9月11日から、福岡天神の「イムズ」の30周年特別企画として、月光写真家・石川賢治さんが7年にわたって世界の聖なる場所を巡って、月の光で映し出された雄大な空間を収めた月光写真展「宙の月光浴」が開催されます。
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「塩の大地」ボリビア/ウユニ塩湖
石川賢治さんは、月の光だけで、30年以上、写真を撮り続けてきた月光写真家。太陽の46万5千分の1の月の光で撮影できるタイミングは、満月とその前後の2日間。曇りや雨の日を除く1か月に3日間の撮影で、使える写真はわずかに数カット。なぜ、石川さんはこんなに難易度の高い月光写真に挑むのでしょう?
「それは、人がいない月の光に照らされた原野にいると、僕の造語で言えば、『地上の宇宙実感』というのかな、『ああ、自分の目の前にも宇宙が広がっていて、自分は星や銀河や天体とつながっているんだ』と感じることができるからなんです」と、石川さん。
「人工的な光が全くない場所で、太陽が沈むと、青空の天井がなくなって、漆黒の空に星々が輝き、月の光に照らされている自分の目の前の地上は星空にそのまま続いている、と実感できるんです。それは、とても不思議で心地いい感覚。僕は、その感覚をなんとか写真で表現したくて、月の光で撮影しているんです」
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「月光のベンケイソウ」サイパン
今回の写真展が開催される福岡イムズの会場は、真っ暗な空間に設えられます。そこにスポットライトで照らされた、モニュメントバレー、屋久島、ヒマラヤ山脈など、古来からの聖地の光景が浮かび上がり、さらに石川さんの撮影に同行したサウンドクリエーター・中田悟さんが録音した、水の音、虫の音などの自然音が、漆黒の温かい空間を充たし、見る人を、石川さんの言う「宇宙実感」に誘います。
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「星とイナズマ」アメリカ/モニュメントバレー
中でも圧巻は、月の光を湛えた樹齢7200年とも言われる屋久島の巨樹・縄文杉の実物大プリント。縦横6メートルを超える月光写真が、考える前にダイレクトに石川さんの感覚を伝えてきます。他にも、暗闇にほの青く浮かび上がるウユニ塩湖、マダガスカルの湖に映るバオバブの写真などが、私たちを普段の生活の時間とはちょっと違ったゆったりした感覚に誘ってくれます。
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「湖に映るバオバブ」マダガスカル」/ムルンダバ
石川さんは、古来の聖なる場所を空間的な広がりで捉えるだけでなく、月の美しさを詩歌や歌で愛でた中国の黄山や日本の銀閣寺など、月と密接な文化の時間を自ら追体験して撮影を続けてきました。人が月を愛でる感性は不変だ、ということも伝わってきますが、何よりも、7年間にわたって世界中の聖なる場所に赴いて、わずか数カットの写真を積み重ねてきた石川さんの「月光に映される空間への憧れ」が胸に迫ってきます。その石川さんの軌跡を展示し、石川さんのスピリットが満ちる空間は、この写真展のサブタイトルでもある「space of spirit」そのものとも感じられます。
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「イグアスの滝と虹」ブラジル・アルゼンチン/イグアスの滝
月光を求めて世界の聖地を巡る旅が一段した2016年、石川さんは故郷の福岡に戻り、現在は糸島半島の古民家に暮らしながら、月光写真を撮り続けています。生まれ故郷で月光写真を撮ることについて、石川さんは、
「今の福岡の住まいは、人工的な灯りが全くない環境で、思う存分、月光写真が撮れるんです。これまでは、標高5300メートルのヒマラヤから、水深4メートルのサイパンの海底まで、月光に照らされた地球規模の風景を撮らせていただいていましたが、これからは『宇宙実感』を持ちながら、身の回りを撮影して、宇宙の広がりを感じさせるような月光写真を創造していきたいと思っています。そんなことを言うと、また、ドンキホーテと呼ばれそうですが(笑)」
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「岬と波」サイパン
これまで全国4か所を巡回してきた「宙の月光浴」展。今回、石川さんの地元、福岡のイムズホールで開催される「宙の月光浴」展には、過去の代表作も合わせて展示されます。石川氏の月光写真空間が作り出す、温かな宇宙にすっぽり包まれるような感覚を体験しながら、古来から愛されてきた月光の光景を愛でるのも、日本人が世界に誇れる文化かもしれません。ちょうど会期中には中秋の名月も。一緒に月光浴をしたい方を誘って、訪れてみたい写真展です。
<石川賢治氏プロフィール>
石川賢治/いしかわ けんじ 1945 年福岡市生まれ。’67 年日本大学芸術学部写真学 科卒業。ライトパブリシティ入社。’76 年よりフリーランス・フォトグラファーとして活動を 始め、CF・スチールを数多く手掛ける。’84 年秋より月光写真に取り組み、初の写真集『月 光浴』(’90 年小学館)が一大センセーショナルを巻き起こす。その後の写真集に『神の降り た夜/新月光浴』(’93 年集英社)、『大月光浴』(’96 年小学館)、『満月の花』(’98 年小学館)、 『月光の屋久島』(2000 年新潮社)、『地球月光浴』(’01 年新潮社)、『京都月光浴』(’03 年新 潮社)、『天地水月光浴』(’06 年新潮社)、『宙の月光浴 』(’12 年小学館)、『月光浴 青い星』 (‘16 小学館)、DVD『月光浴 Moonlight Shower』(’06 年 CCC)を発表。
公式 HP http://gekkouyoku.com Twitter http://twitter.com/moon_kenji
<開催概要>
● タイトル イムズ30周年特別企画
石川賢治月光写真展 宙の月光浴 ~space of spirit~
● 会期 2019年9月11日(水)~9月25日(水)15日間
● 開場時間 10:00~20:00 ※最終日は 19 時閉場 (いずれも入場は閉場の 30 分前まで)
● 会場 天神 イムズ9階 イムズホール
〒810-0001 福岡市中央区天神 1-7-11 092-733-2001(代表)
● 主催 イムズ
● 後援 福岡市、(公益)福岡市文化芸術振興財団、 九州電力株式会社福岡支社、FM FUKUOKA
● 協力 富士フイルムイメージングシステムズ(株)
● 入場料(税込) 一般 800 円(600 円)/高・大生 600 円(500 円)/中学生以下無料
( )内は前売り、10 名様以上の団体割引料金 ※前売り券はチケットぴあ(P コード 769-790)で9月8日(日)までお求めいただけます。
● イベント 9/14日(土)・15(日)・21(土)・22(日) 写真展会場内にて
☆ギャラリートーク・・各日 15:00~ ☆サイン会・・・・・・各日 16:30~
※サイン会は当日イムズホールにて写真集、DVD をご購入頂いたお客様 先着50名様。
写真/石川賢治事務所
構成/尾崎 靖(no name project)