今週のメダカ vol.3 緑光、新緑光を始めとする“緑色のメダカ”
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    自然観察・昆虫

    2018.12.17

    今週のメダカ vol.3 緑光、新緑光を始めとする“緑色のメダカ”

    新緑光
    「メダカに緑色という表現は存在するのか?」改良メダカの世界では、やはり様々な体色の微妙な変化に気付き、それを固定していこうという斬新な考え方が大切な趣味である。
     青、黄、朱赤、ピンク、黄金、琥珀…メダカのベースとなる色合いはこれまでにも様々な呼び方がされてきた。その中、メダカの新たな基調色として、ここ最近注目されてきている色合いが緑色である。静岡県浜松市にあるメダカ専門店『猫飯(ねこまんま)』から、2017年の冬、“新緑光(しんりょっこう)”という名称で怪しげに青緑色に体を輝かせるメダカが紹介されてから、一躍「メダカの緑色」が注目を集めるようになったのである。
     
    緑光

    それ以前にも「メダカの緑色」に注目されていたメダカはいくつか知られていた。“灯”の元となった『阿波めだかの里』の森口氏の言われる“緑幹之(みどりみゆき)”、“カブキ”作出者の天野雅弘氏の言う“碧翡翠(みどりひすい)カブキ”、廣江邦昭氏の“極虹(きょっこう)”の緑色系など、これまでにも緑色に注目したメダカは知られていたのである。
     緑翡翠カブキ  葵めだか作
    翠宝(りょくほう) 小夜めだか作
    緑色という色合いは、褐色に青色が加わり、さらに赤色が弱まると、うぐいす色のような緑色になる。また、単純に青色と黄色が混ざることでも緑色になる。メダカの場合、褐色に青色が加わり、赤色が弱まる方向での緑色が多い。これは、野生メダカが持つ体色が茶褐色なので、そちらに青色を加えながら、赤色を薄める方向が作りやすいからである。
    “緑光”は、静岡県にお住まいの神村孝人さんが愛知県一宮市にある『グリーンベール』のメダカ飼育容器の中にいた、少し緑色がかったメダカを発見したことが始まりである。神村さんは、「何かちょっと緑っぽい色合いをしていたんです」とそのメダカを『グリーンベール』の山田さんから分けてもらったそうだ。それが2年前の春だったそうである。神村さんは、「この色合いが遺伝しないと始まらない」と思われ、愛知県稲沢市にお住まいの『凸凹めだか凸凹』の彩さんの協力を得て、この“緑色っぽい”メダカの累代繁殖を始められたのである。
    『グリーンベール』の山田さんにこのメダカの元となったメダカの話を伺うと、「全身体内光と黄幹之の交配で出てきたメダカだったと思う」と答えてくださった。現在の“緑光”のバリエーションを見ていると、“北斗”の血統が感じられる部分があるのだが、それは、そもそも全身体内光を作られた広島県福山市在住の瀬尾さんが“北斗”を使っていたので、それが“緑光”に受け継がれているのだろうと感じた。
    緑光
    緑光
    緑光
     遺伝することを確認した神村さんと彩さんは、二年前から、「この“緑光”をどうしたら世に出せるだろうか?」と思いながら、累代繁殖をしてこられたのである。当初、“緑光”は『グリーンベール』にちなんで、“緑紗(りょくさ)”と仮名を付けておられたと言われる。「それを懇意にしてもらっている『猫飯』の池谷さんに見せたところ、最初はあまり興味を示してくれなかった」、「最初は“宇治抹茶”とか
    言われましたよ」と神村さん、それでも諦めずに彩さんと共に累代繁殖され、さらに緑色が強まったところで、再び、池谷さんに見せたところ、“緑光”という呼称が決定したそうである。
     
    池谷さんはすぐに“緑光”と白幹之を交配され、それが現在言われる“新緑光”となったのである。その他、松井ヒレ長青幹之と交配した、“松井緑光幹之”、白幹之と交配した中から出てきた体内光が全身に乗った“新緑光幹之全身体内光”、その他“緑色星河”など交配を進められたのである。彩さんは、この2年間で“緑光”をF6まで作ってこられており、好みのタイプに分けて、美しい“緑光”を育てておられる。
    新緑光 全身体内光タイプ
    緑光 全身体内光タイプ
    新緑光 松井ヒレ長タイプ
     
    このメダカの緑色に関しては、今後、もっと多くの人に楽しまれながら、さらに緑色を鮮やかに輝かせるメダカが誰かの手によって作られるだろう。今後、この“緑光”がどう変貌していくか?楽しみである。

    写真/森 文俊、彩 文/森 文俊


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