メーカーがセットアップしたノーマルの自転車には飽き足らず、自分らしくカスタムした「世界に一台の自転車」に乗りたい! そんな人たちの間で評判の店がある。
場所は、国宝犬山城や歴史的建造物を集めた明治村がある愛知県犬山市。国道からわずかに外れたお店は、お世辞にも広いとは言えない。大型トラックの荷台に載っていたアルミパネルを利用し、その前のスペースにウッドデッキを増設したという店の外観は、アメリカのロードムービーにでも出てきそうな小さくても雰囲気のあるたたずまいだ。
店の名前は、Wakka。自転車の車輪(わっか)に由来する。2012年9月にオープンした比較的新しい店にもかかわらず、店主のカスタムの腕とセンスを求めて、自動車で2時間圏からの集客も珍しくない。なかには、北海道、東北、関東、九州からわざわざやってくる方もいるとか。
店に入って驚かされたのは、その在庫車の少なさだ。ぱっと見、10台にも満たない。愛知県内には、在庫数200台以上という大型サイクルショップがざらにあるだけに、驚く方も多いだろう。
店主の川口靖弘さんによれば、「うちは、ある程度年齢がいった大人のお客様が多いので、自転車に乗るためにわざわざ体を鍛えなくても楽しく乗れるようなカスタムを薦めています。人力で楽しむ道具ですから、ハブ(車輪の軸)などを軽々と回る高性能なパーツにカスタマイズするだけでも、無駄なパワーロスを防ぐことができるんです。どうせパーツを変えるんなら、一緒に色にもこだわりたいですよね」
川口さんが、技術を結集して組み上げたというファットバイクは、まるでロードバイクのように軽々と走る。前輪を持ち上げてホイールを空転させると、いつまででも回り続けるほど。しかも、チューブを使わないカスタムをすることで、大幅な軽量化を実現し、パワーロスの原因を徹底してつぶしている。電気的な処理でカラーリングされたパーツの色は、怪しげに輝き、趣味人の感性を刺激する。市販のフレームやパーツの色が気に入らない場合には、塗装をしたりメッキ加工をすることもある。それどころか、この世に存在しないパーツが必要とあらば、仲間の金属加工会社にオーダーし、アルミを削り出して作ってしまうこだわりよう。
気になる予算は、10万円台のグラベルロードバイクから、100万円を超えるファットバイクなんていうのも珍しい話ではないらしい。店頭在庫が少ない理由は、お客様とじっくりと話して、そこからメーカーに発注し組み立てるから。自分の夢やイメージをカタチにしたければ、こんな懐の深い店を頼ればいい。
この日も、40代に見えるおとなの常連客が自慢のバイクに乗って集まり、子供のような笑顔で「次はどこをイジろうかな?」なんて話をしていた。軽快に走る楽しみに加えて、自分らしくカスタムする喜びまで満たしてくれる。
わざわざ遠出してでも組んでもらう価値のある店ではないだろうか?
余談だが、Wakkaから国宝犬山城までは、自転車でも15分ほど。犬山城は2019年12月に2年に及ぶ大改修を終えたばかり。城下町には、レンタル着物を利用して散策するあでやかなインスタ女子の姿も目立つ。東海エリア名物の五平餅を食べたり、犬山名物のげんこつ飴を買うのもよいだろう。遠方の方は、ぜひ犬山観光を兼ねて遊びに行ってくださいね。
ショップ情報
Wakka
愛知県犬山市五郎丸東1丁目107番地
TEL: 0568-39-6086
営業時間:10:00~20:00
定休日 火曜日、第1、第3、第5月曜日/イベント開催日
ショップの詳細はこちら http://wakka-bicycle.com