手網焙煎のススメ
自家焙煎珈琲Old Lanterns Cafeの岸本です。
さて突然ですが、みなさんは焙煎をしたことがありますか?「焙煎はプロがやる専門技術」と思っている人もいるかもしれませんが、焙煎器具はショップから通販まで幅広いところで販売されており、個人でも手軽に焙煎することができるんです。コーヒー好きのキャンパーさんの中には、キャンプ場を焚き火の煙だけでなく、コーヒーの香ばしい匂いがする煙で包みこむ、世界に一つのコーヒー豆を焙煎して楽しんでいる人もいるほど。
コーヒーには多種多様の品種と味わいが存在します。コーヒーを飲む人の好みも千差万別です。焙煎の方法もプロのように焙煎機を使う方法もあれば、手網や鍋で焙煎するなど手軽な方法もあります。また、熱源だとアウトドアならバーナーや焚き火の火、熾火、炭火の遠赤外線などなど、選択肢があります。さあ、あたなだけのコーヒー豆を焙煎してみましょう!
コーヒーの味わいと焙煎度合いの関係
みなさんの思い浮かべるコーヒーの味とはどんなイメージでしょうか。コーヒーには苦味の強弱や、酸味の有無など味わいもいろいろあります。たしかに全部コーヒーの味わいなのですが、大事なのは自分の好みの味、飲む人の好みの味かどうなのか、です。その味の違いは焙煎度合いに起因する部分が多いのですが、ではそもそも焙煎(ロースト)とは何なのか。
簡単に言うと、コーヒーの生豆を炒ることを焙煎といいます。コーヒー豆は生豆の状態では、味も香りもありません。焙煎することで初めて豆からコーヒーの味や香りが生まれるのです。
コーヒーの焙煎度合いは8段階に分けて表現されます。浅い方から①ライトロースト、②シナモンロースト、③ミディアムロースト、④ハイロースト、⑤シティロースト、⑥フルシティロースト、⑦フレンチロースト、⑧イタリアンローストの8段階です。この8段階の焙煎度合いというのは世界共通ですが、明確な基準はなく、たとえばA店のミディアムローストがB店のシティローストより深煎りだった……なんてこともよく有る話で、主観的な区分なのです。殆どがその店のマスター、その店の焙煎士に委ねられているのが実情です。
しかし、オークションなどで取引きされるコーヒー生豆も多くなってきて、ランク付けをする必要性も多く、スペシャルティコーヒー協会などでは客観的に判断する基準を設けています。コーヒーは同じ品種で比べても焙煎度合いで味は変わります。焙煎の段階は時間、温度、豆の色、ハゼの音の4つから判断します。特にハゼ音は重要です。
煎り始めて豆の温度が上がっていくと、成分に化学変化が起こります。豆の中に炭酸ガスが発生して、その圧力が強くなると炭酸ガスが弾け出ます。この弾けることをハゼといい、1度目のハゼを1ハゼといい「パチパチ」という音がします。1度目のバセ音がおさまり、更に加熱が進むと2度目のハゼ、2ハゼが始まり「ピチピチ」という音がします。ハゼ音を目安にする場合では、1ハゼの途中から終わりくらいがミディアムロースト、2度目のハゼの手前がハイロースト、2ハゼが始まってから数秒のポイントがシティローストが目安です。2ハゼの絶頂の手前がフルシティローストで、2ハゼの絶頂あたりがフレンチロースト、そして2ハゼの終わりがイタリアンローストになります。
味わいの観点でいうと、浅煎りほど酸味が強く苦味はありません。ローストが進むにつれて酸味はなくなっていき、苦味が出てきます。シティローストくらいが深煎りの香味の入口くらいになります。酸味もじゃっかん残りますが、コクが出て、ほのかに苦味を感じる領域になります。酸味がないコーヒーがお好きならばフルシティ以上のローストをおすすめします。フルーティな酸味を楽しみたいのであれば、ミディアム〜ハイローストがおすすめです。
手網焙煎のポイント
生豆に火が直接当たるので網を火に近づけすぎないように、火から20cm前後離して、火力は弱火か中弱火くらいで15〜20分程度は時間をかけてください。短時間で焙煎すると豆の表面だけ焼けたり、煎りムラができます。生豆に均一に火が当たるように、常に網を振り続けてください。振るのを止めるとすぐに焦げてしまうので、手が疲れたら、もう一方の手に持ち替えて振り続けましょう。ブラジルやエチオピアはシルバースキン(薄皮)が多くチャフ(焼けカス)が多く出て火の粉になりやすいので、自宅や屋内で焙煎するときは周囲に燃えやすい物がないか、気をつけで焙煎しましょう。
手網焙煎の手順
(1)手網に生豆を入れます。手網のサイズ(50g用、100g用など)がありますので、必ず容量に合わせた量を計量して入れます。
(2)バーナーやコンロを点火し弱火にします。
(3)火から20cmくらい離した位置で、常に網を振り続けます。
(4)豆の温度が100℃を超えると内部の水分が蒸発していき、色が付き始めます。
(5)さらに振り続けていくと1ハゼが始まり、色がさらに付きます。
(6)1ハゼが終わったあたりから、ミディアムローストの領域です。
(7)更に色が付き、煙も少し出始めます。ハイローストの領域です。
(8)2ハゼが始まります。シティローストの領域です。これ以上のローストは焦げやすく、ローストの進みも早くなるので、ビギナーの方はここまでにしておくほうが無難です。
(9)煎り上げたらザルなどに移し、うちわなどで扇ぎ急冷させます。急冷させないと内部でどんどん焙煎が進んでしまうからです。
うまく焙煎できたかどうかの基準は次の通りなのでチェックしてみてくださいね。
・豆の水分が抜け、充分膨らんでいるか。
・煎りムラがないか。
・シワが伸びているか。
・焦げていないか。
さぁ、あなたも手網焙煎にチャレンジしてみましょう。