日本のミライを明るくする! 園児野生化計画 vol.69
初めてのフィールドに入ると、いつも元気な子供達でもさすがに緊張する。木が密集していて日影が多いところでは”お化け的恐怖”を感じ、植物がうっそうと茂っているところでは”猛獣的恐怖”を感じるようで、少し進むたびに僕に質問を投げかけてくる。
「長谷部先生、この森でおばけ見たことある?」
「長谷部先生!もしもライオンが出てきたらどうするの?」
こちらからすれば「そんなわけないよ〜」とニヤニヤしながら返答したいところだけど、子供達からすれば本気で知らなければならない質問なのだ。僕は可能な限りわかりやすく、お化けは実際どうだかわからないが、ライオンがいない理由を伝えてあげる。
歩きながら何度も繰り返される質問タイムを経て彼らの不安がやっと消えかけた頃、子供達の目の前に魅力的な地形が現れた。恐怖と面白さが共存する、子供達的には”ワクワクする”という言葉がぴったりの斜面地だ。
この斜面は高さは2.5mで斜度が35度程度あり、子供達からすればもう崖だ。こういう斜面に出会った子供達は、90%以上の確率で駆け下りたくなるもの。今回の子供達も多分に漏れず勇気とボディーバランスを試される試練に自ら挑みはじめた。
こういう遊びは、はじめのひとりで方向性が決まることが多い。今回ひとり目の子供は見事に急坂を駆けおりた。駆けおりた後もバランスを保って見事に走り抜けたその姿は、お友達にとって最高の見本でありモチベーションを生んでくれる。
ひとりめの成功はお友達にとってポジティブな場をつくってくれる
たくさんのお友達に見られながらの坂くだりはきっと緊張しただろうな
勢いづいた子供達は、次々と斜面を下り始める。斜面ギリギリまでお尻で滑り、途中から走り抜ける子、斜面のだいぶ手前までバックして一気に駆け下りる(正しくは転げ落ちる)子、そして下までお尻制動でゆっくりと下る子と、自分ができる最大の方法で斜面に挑んでいる。
お尻制動も立派な坂くだりの手段
それぞれの能力に合わせて挑戦できるのも自然の面白さだ
何度も何度も挑戦する子供達を見ていると、”経験は力”はまさにこのことだという事が目の前でたくさん起きはじめる。お尻制動でしかくだれなかった子が、いつの間にかすさまじいスピードで斜面を駆け降りられるようになっているから子供は不思議だ。もちろん出来なくてはならないわけじゃない。自分の中のもう少し先に心も身体もすすめるのが大切なのだ。
ぼくはこの瞬間のために子供達と一緒に自然の中に入っているといっても過言ではない。ほんの2時間程度の時間に、目の前でたくさんの子供達が斜面を我が物にしてしまったのだ。子供の進化は秒単位。僕もそうありたいなあと強く思うのでした。