
普段はアメリカ国内を、夫婦で自由気ままに、キャンピングトレーラーを引っぱって旅するのが好きな筆者。しかし今回は人生初のクルーズ船に乗って、寄港地エンセナダの海風に吹かれながらウォーキングしてきました。
豊かな海と山に恵まれた温暖な気候の港町
港としての発展と観光へシフトした「エンセナダ」って?
1500年代にスペイン人が上陸して、外の世界とつながるようになったメキシコ・エンセナダ。スペインの植民地としての時代から、19世紀の鉱山ブームとともに、アメリカや他国からの冒険者や移住者がいっきに増えたそうです。20世紀に入ると、天然の良港を活かし漁業や海運の中心地となりました。
とくにアメリカの禁酒法時代には、アメリカ人がお酒と娯楽を求めてこの地を訪れるようになり「観光地エンセナダ」が始まります。1990年代からはクルーズ船の寄港地として注目され、アクセスの良さも加わって、「週末リゾート化」していきました。
実際、クルーズ船で会話をした人たちはカリフォルニア州に住んでいる人たちがほとんどでした。彼らにとって週末のクルーズの旅は、ユタ州の人たちが週末にRVキャンプへ行く感覚なのかもしれません。

カリフォルニア州のワールドクルーズセンターから出航して2日目。メキシコ・バハ半島の港町「エンセナダ」に到着しました。
甲板から見下ろした町への感動の一歩
アシカのなき声で目覚めたこの日。現地でワイナリーツアーや、オフロード車ドライブなどのオプションツアーもあったのですが、団体行動と時間に縛られる旅に魅力を感じない夫婦。
正直に言うと、少しだけ異国の地でオフロード体験をしてみたい気持ちも…。しかし初めて降り立つメキシコの地を、目的もなくのんびりと歩いてみたい「ワクワク感」のほうが勝ちました。
早起きをしてオプションツアーに参加する人たちが、足早に下船するのを見ながら、がら空きのダイニングレストランへ。窓際テーブル席に座りゆっくり朝食を楽しんだあと、いよいよメキシコ初体験です。大型クルーズ船が出入りする観光地なので、昔ながらのメキシコの風景とは違うかもしれないことも頭に入れながら、人生初のメキシコの地を踏んだのでした。




海沿いの遊歩道・マレコンをウォーキング
ユタ州の山のハイキングと違って、スペイン語の看板や、陽気なライブ音楽、潮の香りに包まれながらのマレコンのウォーキングはすべてが新鮮でした!
「マレコン」とは、ラテンアメリカやスペイン語圏の港町でよく使われる言葉で、「海辺を歩く場所」とか「町と海が出合う場所」というニュアンスをもっているそうです。「マレコン」のように、ちょっと異国の香りがする響きって、なんだか口にするだけで、旅の空気やその土地の雰囲気を感じるスパイスになると思いませんか?


海のない乾燥地帯のユタ州にも、年中カモメが飛んでいますが…。やっぱり海辺で見るカモメがしっくりきますね。そして生まれて初めて見た、青空を飛ぶペリカンの姿に興奮状態。


本場フィッシュタコ発祥の地でランチ
海沿いをのんびりウォーキングすること以外に、わたしたち夫婦にはもうひとつ体験したいことがありました。それは港の風景を眺めながら、冷たいマルガリータといっしょにフィッシュタコを食べること。実はエンセナダは、フィッシュタコの発祥地なのです。



気になるお味は?ん…微妙。
クルーズ船に乗る前に一泊したカリフォルニア州サンペドロ市のホテルで、立ち話をした女性の言葉を思い出しました。「フィッシュタコはサンディエゴのものが一番おいしいのよ!」
アメリカにある日本レストランのほとんどが、アメリカ人が好む味にアレンジされているのと同じように、きっとわたしたちが食べなれているメキシコ料理も、本場メキシコの味とは違うのかもしれませんね。
楽しみにしていたマルガリータのほうはと言うと、ノンアルコールのモクテルのような味でした(笑)。レストラン前に立っていた客引きのひょうきんなお兄ちゃんと、やさしい口調で物静かなウェイターのおじちゃんの笑顔に、見事にだまされたか?という思いが、ふと脳裏をかすめたことはここだけの秘密です(笑)。
お会計が2人分で合計約80ドル(1米ドル150円で計算すると1万2千円)だったのも、きっと観光地価格なのでしょうね。まあポジティブな視点でみれば、ここでしかできない体験をしたことには間違いないので、すべておいしくいただきましたよ!
海辺でお昼寝中の猫ちゃんの姿にほっこり
さて、お腹もほどよく満たされたあとは、歩いてきた道をクルーズ船へ向かって歩きます。同じ道でも行きと帰りでは、違った風景や発見があって好きです。


歴史と海風がやさしく迎えてくれた、エンセナダの港町。まるでわたしの故郷、沖縄の海沿いを歩いているかのような、どこか懐かしさを感じる旅ウォーキングでした。