GW中のかに座イベント「南のロバと北のロバの飼い葉桶に火星が突入」って何のこと!? - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.04.27

    GW中のかに座イベント「南のロバと北のロバの飼い葉桶に火星が突入」って何のこと!?

    GW中のかに座イベント「南のロバと北のロバの飼い葉桶に火星が突入」って何のこと!?
    5月の初め、かに座を火星が通過します。火星の通過はかに座の形を確認する大チャンス。黄道星座としては地味な「かに座」ですが、そこでは2頭のロバが草を食んでいる姿が…。

    見つけにくい「かに座」にある超有名なプレセペ星団とは

    5月上旬、夕方の西の空にはふたご座、南西の空にはしし座が架かっていますが、注目はその中間。赤い星、火星が輝いています。火星がある場所が、かに座です。

    かに座は黄道星座のひとつ。そのため、いつも黄道に近い軌道を取る惑星が横切っています。今回は火星ですが、6月末から8月までは水星がうろうろして、8月下旬から9月上旬にかけては金星が通過します。

    こうした明るい星が通過する時が、かに座を観察するチャンスです。かに座の一番明るい星が4等星。ふだんは、特に街明かりの中では、ふたご座としし座という1等星付きの有名な星座に挟まれて目立たないのです。

    ただ、かに座には有名なプレセペ星団があります。44番目のメシエ天体で「M44」と表記されることも多いです。

    プレセペ星団は数百個の星が集まっている散開星団です。約600光年離れた場所にあります。かに座の4つの星で形作られる四角の中にすっぽり収まっています。星団全体の明るさを合わせると3~4等級になるので、暗い場所なら、肉眼でもぼんやりと見えるでしょう。

    かに座の中にあるM44のプレセペ星団(国立天文台)。

    ちなみに、メシエ天体とは、彗星探しに人生を捧げたフランスの18世紀の天文学者、シャルル・メシエ氏が作ったカタログに掲載された「彗星と見間違えそうな紛らわしい天体」のことです。

    Mはメシエの頭文字です。プレセペ星団は、17世紀にガリレオが望遠鏡で発見している星団ですから、彗星と見間違えるはずがありません。それなのにM44としてカタログに加えられているのには、メシエ氏の気持ちの問題があります。

    もともとメシエ氏は、キリのいいM40でカタログ作りを打ち切るつもりでいました。ところが、M40まで来たところで、もうひとつ彗星と紛らわしい天体が見つかり、M41ができてしまいました。

    しかし、41はいかにもキリが悪いので、45で終わりにしようと考え直しました。そのため、M42からはM45までは、けっこうやっつけ仕事で、彗星と見間違えることはなさそうな大きな星雲や星団がカウントされています。M42はオリオン座大星雲です。これを彗星と間違える人はいませんね。

    さて本題。M44のプレセペ星団に火星が接近します。5月1日からかに座の四角に入り、6日にかけて西から東へと通過していきます。最接近は5日です。

    5月5日の夕方の南西の空。かに座の四角の中を火星が赤く光る。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    かに座なのに、プレセペ星団はロバの飼い葉桶

    ところで、プレセペとはラテン語で「飼い葉桶」を意味します。「飼い葉桶」とは何かということになりますが、ロバのエサの草や麦藁を入れた箱のようなものです。

    かに座なのに、なぜロバ? 

    かに座の四角を形作る星のひとつγ(ガンマ)星の名はアセルスボレアリス。δ(デルタ)星の名はアセルスアウストラリスといいます。それぞれ北のロバ、南のロバという意味です。

    かに座とプレセペ星団。双眼鏡の視野にちょうど四角とプレセペ星団が収まる。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    上がかに座とプレセペ星団の図ですが、北のロバと南のロバの、2頭のロバが仲良くプレセペ星団に首を突っ込んで草を食んでいる図が思い浮かぶでしょうか……。

    かに座は古代メソポタミア時代からある古い星座のひとつです。この星座は古代ギリシアに伝わって定着しましたが、そのギリシアではプレセペ星団周辺の星をロバと結びつけていたことがわかっています。

    なぜロバが草を食んでいる様子を連想したのかは謎ですが、よく考えたら、古代メソポタミアでこの星々をかにに見立てた理由も謎です。

    双眼鏡を向ければ、ちょうどプレセペ星団と周りの4つの星が視野に収まります。ふだん目立たないかに座の四角を確認する絶好のチャンスです。赤い火星が飼い葉桶に突入する様が楽しみです。色の違いもよく見てください。

    注意点は月です。5月5日には上弦の月になり、月明かりがジャマになります。とはいえ、赤い火星はすぐにわかります。最接近の5日前後にも双眼鏡を向けて、見え方の違いを楽しんでください。

    構成/佐藤恵菜

    星空案内人 廣瀬匠さん

    星空案内人 天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、2025年の天文現象の見どころと楽しみ方をまとめた『アストロガイド 星空年鑑2025』が好評発売中。

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