日本全国のゲストハウスを訪ね、その土地おすすめのアウトドアスポット・アクティビティとお店を紹介してもらう連載です。
今回は、「1166バックパッカーズ」(長野市)にご紹介していただいた「88 house Hiroshima」(広島市)を訪問しました!
自然を感じながらゆっくり過ごせる、古民家ゲストハウス
広島駅から路線バスに揺られて30分。「88 house hiroshima」は、バス停からすこし坂を下った川沿いにあります。ゲストハウスからバス通りは見えず、建物は平屋造りの日本家屋。市の中心から近くても時間はゆったり流れています。
部屋は、3名まで入れる和室と6名までのファミリー和室、ダブルベッドが入った洋室の3種類。入り口を入って右手の「コモンスペース」は居間で、こたつとテレビ、おもちゃが置いてあります。そのすぐ側の縁側では、日向ぼっこをしながら読書して過ごすこともできます。ゲストハウスには田んぼもついていて、まるで親戚の家に遊びに来たかのような気分になります。
日本ならではの生活を体験できることもあって、外国からのリピーターも多いのだとか。
「毎年来てくれるゲストとは、もう家族ぐるみの付き合いです。田植えを手伝ってくれたこともありますよ」
と、オーナーの桃田憲吾さん。
建物の奥にあるキッチンには、ゲストにもらったスイスやイギリスのお土産がずらり。いくつも並ぶ外国のシンボルに、このゲストハウスがいかに愛されているかが伺えます。
ここの庭ではバーベキューを楽しむこともできて、桃田さんが「モトロク飲食店」の店主とともに、マーケットを企画することもあります。
桃田さんが88 house Hiroshimaをオープンさせたのは、2014年のこと。ゲストハウスをオープンさせる前には2年間、大阪のゲストハウスで修行を積みました。桃田さんがゲストハウスのオーナーになったのは、ワーキングホリデーでカナダ・エドモントンのユースホステルを訪れたときの体験がきっかけだそうです。
「1年間のワーキングホリデーから帰った後は就職して会社員として働いていました。そのときに住んでいたマンションのリノベーション会社がゲストハウスを始め、『求人してるよ』と妻から聞いて、エドモントンのユースホステルの雰囲気がとてもカッコよかったことを思い出しました。いろいろな国から人が集まって、自分の国のことや体験してきたことを話している、そんな場所を自分もつくりたい! と思って、求人に応募したんです」
修行の後、桃田さんは、ゲストハウスを開く準備をスタート。当初は、アクセスの良い町なかでの開業を検討したものの、だんだんと自然に近い場所へと変わっていきました。
「小さい頃にはキノコ採りをして過ごしていたので、やっぱりアウトドアを楽しめる場所が良いなと考えるようになりました。元植木屋で妻の実家の隣であるこの物件が2013年に空き家になって、ここでやったら楽しそうだなと。もともと目の前にある田んぼで米づくりを手伝っていたので、これからも続けるには便利だと思いましたし」
米づくりは、今も家族の大事な行事です。
「全員で草をむしって稲刈りして脱穀……。秋の実りの時期は、稲穂が金色に輝いてとてもきれいです。事前に相談いただければ、農作業していただくこともできます。まだ稲刈りをしてくれたゲストさんはいませんが、今後は、ドイツのクラインガルテンみたいに、農業を楽しめる”泊まれる農園”をやっても良いなぁ、と考えています」
桃田さんは「ゲストハウスは、地域の文化やライフスタイルを知ることのできる場所、暮らしの疑似体験ができるところ」と語ります。光を浴びながらゆったりと過ごし、気が向いたら近くの山へハイキング、ときには都心で遊びに出かけ、夜には川の音を聞く。ここでは、自然をそばに感じながらも、広島の暮らしをゆっくり体験できるのです。
広島県広島市東区馬木1丁目7−3
TEL:080-3770-9769
MAIL:88hiroshima@gmail.com
観光スポットのすぐ近く、「食のバリアフリー」を目指す喫茶店
「もともとは、両親が1975年にオープンした店で、私は2014年ころから店の経営に関わっています。広島県産のオーガニック食材を仕入れて、ヴィーガンに対応したメニューを提供しています。『食のバリアフリー化』を進めて、いろいろな人に来てもらいたい。抗生物質を使わないトリやヴィーガンハンバーグなど、体にやさしい食材を使って、メニューには万人に人気のある唐揚げやハンバーグなどを入れています」
佐伯さんの食へのこだわりは、佐伯さんの弟さんに子どもが生まれたのをきっかけに生まれました。
「体に良いものを子どもに食べさせたいと思って調べると、一部の食べ物には、日持ちや見た目をよくするため、本来は体に入れてはいけない物質も添加されていることがわかりました。
ただ、その一方で、食べる人のことを考えている生産者もいることがわかって。体に良いものをお客さんにも食べてもらいたいし、いろんな人に隔たりなく店に来てもらうことで、『食』に関心を持ってもらいたいんです。」
佐伯さんが食材を選びときは農家に直接行き、何も聞かずにまず野菜を食べるといいます。思いを持って育てる農家さんの野菜は、味が全然違うのだそう。
「生産者さんの話を聞いていると、どのくらい野菜に愛情をそそいでいるのかわかります。大切に育てている方のほとんどが、野菜のことを『この子』って呼ぶんです」
モーニングで出しているヴィーガンサラダセット(750円)についているサラダは野菜のパリパリとした食感が楽しく、ドレッシングがいらないほど味が濃い。広島県世羅郡の「おへそカフェ」から仕入れるパンは外側がすこし固めで中はもちもち、噛むほどにほんのりと甘みを感じます。デザートには豆乳でつくったヨーグルト。香り高いコーヒーも手伝って、とてもリラックスして食事を楽しめます。
「コーヒー豆は、オーガニックのフェアトレードです。利用者の多くは女性ですが、ヴィーガン料理を求めて外国人観光客もいらっしゃいます」
ご両親の時代から変わらない家具と木調の店内には、可愛らしい置物が置かれています。棚いっぱいの書籍のなかには、お客さんからおすすめされたものもあるのだとか。
「お客さんが『他の人にも読んで欲しい』と置いていってくれたものもあります。こうしてお客さんと情報交換をしたり、近くのアウトドアショップのイベントに呼んでいただいたりして、県内の人たちと知り合っていくことで、新しいものやことが生まれる楽しみがありますね」
今後も少しずつ活動範囲を広げて、喫茶さえきが情報のプラットフォームになったら、と目を輝かせる佐伯さん。
体にやさしい食事は、健康的な体の源。喫茶さえきのメニューを食べれば、ベストのコンディションでアウトドアアクティビティに臨めるはず。お店は朝8時から営業しているので、体を動かす前に立ち寄ってはいかがでしょうか。
広島県広島市中区紙屋町1-4-25
TEL:082-246-9339
営業時間:8時〜20時(ラストオーダー19時)
※モーニングは11時まで
定休日:日曜日、祝日
店主のオリジナルミックスのスパイスが光る、南インド料理屋
駅から少し離れたバス停「本町五丁目」近くの住宅地には、金曜日から月曜日、週4日のお昼時に、スパイスの良い香りが漂います。その香りを辿ると、赤色の家に到着します。
南インド料理屋「ケララ食堂」は、地元の人と観光客で連日賑わい、日替わりで提供しているカレーは、お昼過ぎに売り切れてしまうこともある人気店です。桃田さんと佐伯さんが「やみつきになるんですよね」と太鼓判を推すおいしさで、口に含むと、スパイスの香りが鼻まで抜けてさわやか。刺激は少し強めですが、野菜の甘味や旨味を引き立てます。
「時間が経つとスパイスの香りが飛んでしまうので、当日の朝に調理します」
オーナーは、山田徹さん。カレーは山田さんがつくり、奥さんの加代子さんはデサートづくりと盛り付け、配膳を担当。夫婦で切り盛りしています。
店内の壁は、漆喰塗り。床やキッチンと客席をつなぐ小窓、本棚など、漆喰と木材の取り合わせが、素朴な雰囲気を醸し出しています。このお店、実は、もともと山田さんが住んでいた家。店の開業のために、山田さんが友人と2人で、3ヶ月がかりでリフォームしたのだそう。アーチ型の客席への入り口が、とても可愛らしく印象的です。
山田さんが今の場所にお店を開いたのは、2年ほど前。20代の頃にカレーをつくり始め、イベントでカレーをつくって出していました。そのうち、本格的にカレーの道へ進むために、横浜や千葉、東中野と、関東のインド料理店を渡って3年間修行。その後、広島に戻り、市内の別の場所でお店を持って5年間営業し、一度お休みされました。
「休養中は、広島市長選に出馬した友人の手伝いをしたり、間伐のアルバイトをしたり、『高宮Good Vibes』という音楽キャンプイベントを主催したり、いろいろなことをやっていました。どれも刺激があって、楽しかったです」
「この期間に無農薬のたんぼで米つくりも始めて、今年4年目。野菜も有機農業で育てています。
できた野菜とお米は、お店で使っています。育てたものではなくても、カレーに入れる野菜は、できる限り無農薬で育てられたものや近くで採れたものにしています」
趣味でやっているサーフィンのために島根県へ行く道中に野菜を購入することもあるのだとか。
「3年ほど前、2ヶ月になる娘と妻とカレーを求めて行ったスリランカできれいな波に感動し、本格的なサーフィンデビューをしました。今は週一で日本海まで通っています。片道120キロの長い道のりですが、1人音楽を聴きながら、途中で山陰の山の幸、海の幸を仕入れるのも楽しみになっています」
26歳のときにインドを旅してからどっぷりハマってしまったという山田さんは、これまでにインドへ5回、ネパール1回、スリランカには1回訪れているのだとか。
「2、3年に1回、時間が取れたときに1ヶ月ほど時間をとって、家族でインドへ行っています。インドは、汚いとか危ないとかいろいろと言われますが、人の温かさが良くて。極端に好きになりました。旅行中は、横浜時代のツテをたどって、現地のカレー屋を訪ねたり、食べ歩きなどもしています」
旅行で仕入れた味を取り入れ、山田さんのカレーは日々進化中です。
広島県安芸郡府中町 鶴江1-24-5
TEL:082-569-7585
営業時間:11時〜18時
営業日:金曜日、土曜日、日曜日、月曜日
定休日:火曜日、水曜日、木曜日
構成:松本麻美