スペシャライズドが世界で初めて量産型のマウンテンバイクを発売
「山を自転車で楽しむ」文化をもたらした
「自転車で山を走る」ことがアウトドアスポーツのひとつとして認められるようになったのは、ここ30数年のことだ。1970年代まで、自転車を持って山に入るのはヒッピーのみであり、一般のアウトドア好きは「山で何だか楽しそうなことをしている」程度に眺めているものだった。
そこに目を付けたのが、アメリカ・カリフォルニア州に本社を置く総合サイクリングブランド、スペシャライズドである。
1981年に世界で初めて量産型のマウンテンバイク『スタンプジャンパー』を発売すると、瞬く間に完売となる大ヒットを記録。「新しい自転車の文化、ライフスタイルを世に広めた」功績により、『スタンプジャンパー』は今でも、スミソニアン博物館(アメリカ・ワシントンD.C.)の永久所蔵品として、展示されている。
マウンテンバイクには他のスポーツにはないどのような面白さがあるのだろう。
「バイクには大きく、ロードバイクとマウンテンバイクの2種類があります。舗装路を走り、ペダリングの軽快さ、風を切って走る疾走感を得られるのがロードバイク。自走で1日50㎞から100㎞といった長距離移動ができるのも大きな魅力です。何といっても、『家から一歩踏み出したらそこがフィールドになる』ところが、人気を博す最大の理由でしょう。
一方、マウンテンバイクは、山や森の中などの未舗装路を走る自転車。障害物競走のように、木や枝、柔らかい土や砂利などをクリアしながら走る面白さがあります。足をつかずに山を下りる、ブレーキをかけずにカーブを曲がるなど、バイクと自分の体をコントロールしながら技術を上げていくことに喜びがあります。自分の足では叶わないスピードで山を駆け抜ける爽快さは、マウンテンバイクの最大の魅力。走る場所を選ぶため、日常的に楽しめる人は少ないかもしれませんが、一度山に踏み入れて全身で感じる自然の気持ちよさは何にも代えがたいものです」(溝口さん)