「今年もサンマの漁獲量が少ない」というニュースを秋の初めに聞いたまま、サンマをお腹いっぱい食べることもなく、気が付いたら冬になってしまった……。
ここ数年、秋の味覚に少々物足りなさを感じてはいないだろうか。そう、秋の味覚の代表格、さんまが足りないのだ。アジアの国々の乱獲、気候変動による水温の変化で漁場が変わったなどなど……、理由はさまざまあるようだが、日本の近海でさんまが獲れなくなっている。
海洋資源の減少は日本だけのことではない
「和食」が世界無形文化遺産に登録されたように、日本の食文化が、世界に向けて広がるにつれ、皮肉にも、日本人が大好きなクロマグロなどの魚が乱獲により数を減らしているという。
国連食糧農業機関(FAO)によれば、主要な漁業資源のうち、約30%が過剰に獲られ、それに加えて約60%が、過剰漁獲の一歩手前の状態だという。つまり、海洋資源の乱獲は世界的な問題なっている。アジア・太平洋地域に限っては、このままのペースで乱獲状態が続けば、数十年のうちに漁獲可能な魚がいなくなるとまで言われている。
特に日本では、水産資源の枯渇や、地域の水産業の衰退は深刻で、日本周辺海域で獲られる資源対象評価魚種50種84系群のうち、半分近くが危機的状況にあり、さらにそのうちの10%が減少傾向にあるという。加えて、日本近海で獲れる魚のうち、約500種が食用対象となっているといわれるなかで、上記の50種84系群以外は資源情報さえ収集していないという有様だ。
サステナブル・シーフードという認証制度も
今後、2025年には世界の人口が90億人を超えるとされ、貴重なたんぱく源である魚は、「天然」「養殖」ともに重要な資源であるという考えから、未来に対して持続可能な資源管理が行われる必要性が叫ばれている。そこで登場したのが「サステナブル・シーフード」だ。
「サステナブル・シーフード」とは、「天然」「養殖」にかかわらず、科学的根拠に基づいた管理を行って獲られた、あるいは生産された水産物に対し付与される認証。この認証を取得した製品を選ぶことで、乱獲によって獲られた魚や、安全・安心な環境で養殖された魚以外を市場から駆逐し、結果として、海洋資源の持続的な管理・維持につながるというわけだ。
シェフやレストランも海洋保護に向けて立ち上がる
最近、レストランを訪れシェフに会って取材をすると、必ずと言っていいほど、食のサステナブルに関する話題になる。命をいただく仕事をしている料理人はジャンルや国籍を問わず食材やそれを取り巻く環境の未来を憂いている。
そんななか、先日、世界中の厳選された580のホテルとレストランが加盟する協会「ルレ・エ・シャトー」日本支部が海洋保護に向けた行動を開始すると宣言。
海を守ることの重要性を日本政府や一般消費者に伝えるだけでなく、例えば、レストランの食材の仕入れも海洋資源保護に積極的に取り組んでいる業者や漁師から仕入れ、サポートをする。さらには、シェフを筆頭に個々がインフルエンサーとなり、海洋資源保護の重要性を訴えていくという。
料理を提供する側だけでなく、食べる側も意識を変えるだけで資源保護に協力することになる。将来もBBQで海の幸を美味しく味わうために、自分もできることから始めてみようと思っている。
取材・文/はまだふくこ