
フーテンの寅さんに出てくる名セリフです。ツバクロとはツバメ(燕)のこと。寅さんが言った通り、日本では春から夏にかけての季節になるとツバメがやってきます。しかし長居はしません。東南アジア(フィリピン、インドネシア、マレーシアなど)から日本に飛来し、夏の間に子育てをし、秋になると再び東南アジアの温暖な地域へ帰っていきます。
日本の季節を彩る風物詩と言ってよいかと思いますが、実は私が暮らしているカリフォルニアでもそうなのです。こちらでは遠く南アメリカ(主にアルゼンチン)からツバメがやってきます。やはり春ごろに現れて、夏の間に子育てをして、秋にはいなくなります。
カリフォルニア州に21か所あるカトリック伝道所のひとつ、ミッション・サンフアン・カピストラーノでは毎年3月19日にツバメがこの地に飛来することを祝う恒例のイベントが行われます。200年以上も前に建てられた教会の壁をツバメの群れが飛び越えていく光景は地元の名物です。

日本とカリフォルニアは北半球でほぼ同じ緯度に位置していて、面積も似ています。どちらも多様な自然環境を持ち、共通するものも数多くあります。ツバメに人々が寄せる思いもそのひとつなのかもしれません。
ということで、ツバメにまつわるクイズ4問です!
【第1問】ツバメはどんなところに巣を作る?
a)木の上
b)地面の穴
c)断崖絶壁
d)人家の軒先や橋の下
ツバメが夏の間に子育てをすることは前述した通りです。それでは、そのための巣作りにはどのような場所を選ぶでしょうか?

正解は「d)人家の軒先や橋の下」です。 ツバメは紛れもない野鳥でありながら、なぜか人工的な建物を好むようです。正確には、ツバメの種類は数多くありますが、そうした特徴を持つツバメが日本にもカリフォルニアにもやってきます。英語では”Barn Swallow”と言います。納屋のツバメ、というわけですね。
「ツバメに注意」の貼り紙を駅で見かけることもよくあります。有川浩さんの短編小説『阪急電車』では、駅舎で巣を作るツバメを優しく見守る小林駅が印象的に描かれていました。中谷美紀さん主演の映画版も心に残る映像作品でしたね。
【第2問】ツバメは主に何を食べる?
a)木の実
b)ミミズ
c)昆虫
d)小魚
巣作りをしたツバメの親はせっせと小鳥にエサを運びます。さて、そのエサは主にどのようなものでしょうか?

正解は「c)昆虫」です。ツバメは空を飛びながら、空中のハエや蚊を捕まえてしまうのだそうです。まさに目にも止まらない早業ですね。見たことはありませんが。
【第3問】アメリカ政府によるツバメ保護の主目的は?
a)害虫駆除
b)環境保護
c)観光資源
d)羽根の商業利用
アメリカでは1918年という早い段階で渡り鳥を保護する連邦法(Migratory Bird Treaty Act)が成立しています。1,000種類を超える渡り鳥が保護の対象となり、許可なき狩猟や捕食が禁じられています。ツバメもそうして保護されている鳥のひとつです。
アメリカ政府がツバメを保護する独特な目的とは何でしょうか?

正解は「a) 害虫駆除」です。 ツバメは多くの害虫を食べてくれるため、農業や人間の生活にとって有難い存在なのですね。
【第4問】ツバメはどれくらいのスピードで飛ぶ?
a)時速5km以下
b)時速約20km
c)時速約50km
d)時速100km以上
佐々木小次郎は空を飛ぶツバメを切り落とす修練を重ねて、秘技「ツバメ返し」を会得したと言われています。それくらい、ツバメは非常に速く飛ぶ鳥だと以前から思われてきました。
実際のところ、ツバメはどれくらいのスピードで空を飛ぶのでしょうか?

正解は「c)時速約50㎞」です。 もちろん、おおよその数字です。特に急がないときでもそのくらいで、狩りの時にはさらに加速するらしいです。
思ったよりは速くないのだな、と私は思いました。時速50㎞のツバメを刀で斬った佐々木小次郎と時速160㎞の速球をバットで打つ現代の野球選手は、一体どちらが凄いのでしょうか。
なぜツバメは旅をするのか
クイズは以上なのですが、最後に私には答えを見つけられなかった謎について述べたいと思います。日本でもカリフォルニアでも、はるか南の異国から長い旅をしてやってきて、そして南へ去っていくツバメたち。冬にシベリアから日本にやって来るハクチョウとは季節と方向がちょうど反対になります。
このことを不思議に感じるのは私だけでしょうか。ハクチョウの場合は冬の厳しい寒さを避けるためだと分かるのですが、ツバメの場合は夏の暑さを避けているとは私には思えないのです。
東南アジアの夏はそりゃ暑いでしょうけど、日本の夏だって最近では亜熱帯化しているって言われるくらいですから、きっと負けず劣らず暑いはず。ツバメたちはなぜわざわざ暑いところから暑いところへ海を越えてまでやってくるのでしょうか。エサになる蚊やハエだって、とくに日本だけに多いわけでもなさそうです。
南アメリカから赤道を越えてカリフォルニアにやってくるツバメについても同じ疑問が湧きます。カリフォルニアの夏は十分に暑いですけど、冬になってもそれほど寒くなるわけでもありません。1年中ここに住んでいたっていいんじゃない?と思ってしまうのです。
風を切って大空を飛翔するツバメたち。彼らはなぜ長い旅をするのか? あるいはご存知の人もいるかもしれません。私にとっては、友よ、答えは風に吹かれています。