キャンプやハイキングなど、外遊びを楽しむうえで、これからも地球には気持ちよくあってほしいもの。そのためにも“エシカル生活”を始めてみませんか? 「エシカル」とは、自然と人と動物がちょうどよい塩梅で共存できる世界を目指すこと。日本人が古くから持ってきた「おかげさま」「足るを知る」といった考え方を実践することが、“エシカル生活”につながると考えられています。ここでは、日々に楽しみながら取り入れられる、エシカルな物事を紹介していきます!
第3回:存在そのものがエシカルな素材『TAKEFU(竹布)』
さて、冒頭に登場したふわふわ、一体なんだかわかりますか? これは、竹からできた繊維の原綿。手にのせると、のせたところがじんわりポカポカしてきます。というのも、『TAKEFU(竹布)』は天然の温熱性と保湿性をもつため、触れていると体温が伝わり、温かくなるのだとか。今回は、この繊維を拡める『ナファ生活研究所』代表の相田雅彦さんに、お話を伺いました。
身近な天然素材の秘めた力
お邪魔したのは、JR代々木駅から歩いて3分ほど。『代々木Village』の2Fにある『TAKEFU(竹布)』ストア『eau(オー)』。店内には、肌着や靴下を始め、マスク、腹巻き、ニットのトップスやストール、さらにふきんやタオルなど、さまざまな製品が並びます。
ーーこんにちは。すごい、いろいろなものがあって、何から手に取るか迷ってしまいますね。
「たくさんあるでしょう(笑)。最初、ボディタオルから始まったんですけれど、使ってくださる方々の要望に応えていくうちに、こんなにさまざまなものができました。今後は、シャツやズボンなど、上に着るもののラインナップも増やしていきたいと思っているんですけど」
ーーそうなんですね。そもそも、なぜ竹に注目されたんですか?
「1999年までさかのぼります。40代始めのある日、竹から繊維を創ることを発想しました。そこで、大型書店や国会図書館へ調べに行っても、詳しく書いている文献が見つからない。つまり、誰も竹に注目していなかったんですね」
ーー確かに、竹ってそのあたりに生えていて、わざわざ意識したことがないような。
「1999年から2001年の2年間、竹の繊維の開発を行い、食品分析センターに抗菌テストをお願いしたんです。そうしたら2001年の10月2日に、実験した4万個の菌がすべて死滅したと、担当してくれた検査官が驚いて電話をかけてきて。天然繊維で菌が死滅するとは、当時、誰も考えもしなかったこと。これを聞いて私は、医療の分野で活かせると確信したんです」
ーー医療?
「抗菌性が高いということは、傷口などに直接触れるガーゼに向いてるんじゃないかと。今、医療現場で使われているガーゼは綿です。調べると、綿の栽培には、全世界の農薬使用量の多くがその栽培に使われているんですって。とてもショッキングな話でしょう。
一方で竹は、肥料も農薬もいりません。種をまかずとも根があれば、毎年発芽して2ヶ月で伸び、2〜3年のものを原料として使用します。しっかり管理して、成木だけ使えば資源が減ることもないんです。管理ができていないと根がはびこるから『竹害だ』と言う人もいます。でも、上手に活用してやれば、こんなに素晴らしい資源はない」
ーー存在そのものがエシカルですね。
「はい。身近で、とてもタフな植物。今は、全世界に供給できるだけの竹林が育っています。ただ、今後、医療現場にしっかり普及させることを考えて、12年前から育て始めたんですが、たくましく育っていますよ。2020年は『TAKEFU(竹布)』が20年の準備を終えて、いよいよ本番に入ります」
まだまだある、竹繊維の魅力
ーーしかし、ガーゼに良いとおっしゃる意味が、触れているとよくわかります。肌に、とってもやさしい。
「そもそも繊維の形状が、肌に刺激が少ないんです。ウールとかシルクとか、他にも良い天然繊維はあるけど、拡大して見ると、ウールは毛を刈るから尖っていて、シルクも角がある。だから、肌が敏感な方の中には『チクチクする』とおっしゃる方もいます。でも、『TAKEFU(竹布)』の繊維は角がなくて、しっとりなめらか。摩擦も少なく、静電気も起きづらいんです。肌着やはらまき、靴下などで、素肌に纒うと気持ちいいですよ」
ーー確かに。このはらまきに触れてると、まるっと包まれたくなります。
「ははは。寝るときにしてあげると、朝起きた時に、お腹が蒸したお芋みたいになるんです(笑)」
ーーお芋、いいですね。ちなみに、天然の抗菌力があるということは、夏場や、山やスポーツなどでアクティブに過ごす日も、においにくそうですね。
「はい。消臭性も高いです。これは私の体験談なんだけど、真夏に『TAKEFU(竹布)』の肌着を着て、その上から綿のシャツを着ていたら、綿のシャツは汗くさいのに肌着はにおわないという現象が起きて(笑)」
ーーああ! だから、もっと着るものをつくりたいと。
「そう。少しずつ企画していきたいですね」
ーー『TAKEFU(竹布)』の製品を愛用されている方は、肌が敏感だったり赤ちゃんのいる方が多いんですか?
「今は、そうですね。そこから医療現場に拡がれば、もっと多くの方々に竹の魅力が伝わるはず。でもね、そもそも私は、医療で『TAKEFU(竹布)』が活躍しない世の中になればいいと思うんですよ」
ーーなぜですか?
「それはつまり、病気やケガのない世界です。さっきお見せしたはらまきも、日頃から内臓を温めることで、病気を防げるかもしれない。あとは、お腹が冷えやすいと感じている人が、はらまきでお腹を温めることで元気になって、病院いらずになるかもしれない。私が最終的に描きたいのは、そういう未来なんです」
ーーなるほど。根本からよりよくするきっかけに、『TAKEFU(竹布)』がなることを祈っています。今日はありがとうございました。
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心地よいから触れていたくなる。そんな『TAKEFU(竹布)』のやさしさが、医療の世界へーー。相田さんから壮大なお話を伺い、驚くとともに、いつか「『TAKEFU(竹布)』がいらない」となったときも、結局は「心地よいから使おう」というふうになるんじゃないだろうか。いや、きっとそうだろうと、本記事を担当した記者は感じました。
『ナファ生活研究所』代表・相田雅彦さん
長崎県大村市出身。美術ライターを経て、ものづくりの世界へ。おもちゃや食器、繊維関係など、さまざまなものづくりののち、竹繊維を開発。専念することに。2001年より『TAKEFU(竹布)』を始め、2018年に医療ガーゼとして登録。2020年より、本格始動予定。
<『Shop of TAKEFU eau』概要>
住所:東京都渋谷区代々木1-28-9 代々木VILLAGE内CONTAINER8(2F)
営業時間:11:00~20:00
定休日:不定休
Tel:03-5352-5055
WEB:http://www.nafa-take.com/shop.html