何でも禁止の公園にNO! …と始まったプロジェクト。子どもたちが火と付き合うこともできるパルパークが、北九州市山田緑地で本当に実現した! !
「せーの!」
かつて北九州市内を走る路面電車に使われていた花崗岩の敷石をシートに乗せ、力を合わせて引きずり運ぶ小学校高学年の子どもたち。小さい子どもたちは、栗石にする小ぶりの石や砂を森の中で集め、それをリヤカーで運んでくる。おとなたちは一心不乱に地面を掘る。そして、掘り下げた地面の縁に全員で協力して栗石を並べ、その上に花崗岩の敷石を敷く。その間、子どもたちの甲高い「せーの!」とおとなたちの野太い「せーの!」が絶え間なく森に響き渡っていた。
早朝1度Cまで冷え込んだ晩秋の週末、焚き火場を作り、焚き火を体験するイベントが山田緑地で開催された。それは、編集オオサワにとって待ちに待ったときだった。
「危ないという理由で火を遠ざけるのではなく、正しく付き合う──焚き火はまさに、“子どもたちに、たくましく生きる力を”というパルパークのコンセプトそのものなんです」
建設自体を市民参加型のイベントに仕立てたのは、北九州市公園緑地部の梅野だ。
「できるだけ多くの人にパル(仲間)になってもらいたい。そのためには、一緒に汗を流して焚き火場を作るのが一番だと考えました」
傾いた太陽が尾根の端にかかろうとするころ、古代の遺跡を思わせるような焚き火場が完成。設計・施工の総監督を務めたクラフト作家の長野修平さんが、皆で集めてきた枯れ木をメインのファイヤーピットに丁寧に積んでいく。いよいよ火入れの儀だ。80人の視線が長野の手元に集中する。ナイフを擦ったマグネシウム棒からまばゆい火花が散るや…ほぐしたガマの穂から炎が上がり、小枝がパチパチと燃え始めた。そして、オオサワが腹の底から吠えた。
「焚き火ばんざーい!」
公園からニッポンを変える──山田緑地に狼煙が上がった。
焚き火場作り
この何もない平らな地面に、1日で焚き火場が作れるのか!? イベント前、棒とひもで設計図を描く長野総監督とオオサワ。
地面に引いた線の内側をスコップで掘るおとなチーム。内径4.2mの円と長辺4.2mの台形を、深さ30㎝ほど掘り下げる。
もっとも小さい子どもチームは、山に入って乾いた砂さ 礫れきをふるいにかけた。砂と小石はファイヤーピットで使用。
小学校中学年チームは、栗石(地盤固めに用いる石)を森の中で集めて、リヤカーで運搬。栗石はピットの囲いにも利用した。
焚き火場の周囲に並べる敷石を運ぶのは、小学校高学年チームの任務。約80㎏の敷石を、まず運搬シートに乗せる。
敷石を乗せたシートを4~5人で引きずって運ぶ。公園内で保存されていたこの敷石をはじめ、砂も小石も薪もマンパワーもすべて地産地創だ。
掘り下げた地面の縁に栗石を置いて基礎を固め、その上に敷石を設置。敷石は、ちょうどいい高さと距離で焚き火を囲む椅子となる。
焚き火場の中に、栗石でファイヤーピットを作る。ピット内部には小石を敷きつめる。
そして…火入れの儀
最初の火は、できるだけ原始に近いやり方でおこす。マグネシウム棒の火花で着火した瞬間、「おお!」という歓声が上がった。
一瞬一瞬異なる表情を見せる炎の暖かさと熱さを感じながら、薪をくべ続ける。こうして子どもはたくましく育つのだ。
焚き火トーク&体験
焚き火の魅力・効能について長野さんとオオサワが熱く語った。「TAKIBIを世界の共通語にしよう!」
薪の選び方・積み方、火の点け方などを体験した後、全員で焚き火を囲み、マシュマロを焼く。美味!
前方後円墳型なので、3つのピットで焚き火が同時進行。そのため参加者全員が間近で焚き火体験でき、大好評だった。