軽キャンピングカーで、地球半周中です。
稚内からロシアへ渡り、モンゴルで道草してから中央アジアへ。イラン、ヨーロッパと抜けてアフリカに上陸しました。
南アフリカの喜望峰を目指していますが、マラリアや雨期の洪水、複雑怪奇なVISA取り、強盗まがいの賄賂警察官にイスラム過激派。車中泊もままならない西アフリカです。
オススメしない西アフリカの真骨頂
2度と行きたくないという意味でマイ秘境に選んだ、ナイジェリア。
無駄に疲れる国です。
イスラム過激派や反政府ゲリラを取り締まるべき検問が、官民一体の詐欺集団として待ち伏せするカツアゲ街道に胃がしくしくと痛み、私服警官が5寸釘を打ち付けた特大ゲバ棒で通せんぼしたりするので、どこに誰が隠れているかわかったものじゃない、ストレスフルな緊張感。
キャンピングも車中泊も楽しめませんでしたが、軽自動車で雨季のジャングルを走ってしまう超本格的なアウトドア。
泣きました。
運を天に任せたジャングル探検
ベナンとの国境以外は、1ミリも幹線道路を外れまいと必死に地図アプリに頼っていましたが、現場は甘くありませんでした。
洪水です。幹線道路が水没。
婦人警官の説明する迂回路は、
「あの車に付いていけばいいさ」
ジャングルでした。
お天道様すら拝めない密林に、象のお散歩コースみたいなどろっどろの道です。あ、こりゃあかん、引き返そう。と思ったのですが、三途の川を前にしても撤退する勇気がない我が家。無謀でした。スノータイヤがぎりぎりスタックしない程度に頑張ってくれましたが、深くてゆるい轍にはまり、クリーム状の泥にお尻フリフリ。ハンドルを切りすぎてひっくり返りそうになること数回。
池?ってくらいに巨大な水たまりに突っ込むたびに、
「神様っ、なんとかして!」
運を天に任せたジャングル探検。緊張の連続で吐きそうです。
穴を埋める仕草で通行料をせびる商売
そろそろジャングルの出口も近いのではないかと、何の根拠もないのに希望を持ち始めたころ、平成最大の難関が立ちはだかります。
例によって水たまりですが、ここだけ妙に深そうなのです。
コーヒー牛乳のミルクが少ない焦げ茶色で、ワニやカバがいても驚けないロケーション。
道幅が狭くて右にも左にも逃げられず、村人が数人、スコップを肩に抱えて立っているのが不気味です。
そういえばナイジェリアでは雨季になると、わざわざ道に穴を掘って水たまりにし、穴を埋める仕草で通行料をせびる商売があると聞いたことがありますが、あんたたちが穴を掘ったの?
水をなみなみと蓄えた、軽自動車が腰まで浸かりそうな水たまり。
これまでの苦労を考えるといよいよ撤退する勇気はないわけです。
断末魔をあげながらもんどりを打つ軽自動車
突っ込みました。
少しでもアクセルを緩めるとマフラーから水が入ってエンジンが死ぬので、全速前進!
いきなり車が前のめりに傾き、十戒のように水が割れ、屋根より高く上がった水しぶきで前が見えません。岩にぶつかったのか足元から突き上げるような衝撃を喰らい、断末魔をあげながらもんどりを打つ軽自動車と絶叫をあげるボクら。エンジンの唸り声が弱々しくなったころ、なんとか陸に上がりました。
「水がかかったじゃないかっ!」
「洗濯代を出せ!」
ものすごい剣幕で怒鳴る村人。
確かに濡れてはいるけれど、そんなところに立ってるあんたたちが悪い!とは言えないわけで、叱られ、罵倒され、小銭をむしり盗られました。
鬼です、彼ら。
2度とジャングルは走れない
ルビコン川を渡りきった軽キャンパーの名誉の負傷は、ボディ底に張ったアルミニウムパネルが完全にめくれたこと。
マフラーに水が入ったのか、エヘン虫が咳き込んだようなエンジン音がして、心なしか元気がありません。ジャングルを抜けても、幹線道路はあちこちで冠水中。想像はしていましたが、アフリカの雨季は想像以上です。洪水から逃げるために、船での南下を考えます。
【ナイジェリア・ドライブ情報】
ビザ:55,000CFA(16,666円)+手数料20,000CFA(6,058円)
車両保険:BROWN CARDと呼ばれる西アフリカ13カ国共通タイプ(6ヶ月間)7,499円(41,004CFA)。セネガルのAXAで取得
検問:恫喝系賄賂
キャンプ場情報:iOverlander
次週は、カメルーンです。船を見つけられなくて。
石澤義裕・祐子
住みやすい国をリサーチしようという話から2005年から世界一周をスタート。アメリカ、カナダなどをスクーターで旅行し、オーストラリアをキャンピングカーで回ったのをきっかけに2015年の夏から軽キャンピングカーで旅を始めた。