『………え、私ですか!?』
「(ナンバープレートを見て)え!!群馬ナンバー!?」
『あ、はい。』
「遠いなー!!東北やん!!」
コテコテの関西弁のご夫婦に話しかけられた。どうやらそのご夫妻は大阪からバイクで旅行中とのこと。天候の悪い中『大観峰』まで来たが時間に間に合わず…同じ境遇らしき私を見つけて声をかけてきてくれたらしい。
最後まで「群馬は北関東だよ!」とツッコめずにはいたが、仲良しなご夫妻と楽しく談笑出来たおかげで、『大観峰』のゲートの中には入れなかった事や寝坊した事も少し忘れることが出来た。
素敵なご夫妻に別れを告げ、このままもう1泊して熊本を楽しみたいところだったが、今回旅行に使える日数は5日間。すでに3日も使ってしまった。
名残惜しいが、このまま東京に帰らなくては行けない。その日の23:55 新門司港発のフェリーに乗れれば、翌日20:45には横須賀港に到着出来る。
大観峰に「また絶対来るから!必ず!」と別れをつげ、そのまま新門司港に向かう事にした。

なんにも見えない…。
大観峰から新門司まで順調にいけばバイクで3時間。気づけば街灯も反射板もない真っ暗な山道を走っていた。相変わらず天候は悪く、霧は深くなるばかり…。全く前が見えない。
「これ、歩いた方が早いのでは?」と思うぐらいのスピードで進む。今回は流石に休憩しているヒマはないので 、2m先も見えない山道をライトを照らしながら走っていくと、何か動く物体が道のど真ん中に現れた!!
「……キキーーーーッ!!!」
ぶつかる寸前で急ブレーキをかける。
「……ブッ…ブタ!?」
大きな声とブレーキの音で、ブタはすぐに逃げて行った。小ブタもいたからおそらく親子だろう。
「あぁ…ぶつからなくて本当に良かった…」
と心臓バクバクしながらも前に進む。しばらく走り続けるとやっと冷静になり、ある事に気がついた。
「違う…あれはブタじゃない、イノシシだ!」
霧でよく見えなかった事もあり、ブタと勘違いしてしまったが、今思えばあれは絶対にイノシシだった。イノシシよ、なんかごめん…。
そこから何とかケガなく走ること5時間!予定より2時間遅れでフェリー乗り場に到着した。
行き同様しっかりと船酔いすること21時間。無事、横須賀港に到着。そして横須賀港から3時間かけて自宅に帰宅した。
トラブルやハプニング続きの熊本ツーリングだったが、ベトナムに向けての練習はバッチシ出来たし、個人的には充実して楽しい旅だった。

愛車といつかまた、大観峰に!
「よし!ここからベトナムへ旅立つぞ!」
となるはずだったが…もう一度日本で練習したい!と思いたち、ベトナムに行く前に、愛媛までバイクで行く事になったのだった…!
次回!東京から愛媛までスーパーカブで行く旅がスタート!笑
お楽しみに!