アフリカゾウにも何度か出会いました。群れで行動していることがほとんどで、ある時は一頭が僕たちの車のすぐそばまで近づいて、トントン、と軽くたしなめるように車のボンネットを鼻で叩いていきました。
キリンは首がとても長く、頭がしょっちゅうあちこちに揺れているので、写真を撮るには結構苦労させられる動物です。でも、すらりとしたその佇まいはとても優美で、アフリカらしさを感じさせます。
出発する日の早朝、最後のゲーム・ドライブで出会えたのは、カバ。小さな池にぷかりと浮かぶその巨体、愛嬌がありますが、実は怒らせると怖い動物なのだそうです。
ここで紹介した他にも、写真ではまともに撮れないほどはるか彼方をライオンの群れが獲物を追って全速力で疾駆している姿を見かけたり、別の場所では、ずっと以前に息絶えた後、ハイエナやジャッカルに肉も骨も食べ尽くされて皮だけになったキリンの亡骸も見かけました。
この場所は管理された動物園などではなく、生きていくための生命のやりとりが日々繰り広げられている自然の中なのだということ。この自然を司る掟の下では、僕たちのような人間はほんのちっぽけで無力な存在でしかないことを、身をもって感じることができました。
地球と自然との関わりにおいて、僕たち人間はどのようにふるまうべきなのか。読者のみなさんがもしこれから、南アフリカの大自然に触れる機会があるならば、そんなことにも思いを馳せてもらえると、とてもうれしいです。
▼著者プロフィール
山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年春に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々』の増補新装版を雷鳥社より刊行予定。http://ymtk.jp/ladakh/
▼取材協力クレジット
取材協力:南アフリカ観光局
http://www.south-africa.jp/