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    2025.04.28

    「エナガ団子」も見たい!子育てに大忙しのエナガを観察しよう

    「エナガ団子」も見たい!子育てに大忙しのエナガを観察しよう
    野鳥好きなら一度は見たい「エナガ団子」。この時期、ひと足早く子育てをするエナガを観察していると、そんな幸運が訪れるかもしれません。

    若葉の新緑が眩しい季節。花びらが散った後のソメイヨシノには、ムクドリやシジュウカラなどの野鳥たちが集まってきます。彼らはこの時期に大発生する毛虫やイモムシを、せっせと巣にいる雛に運んでいるのです。

    イモムシの糞に気を付けつつ、そんな木々を見上げていると、エナガの雛が親に餌をねだる「ピーピーピーピーピッ」という甘えた鳴き声が聞こえてきます。

    エナガはなぜ人気の野鳥なのか?

    エナガ
    体はスズメより小さく、英名の「Long tailed Tit」の通り、長い尾が特徴のエナガ。体重は約7gで、日本の野鳥ではキクイタダキ(約5g)に次いで軽い。

    その特徴的な長い尾を含めたエナガの体長は約14cm、体重はわずか7gほど。つぶらな瞳と小さな嘴が印象的な愛くるしい顔のつくりや、小さな身体と長い尾を駆使した俊敏な動き、器用に枝や葉にぶら下がるアクロバットな行動から、熱烈なエナガのファンは多いのです。

    エナガ2匹
    親鳥に餌をねだるエナガの雛。野鳥の子育てシーズンはエナガから始まる。

    加えて、大人気の北海道の亜種・シマエナガの存在がエナガの知名度をますます押し上げています。野鳥専門誌の編集長から伺った話では、エナガを特集した号は特に反響が大きいとのことでした。

    何より、エナガが私たちの身近な環境で観察できる野鳥であることが大きな魅力と言えるでしょう。

    北海道でのみ見られるシマエナガ。エナガの亜種(生物の分類学上、種の下に設けられる分類単位)だが、今や知名度はこちらが上である。

    エナガを見つけるコツは鳴き声

    エナガ
    モミジの新芽を啄むエナガ。顔のパーツが顔の中心に集まり、どこか「童顔」に見えるのが特徴。

    冒頭にも書きましたが、ソメイヨシノや新緑の若葉が伸び始めた公園の樹木を見上げながらエナガを探すと「ジュルル、ジュルル……」という特徴的な鳴き声が聞こえてきます。

    その方向に目を凝らしてみてください。尾が長く、スズメよりひと回り小さな鳥が、枝を飛び移りながら餌を探しています。最近人気のシマエナガに太い眉毛がある姿、といえば分かりやすいでしょうか。

    エナガがイモムシを咥えたまま飲み込まずにいたら、すぐ近くに幼鳥がいるかもしれません。「ピーピーピーピーピッ」という、小さいながらもよく響く高いトーンの鳴き声で、親鳥に餌をねだる姿が見つかるでしょう。

    巣立ち直後のエナガの雛。尾羽はすでに長い。眼瞼輪(がんけんりん)が赤いのが雛の特徴。成鳥の眼瞼輪は黄色い。

    早めに始まるエナガの巣作り

    エナガの営巣の話をしましょう。エナガの親鳥は他の野鳥たちより早く、東京ではまだ気温も低い3月には巣作りを始めます。その後、メスは5〜10個の卵を産み、約2週間の抱卵期間を経て雛が孵化します。

    雛が巣を離れる巣立ちまでは孵化後約20日。ちょうどソメイヨシノの花が散る4月上旬から中旬には雛たちが巣の外に出てくることになります。

    エナガがこれだけ早い時期に子育てをする理由は、彼らが少しでも子孫を残せるよう、天敵であるヘビやカラス、猛禽類の活動が活発になる時期より早く繁殖活動に入るからだと言われています。

    オオタカやツミなどの猛禽類と繁殖期が重なってしまうと、それだけ捕食されてしまうリスクが高まることを意味します。どの野鳥にとっても繁殖期はたくさんの餌を必要とするからです。

    そのほかに、同じような餌で競合する他の子育て中の野鳥との餌の取り合いを避けるというメリットもあります。

    餌探しの最中にクモの卵嚢を見つけたエナガ。糸は巣作りの大切な材料のひとつ。
    ソメイヨシノの樹上で巣材のコケを咥えたエナガ。木々が芽吹く前の3月に巣作りを始める。
    若葉に付くイモムシを巣の雛に運ぶ親鳥。この時期は、餌となる蛾や蝶の幼虫が大量に発生し、繁殖期を迎えた野鳥の重要な食料となる。

    エナガが営巣場所に選ぶのはソメイヨシノやコナラなどの太い樹木の枝の「股」の部分。そこに、クモの卵嚢の糸や蛾の繭糸を接着剤にしてコケなどを丁寧に貼り合わせ、ボール状の巣を作っていきます。

    巣穴は雨が吹き込まないよう、ボールの真上を避けた場所に設けられます。一連の作業はまさに職人技と言えるものです。

    巣の外側ができ上がると、次の他の鳥の羽毛を内部に敷き詰めて完成します。親鳥は主にオオタカなどの食痕(捕らえた獲物の野鳥の羽根を毟った場所)で羽根を集めます。

    その枚数は1000枚以上と言われ、寒い時期には3000枚近くになるそうです。こうして保温効果が抜群のベビーベッドが出来上がります。

    公園の遊歩道に落ちていたエナガの巣は軽くてふかふかだった。内部の巣材にはキジバトやコジュケイの羽根が使われていた。巣はカラスの襲撃や強風によって落ちてしまうことも多い。

    仲間と力を合わせて子育て

    ひと組のエナガの親鳥が一回の繁殖で育てる幼鳥の数はたいてい5羽以上と言われています。ヘビやカラスなどの天敵が目を光らせる中、巣立ちしてあちこちに散らばった食べ盛りの幼鳥に餌を運ぶのは大変です。子育て中に天敵の犠牲になってしまう幼鳥や親鳥もいます。

    こんな時、なんと親鳥の代わりに幼鳥に餌を与える成鳥が現れるのです。それは「ヘルパー」と呼ばれる個体。親鳥以外の成鳥が子育てを手伝う行動として知られています。雛が孵化しなかった場合に、仲間の子育てを手伝う親鳥が現れることも知られていて、これもヘルパーの行動とされています。

    「協同繁殖」とも呼ばれるこの生態は、実はムクドリやスズメ、シジュウカラ、コゲラ、オナガなど多くの種にも見られます。

    「混群」を作るエナガは野鳥観察の醍醐味を教えてくれる

    カワセミと並び、エナガをきっかけに野鳥に興味を持つようになった方も多いのではないでしょうか。見た目の可愛らしさだけでなく、まだ冬枯れの季節から健気に巣作りを始めたり、仲間と力を合わせて子育てをしたりと、小さな身体でたくましく生きる姿が魅力です。

    公園や雑木林で野鳥を観察していて、急に小鳥の群れに囲まれたことはありませんか。冬季、小さな鳥たちは種を超えて「混群」(こんぐん)を作ります。

    群れとして多くの「目」で警戒することにより、オオタカなどの共通の天敵に捕食されるリスクを減らすためや、集団で効率的に採餌することで体温を維持し寒さの厳しい季節を乗り越えるためとも言われています。

    その混群の先陣を切って行動するのがエナガです。エナガを探すと、一緒に行動するシジュウカラやメジロ、ヤマガラ、コゲラなどにも会えるという訳です。野鳥の撮影を楽しんでいる筆者にとって、エナガをはじめとする野鳥の混群に突然囲まれるひと時は無上の歓びを感じます。

    「エナガ団子」を探してみよう

    エナガ団子
    低い位置の薮の中に集結していた雛たち。他の家族の雛も加わって10羽以上の「エナガ団子」になるときもある。

    今の季節のエナガは家族で、あるいは同士で子育てに奮闘しています。他の野鳥たちも同じく子育ての真っ最中です。

    そんな中、巣立ち後の幼鳥が身を寄せ合う「エナガ団子」は一度観たら忘れられない可愛らしさです。時折、樹上からぶら下がるイモムシに気を付けながら、「ジュルル、ジュルル……」の鳴き声を手がかりに、子育て中のエナガを観察してみましょう。

    中村雅和さん

    野鳥好き編集者

    幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。

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