「なんか気持ちいい」空間を目指す伊勢市のゲストハウス「風見荘」
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    2019.11.09

    「なんか気持ちいい」空間を目指す伊勢市のゲストハウス「風見荘」

    私が書きました!
    エディター
    松本麻美
    普段は社会課題や教育、地方ぐらし、アートなどをテーマとした媒体の製作に従事。ビーパルではライフスタイル系の記事を執筆しています。


    旅行をするときに一番知りたいことは、清潔さと駅からの近さ。さらに、滞在してよかったと個人的に思うのは、他の宿泊者とも交流できつつ自分の時間も持てる、というちょうどよい距離感があるゲストハウス。今回滞在した三重県伊勢市のゲストハウス「風見荘」は、そのどれも備えた、居心地のよいゲストハウスでした。

    12角形の特徴的な建物

    風見荘は、観光にはもってこいの場所にあります。なにせ、JRと近畿日本鉄道「伊勢市」駅からは徒歩2分。内宮と外宮があり、お参りするならこちらから、と言われている伊勢神宮の外宮からは徒歩5分なので、伊勢市駅に降り立ったらまず風見荘で荷物を預けて、そのあとはゆっくり観光……ということもできるのです。(ただしチェックインは16時〜。時間前に預かってもらう場合は事前の相談が必要)

    風見荘は、「吹上」という交差点にある

    その建物は12角形という特徴的な形をしているので、簡単に見つけられます。1 階には受付と共有スペースがあり、靴を脱いで2階へ上がると、キッチンとシャワールーム、トイレ、ベッドルームなど宿泊用スペースとなっています。2018年秋にできあがったばかりというこの建物は、壁や床など、すべてに天然杉やヒノキなどの木材が張ってあり、裸足で歩き回る心地よさを感じます。

    2階に上がる階段の前で靴を脱ぎ、裸足に。階段は螺旋を描いている

    それにしても、“12角形の建物 “というのはとても不思議。オーナーの丸井寛道さんは、なぜこんな形にしたのでしょう?

    「ふとしたときにアイデアが降りてきました。実はこの建物は2代目で、ゲストハウスの風見荘自体は2011年12月から開業しているんです。1代目は同じ土地に建っていて、1年弱お休みして建て替えたんです。1代目のときに『メンテナンスや空間づくりをするなら、四角よりももっと良い建物の形があるんじゃないか』と思ったことがありました。2代目に建て替えるときに、じゃあどんな形が良いか考えて、円形に近づけたら良いのでは、と思ったんです」

    チェックインのお客さんに、宿の利用について説明する丸井さん

    思えば、四角い空間に住んでいるのは人間だけだし、昔の人も円形の建物に住んでいたではないか! と気づいたそう。実際にこうして活用してみると、「空気がきちんと対流するからエアコンの効率もよく、ゴミやホコリが隅にたまらないから掃除もしやすい。良いことだらけです」と丸井さん。

    「それから、心持ちもなんだか気持ちよくて、1代目とはまた違いますよ」

    6年間運営してからの建て替え

    そもそも、この風見荘がスタートしたのも「アイデアが降ってきた」からなのだとか。ひらめいたのは、2011年の1月。そのころ丸井さんは、四日市市で音楽活動とサラリーマンをやっていました。

    「その頃は、音楽活動もあまりうまくいかず、かと言って他にやりたいことも見つけられず、逆にやりたくないことばかりを考えていました」

    自分の責任ではないことで謝らなければならない、意味もなさそうなことをやらなければいけない、と悶々としていたところに降ってきた「伊勢でゲストハウスをやったら……」というアイデア。それを実現させるため、丸井さんは、建物を探しながら、名古屋市内のゲストハウスで働いて改修工事の手伝いをして、備品などを手配、と怒涛の1年間を送りました。

    ゲストハウス周辺にはおいしい飲食店がたくさんある

    そうして、12月に開業。運営に試行錯誤しながら整えていき、落ち着いた頃に伊勢神宮の式年遷宮が行われました。

    「前回の式年遷宮は、2013年。20年に1回行われるものなので、とてもタイミングが良かったと思います。以前、伊勢は外国人観光客は少なかったのですが、この遷宮を機に、外国からのお客さんも多く来てくれるようになりました」

    ちなみに、以前の建物は木造の鉄骨の建物がつながった、不思議な建物です。外壁はエメラルドグリーンでものが多く「なかなかエキセントリックだったと思いますよ」。全体は4階建で泊まれるお客さんも多かったものの、建物の築年数は80年。雨漏りなどもひどく、自分でも修繕をしながら6年間運営していきました。ところがとうとう、転機が訪れました。なんと、耐震基準に満たないことがわかったのです。

    (写真提供:風見荘)1代目の外観はなんだかパワフル!

    それまでだましだまし建物を活用していたところもあり、耐震工事をやるのであれば新しく建ててしまおう。それならば、自分が年をとって、例えば70歳になってもできるくらいの規模にしよう、と考えてできあがったのが、現在の建物です。

    シャンとする場所としてのゲストハウスに

    この場所が目指すのは、「気持ち良いと感じると同時に、気持ちがシャンとするところにする」こと。他の宿泊者と交流するのもいいけれど、それよりも、自分の心身を整えるような、言うなれば、普段の忙しい生活から離れて自分のペースを取り戻す“リトリート”のようなものをイメージしているのです。

    宿泊タイプは、男女共同ドミトリー、女性専用ドミトリー、個室の3つ。2階のドミトリールームでは、ベッドの1つひとつに鏡と木製のセーフティーボックスと壁掛け棚がついていて嬉しい

    丸井さんはそこに行き着くために、いま改めて空間づくりに取り組んでいます。1代目の魅力のひとつだった、ものがたくさんあってにぎやかだった内装は、2代目ではすっかりを影を潜めています。

    キッチンスペースには、無料のコーヒーと紅茶も

    「1代目のときは、ごちゃごちゃしているのが楽しいと言ってくれるお客さんもいましたが、今回はできるだけものを置かないように、と考えています。そこの部分は、お伊勢さんのミニマルさにも影響を受けています。ものが少ないところにいると、自然と気持ちが落ち着いたり、自省していたという経験はありませんか? 様子見しながらですけど、お客さんに『なんか気持ちいい』という感覚を味わってもらえる場所をどうしたらつくれるのか、思案中です」

    (写真提供:風見荘)中庭のヒメシャラの木

    「なんか気持ちいい」と感じてもらうための工夫は、建物の随所にあります。

    まずは、シャワールームに置いてある天然素材のシャンプーとリンスや、知り合いのパン屋が焼いたキッチンで100円で販売している天然酵母のパン(これがまたとても美味しい)。それから、中庭に植わっているヒメシャラの木。この夏には、1階共有スペースにベンチを設置しました。壁に沿うデザインで、すっきりとしつつ、個性的な雰囲気づくりに一役かいます。「次は、受付のとこにバーの飾り窓をつくりたいんですよねぇ」と夢はふくらみます。

    交差点に面して窓がある共有スペースは、日差しが差し込んでとても明るい

    12角形という特殊な形をしていることで、「参考にできる建物が少なくアレンジを考えるのも大変」と丸井さんは言いますが、風見荘のこれからの進化に期待がかかります!

    ◉風見荘(三重県伊勢市のゲストハウス)

    https://www.ise-guesthouse.com/
    JR・近鉄「伊勢市」駅から徒歩2分、伊勢神宮外宮から徒歩5分
    一泊3500円〜

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