我が家の猫(千代子)は、焚火が大好き。ロシアの暖炉「ペチカ」から離れない(ペチカについては、第1回「火のある暮らし」、第3回「火を操る道具・ロシア編」をお読みください)。
だからいつも焚火臭い。
かつて囲炉裏や焚火で暖をとっていた時代には、このような焚火臭い猫のことを「竈猫(かまどねこ)」と呼んでいた。
寒がりの猫は、冬になると火が消えた竈に入って体を温めるので、つねに灰だらけ。フーテンの寅さんの「結構毛だらけ猫灰だらけ」というフレーズにもなるほど、昔は灰まみれの「竈猫」が冬の風物詩だったのだ。
「竈猫」は、俳句の冬の季語としても使われてきた。
しろたへの 麹のごとくに 竈猫(飯田蛇笏)
何もかも 知つてをるなり 竈猫(富安風生)
作家・宮沢賢治は童話『猫の事務所』の中でこう書いている。
<竈猫といふのは、これは生れ付きではありません。生れ付きは何猫でもいいのですが、夜竈の中にはひつてねむる癖があるために、いつでもからだが煤(すす)できたなく、殊に鼻と耳にはまつくろにすみがついて、何だか狸(たぬき)のやうな猫のことを云(い)ふのです>
顔をどんなに洗おうとも、焚火臭さは落ちません。
次回は「シベリアの薪積みの奥義」です。
乞うご期待!
ババリーナ裕子
かつてサハラ砂漠をラクダで旅し、ネパールでは裸ゾウの操縦をマスター。キューバの革命家の山でキャンプをし、その野性味あふれる旅を本誌で連載。世界中で迫力ある下ネタと、前代未聞のトラブルを巻き起こしながら、どんな窮地に陥ろうとも「あっかんべー」と「お尻ペンペン」だけで乗り越えてきたお気楽な旅人。現在は房総半島の海沿いで、自然暮らしを満喫している。執筆構成に『子どもをアウトドアでゲンキに育てる本』『忌野清志郎・サイクリングブルース』『旅する清志郎』など多数。本誌BE-PAL「災害列島を生き抜く力」短期連載中(読んでね)。