オーロラの舞い、太陽と月の追いかけっこ
アラスカの内陸にフェアバンクスという街がある。その街から北極海まで一本の道路が北に伸びている。その道路を辿り、果てのない大地を北へと向かうと、1000キロ以上にもわたって大陸に横たわる長大な山脈、ブルックス山脈にぶつかる。途中にはトラッカーが休憩するレストエリアがひとつあるだけ。北米大陸の中でもかなりの限界的エリアと言えるだろう。
そのあたりでは、8月の後半からオーロラが見られるようになる。手付かずの大自然の中に入りこみ、そこに流れている時間をみなさんに届けることをライフワークとしている私としては、この地にある悠久の気配とオーロラの舞いをどうしても写したかった。
ブルックスは決して標高の高い山脈ではなく、アップダウンは他の山脈に比べると比較的緩やか。しかしその地形のおかげで、得られる視界はそこまで広くはなく、まして地平線を見渡すのは困難だ。日の出や月の出、地平線の端から端まで覆い尽くすようなオーロラを撮影するには、なるべく高い場所まで行く必要があった。
とはいえ、撮影はいつも自分ひとり。体ひとつで行ける場所には限界がある。撮影に適していそうな稜線に目星をつけてはあったのだが、たどり着けるかどうかは五分五分だった。2018年9月末、2週間分の機材と装備、食料などを背負い、山脈を歩き始めた。
道中の苦労話は今回は省くが、道なき道を歩くこと6日目、なんとかたどり着いた稜線から晴れのタイミングを狙って撮ったのがこのタイムラプスだ。オーロラの発光レベルはさほど高くはなかったが、自然なままの光景を収めることができた。
そこでははるか昔と変わらず、太陽と月は追いかけっこをしていた。その合間に訪れる“夜”のあいだだけ、オーロラは空を舞う。
撮影をしている間も、私と同じようにオーロラを見あげているオオカミがいたかもしれないし、良い冬眠スポットを探しているクマもいたかもしれない。数万年前から変わらずに繰り返されてきているその光景を、モニタ越しで皆さんにもご覧いただきたい。
プロフィール:佐藤大史
東京都町田市出身。長野県安曇野市在住。日本大学芸術学部写真学科卒業。卒業後、写真家白川義員の助手を務め、2013年独立。
「地球を感じてもらう」ことをコンセプトに、アラスカなどの手つかずの大自然と、そこに生きる生き物たちを撮影している。