「働き方改革」の波に乗り、好きな環境で仕事をする人が増加中。自然大好きモバイルワーク人間の自由な仕事空間を紹介します。今回は、働き方研究家・西村佳哲さんです。
光ファイバー網を完備した田舎町
徳島県神山町は、人口5000人余り。古民家が立ち並び、四方を山に囲まれた田舎町だ。しかし、その、のほほんとした風景の裏には隠された顔がある。
光ファイバー網を完備しIT環境が整えられ、外部からパン職人やカフェ経営者などが移住。さらにITやデザインなど、働く場所を選ばない企業のサテライトオフィス誘致へと発展し、現在では20社もの企業が参加している。
12年前に町のNPO法人のHPづくりを手がけたのを契機に、そんな神山町の変化を目の当たりにしてきたのが、西村佳哲さんさんだ。
「働くことに何を求めるのか? 意味や価値の見出し方が多様化している。たとえば家まで帰る途中がどんな世界であってほしいか。都市的なほうがいいっていう人もいるし、田園風景がいいって人もいる。多様化したぶん、自分なりの世界観を表現して社会とつながりたい、っていう人が増えた気がする」
それによって、会社も変わってきたのだと続ける。
「高度経済成長期だったら働けば働くほど稼ぎが上がることもあったけど、いまは一部の企業だけ。じゃあ、給料以外のインセンティブをどうやって作るか考えると、働く場所を選べる、という選択肢がある。仕事に自分を合わせるのではなく、自分に仕事を合わせるのが、これからの働き方なんじゃないかな」
仕事も生活も遊びも境目がない。あり方を切り替えずに済むから常に自然体でいられるのが、ローカル主義の魅力なのだ。
西村さんのある日の働き方
朝食を取りながら打ち合わせ
農家の友人と立ち話
森の中のWi-Fiスポットでお仕事
コワーキングスペースも有効活用
神山町の働き方を体験できる「滞在型宿泊施設」
2015年にオープンした「WEEK神山」。神山町での働き方を体験できる、滞在型宿泊施設で、ワークショップや映画上映会も開催している。
西村さんのローカル主義3か条
- 地元の人と自然体で関わる
- オンオフの区別はない
- 家と仕事場の間を大切にする
働き方研究家・西村佳哲さん
1964年東京生まれ。デザイン会社「リビングワールド」代表でもある。建築計画やまちづくり、組織開発などの仕事が中心。著書は『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)など。
※構成/大石裕美 撮影/小倉雄一郎