
キノコ観察会の様子。各々採集したキノコを並べて、同定を行なう。実物を前にプロの解説が聞けるとあって、勉強になる。キノコの見分け方を学ぶには、こうした観察会に足を運ぶのがベストだ。
子どもにもキノコは大人気
キノコ狩りといえば、おじいちゃんやおばあちゃんの趣味というイメージが強い人もいるかもしれない。その考えは古い! 今や、キノコは老若男女を問わず愛されているコンテンツなのだ。
キノコ研究者の吹春俊光さんが在籍する千葉県立中央博物館では、たびたび“キノコ展”が行なわれ、幅広い世代から好評を博しているという。
「博物館で人気がある展示といえば、恐竜、昆虫、深海生物が筆頭ですが、キノコの展示にも結構な集客があります。愛好家の中心は大人ですが、子どものキノコ好きも増えています。実際、子どもに言われて来館したという家族も多いですね」
子どもに人気の図鑑『小学館の図鑑NEO』(小学館/刊)シリーズに、『きのこ』が追加された影響も大きいかもしれない。吹春さんによると、男の子はダークサイドでパワフルなイメージの毒キノコに興味を示す傾向があり、女の子はキノコのかわいらしさに惹かれるようだ。

子ども向けにつくられているが、野生きのこを中心に約700種のキノコがカラー写真で掲載されており、大人にとっても十分な内容。写真は深度合成された鮮明な白背景写真で特徴がよくわかる。しかもフルカラーでハードカバーでありながら、安価(2000円+税)。あまり知られていないが、日本語で書かれた図鑑では,現在もっとも新しい分類体系も紹介されており(巻末146~147頁)、またその配列で編集されている。(吹春さん)
ブームを巻き起こした一冊の図鑑
吹春さんが在籍する千葉県立中央博物館がオープンしたのは、平成元年(1989)のことだ。開館以来キノコ一筋で、まさに平成を通してキノコと付き合ってきたといえる。
「平成は、空前のキノコブームが起こった時代と言えます」と、吹春さん。ブームの火付け役になったのが、昭和63年(1988)に発刊された図鑑『日本のきのこ』(山と溪谷社/刊)だ。
「それまでのキノコ図鑑には、味噌汁、鍋などの純和風の食べ方しか載っていませんでした。『日本のきのこ』には洋風も含め、現代的な天然キノコの食べ方が紹介された点が、画期的だったのです」
キノコ好きのバイブルとなったこの図鑑の最大の特徴は、ページをめくるたびに目に飛び込んでくる美しい写真だ。キノコの写真集としても楽しめる構成になっている。
「主な写真は、編集に関わった伊沢正名さんの撮影です。発生環境を鮮明に写し込んだ大判の美しいキノコ写真は、世界に類をみないオリジナルな作風で読者に衝撃を与え、アマチュアの“キノコカメラマン”が増えたといわれています」
楽しみ方が多様化した
2000年以降になると、インターネットやSNSの発達が、キノコの楽しみ方を大きく変えた。ネット上にキノコの写真や、採集の記録をUPする人も多くなった。近年は、美少女キャラクターを描く愛好家の中に、“キノコを擬人化したイラスト”を発表している人もいる。
「キノコは食べられて、かわいらしく、知れば知るほど奥が深い。謎が多くて不思議ですし、知っている人があまりいない。趣味の差別化という点でも魅力的だと思います」と、吹春さんが言う。
ここ数年、吹春さんが実施しているキノコの観察会に、異変が起こっているという。なんと、若い世代の“キノコ女子”が増えているというのだ。今までどちらかといえば、男性の趣味というイメージだったキノコ。女性から市民権を得る日も、近いのかもしれない!?

屋外で味わうキノコ料理の定番といえば、キノコ鍋だろう。自分で採集したキノコをその場で味わうのは最高だ。
監修・写真/吹春俊光(千葉県立中央博物館)
構成/山内貴範