キャンプ素人母娘が、10/5、6に行われたBE-PAL フォレストキャンプに初参戦。
フォレストキャンプでは、クッキングや工作、自然観察などなど、数々のワークショップが開催さており、私たちは山岳写真家でブッシュクラフトの達人・荒井裕介先生の「こども焚き火教室」にエントリーさせていただきました。
せっかく山のプロに習うならば、自分じゃ教えられないことを、という親心で選んだプログラムでしたが、直接指導を受けたこどもだけじゃなく、見守りに徹した親の私も、”火の起こし方”に留まらず、多くを学んだ大充実の体験となりました!
ワークショップの始まりは、焚き木探しから。
概要の説明を受けたあと、早速先生と一緒に近くの雑木林に焚き木探しへ。探索しながら、いろんな解説をしてくれます。
「焚き火には広葉樹じゃなくて、針葉樹の枝を使うんだよ。針葉樹の方が油分が沢山入っていて、燃えやすいからね」
広葉樹に針葉樹。学校の理科と社会の授業に出てきたキーワードに思わぬところで遭遇。授業では習わなかった知識を得て、ちょっと嬉しそう。子供の学びって、こんな風に実地体験を通して体系化されていくのですね。
達人から自然の知識を授かりながら、焚き付け用の細枝と、太めの焚き木を拾い集めます。
焚き火の道具はこの5つ。防災グッズとしても役立ちます!
「こども焚き火教室」で使った道具は、
1. 焚き火台
2. ファイヤースターター
3. ビクトリノックスのマルチツール(十徳ナイフ)
4. 着火剤
5. 自分で拾った木の枝
見るのも聞くのも初めてでしたが、2. のファイヤースターターの正体は「マグネシウムの棒」。これを付属の鉄板で勢いよくしごくと摩擦熱で火花が飛び出す、というもの。つまり、現代版の火打ち石です。ライターやマッチを使えば簡単だけど、燃料がなくなったり水に濡れたら使えなくなるそれらと違って、半永久的に、そして水に濡れても乾かせば使えるという点で災害にも強い。100円強で手に入るし、コンパクトなので、防災袋に入れておくと良さそうです。
ただ、マグネシウムスティックをしごくために添付されている鉄板は、子供の力ではイマイチ火花が起きにくい。そこでブッシュクラフトの達人が伝授してくれた裏技が、”3. ビクトリノックスのマルチツールの缶切りを使う”でした。強度があるので力が込めやすく、マグネシウムスティックとの相性がいいそう。
4. の着火剤とは、飛んだ火花を着火させる燃えやすい材料のこと。焚き火教室では、荒井先生オリジナルの蒲の穂綿を分けてもらいました。身近なもので代用するとしたら、DIYに使う麻紐をほぐして使うといいそうです。
このほか、安全のためにあるといいのが革手袋。軍手でもOK。
いよいよ火起こし。できるはずが……、着火に大苦戦!
焚き火は焚き木の組み方が肝心。
まず、土台となる太めの焚き木を2本、焚火台の上にクロスさせて置きます。焚き付け用の細い小枝は、あらかじめ15cm程度におっておき、焚き火台の奥側にひとまとめにして置いておく。荒井先生オリジナルの着火剤、蒲の穂綿を分けてもらい、焚き木のクロスの手前に設置したら準備完了。いよいよファイヤースターターを使って火起こしです!
実はウチの娘さん、当初、ちょっと舐めていました。野外調理経験から、カマドでの火起こしは小1でマスターしていたので、「火起こしならできるし」みたいな余裕顔。
でも今回はマッチもチャッカマンもなし。道具は初めて扱うファイヤースターターとマルチツール。どこをどう持っていいのかもわかりません。先生に二人羽織のように手に手を持って教えてもらい、ようやく使い方を理解。
理解はしたけど、やっぱりうまくできない。その表情からすっかり余裕は消え失せ、イライラが顔に滲んできます。自分よりも小さな子が着火成功させたのを横目に見ては、焦り顔。
めげずに挑戦し続けるうちにコツがつかめたようで、そのうち火花が飛ぶようになり、とうとう着火成功! 誇らしげな表情を浮かべながら、次のステップへ。
着火剤に灯った小さな炎の上に、焚き付け用の小枝の束を被せて熱をこもらせます。
「火がついた瞬間にフーフー吹く人がいるけど、それは間違いだからね。焚き火っていうのは、木が燃えるんじゃなくて、木から出る燃焼ガスが燃えるから火がつくんだよ。」
火がついたら、太い焚き木の手前を握って持ち上げて空気を含ませて、火の回りをよくしていきます。
「最初に太くて長い枝をバッテンにして置いたでしょ。その枝の手前端を握って、バッテンの部分を持ち上げることで、熱い火を触らずに火をコントロールすることができるんだよ」
達人の教えをそのまま体験として会得でき、こどもたちの目が自信と達成感に輝きます。
着火できた娘もさぞやドヤ顔しているだろうと思ったら、またも渋い顔。
不意の風に、せっかく灯した炎をかき消されておりました。
焼べた焚き木の量が足りなかったようです。今度は十分に焚き木を用意してから、また一から火起こしに励みます。
こども自身による焚き火が教えてくれたもの
2度目のトライは準備も万端。習ったステップを黙々と着実にこなし、ちょっとの風では消えない、たくましい炎を上げることができました。そしてようやくドヤ顔。一緒に参加した子どもたちも全員成功させていました。
焚き火台の状況変化とともに、くるくる変わる娘の表情。そんな我が子の様子を見て、こんなトライアンドエラーの経験が、最後までやり抜く気概を育むんだなぁ、としみじみ。
それにしても焚き火ってまるで人生の教訓のよう。
成功した!と思って油断したら、不意の出来事に足元をすくわれてしまったり、準備が不十分だと急場の対応ができなかったり、失敗を教訓に再挑戦したら着実に成功できたり。
娘にとっても、有事の助けともなるミッションを無事達成できたことが、自信につながった様子。「家の近所で針葉樹が生えている場所を確認しておくね」と頼もしいのです。
構成/林 公美子