ここまでのエリアは、携帯電話の電波がまったく入らない場所でした。
なんの情報も得られずただただ歩き続けていた私ですが、ヨミテ国立公園に入るとデイハイカーも増え、新たな情報が耳に入ってくるようになりました。
その中で一番私を不安にさせたのは、JMTルート付近で新たな火事が発生したという情報です。
体が弱っているだけに、ちょっとしたマイナス情報で、私の不安は大きく膨らんでいくのでした。
4日目の朝、予定より随分早くトゥオルミーメドーに到着。そしてすぐにストアに直行。
とりあえずハンバーガーを注文。食べたいという欲求よりも、食べないと体重が減りすぎ危険だとカラダが訴えていたからです。
バックパックには用意した6日分の食料が半分以上が残っていたのです。この時ばかりは、いつも楽しみにしているジュースもアイスクリームですら食べたいとも思いませんでした。
何とか食事を流し込んだ私は、大きな選択を迫られました。
ひとつは大きく迂回する別のトレイルを通ってJMTに合流するルート。もうひとつは、スキップして途中からJMTに合流するルートです。
今回取得した許可書は、JMTルートのトゥオルミー・メドーから、ヨセミテ国立公園出入口に当たる、ドノビューパスを通過することができないからです。スキップ先までのバスは1日に1本。もうまもなく、出発する時間です。迂回路を行くと、JMTより随分と長い距離を歩く事になり、予定に遅れが生じる可能性が出てきます。
食欲もなく寒さにもやられている私の体の状況が、余計に決断を迷わせました。確実なトレイル踏破を優先に考えスキップするか、多少の予定の遅れを覚悟し迂回路をギリギリの予定で歩くか。
この決断が、この先のトレイルを大きく左右するのかもしれない。まさに決断の時だったのです。
つづく
Profile
斉藤正史 山形県在住
LONG TRAIL HIKER
NPO法人山形ロングトレイル理事
トレイルカルチャー普及のため国内外のトレイルを歩き、山形にトレイルを作る活動を行う。
ブログ http://longtrailhikermasa.blog.fc2.com/
山形ロングトレイル https://www.facebook.com/yamagatalongtrail