『不安の銀世界の向こうにウホ~の夢世界が広がる』
「ギュッ……ギュッ…」
スノーシューが雪を踏む音だけが聞こえる。
「スノーシューは、人が歩いた後を歩いてもつまんないんだよ」
小倉さんが一列縦隊に連なっている隊列からハミ出して、すでに樹氷状態になっている針葉樹の間に入っていく。入っていって、勝手にそっちで
「ウホ~ッ!!」
とかいって喜んで騒いでいるのが聞こえる。ゴリラ的なものか。
「このね、フワフワの新雪を最初に自分が踏むっていうのが気持ちいいんだよ、ウホ~!!」
そうなのかウホ~。オレも真似して、まだ誰も足跡を付けていない雪の上を歩いてみる。ん~たし
かにフロンティアスピリッツ的感覚があるなァ~。雪を踏む音もさっきまでの「ギュッ」から「ファ
ギュッ」って感じに変わってきたしウホ~ッ!!
そんなスノーシューの快感をウホウホいいながら気づき始めた、歩きはじめて40分ほど経った頃。
ふと回りを見渡すと、知らない間に景色が幻想的になっていた。
遠くの街の明かりなのか、スキー場のナイター照明が点いたのか、銀世界のバックがほのかな薄橙
色に染まっている。オオ~なんかはじめて見る光景だぞウホ~!