シェアといっても、最低限のプライバシーは守る。トイレ、キッチンは各戸に設置。一方で、居住者全員で共有する調理場や浴室、リビングを備えた「コモンハウス」を設けた。
「外部とのつながりや、関係性を保とうと、道路から一番近い位置にコモンハウスを配置しました。昔ながらの縁側のような位置づけです」
家の構造は、できる限り環境への負担を減らす工法として、日本の伝統的な家のつくり方に着目。コモンハウスの屋根は手焼きの瓦。壁は昔ながらの土壁。これら素材の力を利用し、夏は涼しく冬は暖かい家を実現させた。
「壁の竹小舞や土壁塗りなど、施工でも居住者全員が力を合わせ参加しました。もちろん暮らし始めると多少の対立もあります。ですが、それを乗り越えて、お互い様の精神で手を差し伸べ合いながら暮らすことがとても心地よい。特に震災以降、確信しました」
人と人とが、ほどよい距離で支え合いながら生きる、ゆるい暮らし。藤野の長屋は、自然豊かな里山で、今日も新しいシェアスタイルのカタチを、発進し続けている。
所在地:神奈川県相模原市
築年:2011年
平米数:378.17㎡
間取り:2階建て、4棟+コモンハウス
世帯数:4世帯
構成/松浦裕子 撮影/小倉雄一郎